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第8話

 竜殺しに腹を貫かれて力無く前のめりに倒れた。

 ‎まずい。

 ‎本当に力が入らない。

 竜殺しが倒れこむ僕の横を通って、ドーラに迫る。


「悪く思うなよ」


「ハルカ!」

 ‎

 ‎このままだとドーラが殺される。

 ‎なにかないのか方法は。

 ‎なんとか立ち上がり竜殺しの背中に声をかける。

 ‎しかし、膝がガクガクと震えているし、息も絶え絶えだ。

 

「まだ終わってないぞ!」


「よく立ち上がったな、だが満身創痍。もはや戦えまい」


 威勢よく啖呵を切ったのはいいが、竜殺しの言う通りだ。

 ‎だけど、ここで引き下がるわけにはいかないんだ。

 ‎

 ‎その時、一人の人物が突然部屋に現れた。

 入り口から入ってきたわけではない。

 ‎僕と竜殺しの間にいきなり出現したのだ。

 ‎テレポートでもしたように。

 そして、そいつは竜殺しが持っている剣に触れた。


「なんだ、貴様は?!」


 これにはさすがの竜殺しも慌てふためいていた。

 ‎突然現れたのは紫のフードを深くかぶり黒いローブで隙間無く体を覆っていた。

 ‎おそらく女だろう。

 ‎呪術師のような格好だ。

 ‎竜殺しや僕よりはずっと背が低い。

 ‎ 

「邪魔をするなら貴様にも容赦せん!」


 竜殺しは呪術師に対して剣を振りかぶる。

 ‎だが。

 ‎一瞬にして竜殺しの手元にあった剣が消える。


「なに?」


 そして、どういうわけか竜殺しが所持していた剣は呪術師の手中にあった。


「貴様! なにをした!」


 だが、呪術師は突然前触れもなく消えた。


 竜殺しは辺りを見回すが、呪術師の姿はどこにもない。


「くっ、剣がなくてはドラゴンを狩れない」

 

 そう言って竜殺しは部屋から去っていった。

 完全にやつの気配がなくなって、僕は力なく膝をついた。


「ハルカ!」


「ハルカ様!」


 ドーラとスーラが駆け寄ってくる。

 ‎そして、ベッドに寝かされた。


「これはひどい傷だ」


「どうしましょう?!」


「医者を呼ぶにもお金がないが、言っていられないか」


「どうしましょう?! どうしましょう?!」


 そんな2人のやり取りを聞きながら、僕の意識は遠のいていく。


 気がつくともう夜だった。

 僕が起き上がろうとすると、スーラがよってきた。


「いけません、大ケガをしてるんですから」


 そう言えば、竜殺しに刺されたんだった。

 だが、痛みはなにもなかった。

 包帯をしてあるが、なにも痛みを感じない。

 そんなすぐに完治するような傷ではなかったはずだが。

 

「そう言えば、ドーラは?」


 姿を見かけないのでふっと出た疑問。


「今、宿の手伝いをしています、ハルカ様のお医者さん代を前借りしたので」

 

 よく前借りなんてできたな。

 なんだかんだ宿屋の主人は優しい。

 一応、寝床に食事も提供してくれる。

 借金も減っていってることになっているが、実際にちゃんと計算したら使えないスーラと食べ過ぎるドーラでほとんど減ってないんじゃなかろうか。


「ところで、ハルカ様」


 いきなりスーラが顔を寄せてきたので少し僕は驚いた。


「な、なんだよ?」


「わたくしがドーラさんみたいに危なくなっても、さっきみたいに守ってくれますか?」


「当たり前だろ」


 即答したが、それでもスーラの暗い表情は変わらない。


「わたくし、なにもできなくて足を引っ張ってばかりですから、なんか自信がなくて」


 そう言って僕と目を合わせない。


「そっか」

 

 僕はスーラの手を握る。


「スーラはなにもできないなんてことない、いるだけでいいんだ。いや、僕がいてほしい」


 スーラが信じられないというような顔をした後、涙を浮かべて笑顔になる。

 

 そこで、扉が急に開いた。

 ドーラが入ってきたのだ。


「スーラ、ちゃんとハルカのこと見てくれて、ってハルカ、もう大丈夫なのか?」


「せっかくいいとこだったのに」


 スーラがボソッと言った言葉を僕は聞き逃さず聞いていた。

 それはさておき。

 

「ドーラ」


「なんだ?」


 僕はどうしても聞いておかないといけないことがある。


「大丈夫なのか?」


「なにが?」


「君の腹の減り具合」


「ん? あははは、多分大丈夫多分」


 そこで、このやり取りが無駄だと示す大きなお腹の音が盛大に部屋中に響いたのだった。


 

 夜中、僕は悪夢にうなされて、目が覚めた。

 あの体を貫かれる感触が忘れられない。

 竜殺しはとても強かった。次に出会うことがあったとき、ドーラを守りきれる自信が僕にはない。

 勇者の能力に頼るだけではダメだ。

 なんとしても、強くならないといけない。

 ドーラを守るためにも、自分を守るためにも。

 あと、あの呪術師は一体なんだったんだろうか。

 

 それにしても。


「宿屋の食事だけじゃ、お腹空く」


 そう言ってお腹を擦ったが、さっきの戦いで怪我をしたところだった。

 しかし、全く痛くない。

 おそるおそる包帯の下を覗くと傷はきれいさっぱり消えていた。

 これが医者のおかげとは考えにくいので勇者の特権なのだろう、この自己修復能力。

 この体があれば、多少の無理はできるはず。

 強くなる。

 そう決意した。



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