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第五章 アリソンとアデルの真実の愛

今回は短いです。

「ツェレが生きている?」


 アデルは頷いた。


「行方不明の帝国のツェレティーア姫が見つかったとニュースが流れました」


「帝国の姫? 確か15・6年前に行方不明になっていたね」


「それが……お姉様よ。きっとお姉様は騙されて帝国に連れていかれたのよ。可哀想なお姉様。親に会いたいという、孤児の弱みに付け込まれて。帝国の操り人形にされるなんて。魔物に襲われたのだって帝国の仕業じゃないかしら? だってタイミング良すぎだわ」


 ゼルテネス伯爵は墓を暴いて死体を確認したが。

 御者の亡骸はあったが、ツェレの死体は無かった。

 血だらけの服の切れ端があっただけだった。

 魔物に食われたとも。死んだと見せかけているとも取れる。

 死体を発見した三人の冒険者は直ぐに村から旅立った。

 しかしアデルにはツェレが生きてると直ぐに分かった。

 探索隊の帝国の人間とツェレだと。


「まさか……第一帝国に何の利益がある? 偽物の姫を立てて?」


「この国を陥れるつもりなのです」


「陥れる?」


「聖女教会とこの国が結託して帝国の王族を惨殺したと……」


「馬鹿馬鹿しい。そんな世迷い事を誰が信じる?」


「帝国の王族は信じていますわ」


「何故だ? 根拠がない」


「シュルゲンバッハ帝王はエドナ伯爵令嬢と言う婚約者がおりました。でもエドナ様は聖女の力を発現したために聖女となり二人は引き裂かれました。その後エドナ様は小国の側室になる為この国を通り過ぎる時、魔物に襲われ亡くなられました」


「聖女エドナが亡くなられた事は気の毒な事だが。逆恨みではないのか?」


「人はよわい生き物です。誰かのせいにしてしまうほど……例え大帝国の皇帝であっても……」


「それで私に確認して来いと言うのか?」


「可哀想なお姉様を助け出して欲しいのです。例え血が繋がらなくともお姉様は大切な家族ですもの」


「アデルはなんて優しいんだ。本当に聖女だ」


「妹として姉の幸せを願うのは当然ですわ」


 アデルは微笑んだ。

 大切な姉の婚約者を取り。領地に追いやった女の何処が優しいんだろう?

 本当にこの王子は愚かで扱いやすい。

 良い駒だ。独善的で箱庭の世界しか知らない。

 王も王妃も彼に真実を知らせていないのだろう。

 聖皇と結託して帝国の王族を惨殺した事を。

 お父様に命じてツェレを攫った事も。

 ただの孤児が貴族の養女になったからと言って王太子の婚約者になれる訳がない。

 常に正義が自分にあると思い込んでいる。

 この国を滅ぼす愚かな王太子。

 一人しかいない王子。

 子供を溺愛してその眼と耳を塞ぐ愚かな王と王妃。

 聖皇と共謀して帝国の王族を惨殺した黒幕。

 帝王と帝国の王太子を殺し。アリソン王太子とツェレを結婚させて帝国乗っ取りを企む。

 野心家の王と王妃。馬鹿だね。何度も暗殺が上手くいくと思っているのかしら。

 帝国王族惨殺事件で帝国にもぐりこんだ手先は全部潰された。

 アーウィン王太子は母親と同じ優秀な魔力の使い手で。

 人の噓を暴くのが上手い。


 アリソン王太子はアデルに惚れる。

 正確にはアデルが纏うツェレの聖女の魔力に惹かれるのだ。

 全く。忌々しい。

 とアデルは思う。

 本当ならツェレは魔物に襲われ、死ぬはずだった。

 わざわざツェレに怪我をさせ血の付いた手袋を手に入れたのに……

 ツェレが死ぬとその魔力は首飾りを通じてアデルが付けている首飾りの魔石に流れ。

 2・3年は聖女の振りができたのに。その間アリソン王太子と結婚して。

(普通の聖女は処女を失うと聖女の力を失うから。アデルが聖女の力を失っても誰も疑わない)

 服の上からそっと首飾りに触れる。

 聖皇がくれた首飾り。ある意味ツェレの首飾りとお揃いと言える。

 魔力の無い聖皇が奴隷の魔力を使って成り上がった物を更に改良したも物だ。

 魔物に襲われた後もアデルに魔力は流れてきたから暗殺に失敗したのが分かった。

 ところがある日ばきりと音がして組み込まれている魔法陣が壊れた。

 多分。

 帝国の第二王子が壊したのだろう。

 幼い容姿だが魔法陣の天才だと言う。

 帝国の王子や王女は優秀な者が多かった。

 だからこそ危惧した周りの小国が不安に陥り暗殺事件を起こしたのだ。

 帝国の王族以外年々王族・貴族の魔力が落ちている。


 王太子は直ぐに侍従に旅支度を命じ。


「早速。父上に旅の許可を取らなくては」


「アリソン様どうぞお姉様の事。よろしくお願いします」


 アデルは頭を下げて薔薇の庭から退場する。

 帝都は遠く。正規のルートだと船を使っても二月かかる。


 聖皇おじいさまにお知らせしないと。

 アデルの母は聖皇の隠し子なのだ。

 聖皇は妻を持つことは許されるが。妾や愛人は許されない。

 しかし。聖皇には数々の隠し子がいる。

 ふしだらな貴族の妻とも関係がある。

 その子供達を使い。この国や他所の国の心臓部に食い込んできた。

 全ては己が野心のために。

 愛による支配と糞爺は言う。

 アデルは聖皇の皺だらけの顔を思い出す。

 愚かと言えば。あの爺も愚かだわ。

 身の程をわきまえぬ愚か者。

 自業自得で死ぬんだから世話ないわね。

 さて……私も帝国に行かなければ。

 待っててね。お姉様今度はちゃんと殺してあげる。

 アデルは赤い唇を吊り上げてにんまり笑う。

 このゲーム。今度も私が勝つわ。

 真の勝者は、王でも聖皇でも王太子でもない。

 そう真の勝者はこの私。

 愚か者たちはこのループすら知らない。

 アデルは笑いながら城を出る。




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 2018/8/5 『小説家になろう』どんC

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最後までお読みいただきありがとうございます。

この作品は不定期更新です。

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