第9話
とりあえず考えたが強くなること、それから宿屋に依存したこの状況を打開するためには! 冒険者として冒険するしかない!
にも関わらず、結局僕たちは日中は宿屋の仕事、夜はわりのいい依頼を受けざるを得なかった。
夜の依頼に関して言えば、このあたりはモンスターが弱いために依頼の報酬も少なく効率が悪い。
僕とドーラの強さなら、もっと上級者向けの仕事でもいいはずなのだ。だが、借金がある宿屋からは離れられない。
なにより宿屋で貸し与えられた服以外まともな服がいまだに買えていないし、常に腹ペコ気味な僕たちは遠出をすることもままならない。
宿屋の主人、なかなかのやり手のような気がしてきた。
こんな調子では強くなれそうにないが、大量の雑魚モンスターを狩れば、塵も積もれば山となるということで、経験値がたまってくれないかな。
宿屋で寝たら傷が回復するくらいだから、ひょっとしたらと期待している。
それから僕はあることを提案した。
「スーラを成長させる?! なんでそんなことしないといけないわけ?」
真夜中、コボルトのアジトだという洞窟の入り口の手前の茂みに僕たちは潜んでいた。
案の定、赤い髪の大食いドラゴン娘は異を唱えた。まあ、気持ちは分からないではないが。
「そう言わずに頼むよ。でも、このままだとスーラが……」
「あたしが1発、炎を投げつけたら、それで終わるのに! なんでこの役立たずのスライム女のために、そんな面倒なこと」
ドーラはスーラを睨みつける。
スーラは僕の後ろに隠れるも反撃開始。
「役立たずならまだゼロですけど、ドーラさんは食べ過ぎてゼロどころかマイナスです」
「ぬぁにぃ! 踏みつぶしたろうか、このスライムスメ!」
「静かに。とにかく魔物を弱らせてスーラにとどめを刺させるようにするんだ、わかったね?」
これでスーラが少しでも強くなってくれたらと考えた結果だ。宿屋での仕事も最初よりかなりできるようになってきた。伸びしろは絶対あるはずと思った。
僕たちは洞窟に静かに入っていった。
じめじめしていて、水滴の落ちる音が静かな空間に溶けていく。
コボルトは雑魚モンスターの定番みたいなやつだ。僕とドーラなら、殺さずに気絶させることも余裕。
スーラには石槍を持たせてある。これで弱ったやつを一撃するのだ。
奥には広く丸い部屋があった。
そこには頭が狼で体が人型の、体中に毛を生やした怪物が無数にいた。コボルトたちだ。
部屋の一番奥には大きな椅子があり、一回り大きいコボルトがその近くにいた。おそらくあいつがこの洞窟のコボルトたちを支配しているのだろう。
だが、椅子に座っているのは。
先日、竜殺しと戦っているときに姿を見せた呪術師だった。