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第7話

「ドラゴンスレイヤー?」


「その名の通り、竜殺し。他の魔物には目もくれず、ドラゴンだけを狩る冒険者。人間なのに知らないのか?」


 こっちの人間ではなかったからなあ。

 冒険者という職業があること自体、あんまり分かってなかった。

 ‎しかし、ドーラが恐れるということは余程の実力者なのだろう。

 琥珀色の瞳が不安そうに僕を見つめていた。


「実際にあいつに襲われたことがあるの?」


 僕の問いにうなずくドーラ。


「あいつは魔王様のお城の近くにあったあたしたちの巣に単身突撃をかけてきた。仲間はたくさんやられた。それで逃げ出してきたんだ。あたし、怖い」 


 唐突に抱きついてきた。

 ‎豊かな胸が押しつけられる。

 ‎大食いドラゴン娘にもなんともかわいらしい一面があるものだ。

 ‎俄然、僕はやる気になってきた。

 ‎あんな黒い甲冑つけて顔を見せもしない陰気な奴、やっつけてやろう。 

 僕は勇者だし負けるわけがない。

 

「僕に任せろ! あんなやつ倒してやる!」


 自信ありげに言うと、彼女は首を横に振った。


「ハルカがいくら強くてもあいつはヤバいよ」


 見つめ合う二人。


「あの……わたくしもいるんですけど」


 スーラの存在をすっかり忘れていた。


「あんた、いたの?」


 ドーラが意地悪く言って、スーラはむきになる。


「最初っからずっとここにいます! わたくしのいるところで2人の世界に入らないでください!」 


「じゃあ、あんたのいらないところなら2人の世界に入ってもいいんだね?」

 

「そんなこと言ってません!」


「スライムの分際で邪魔するんじゃない!」


 にらみ合う2人。


 常にケンカをしているなあ、この2人。

 ‎仲裁はもう疲れたぞ。

 ‎ため息をつこうとした。

 ‎

 その瞬間。 

 ‎床が揺れた。

 爆発のようなものが起こり、部屋の壁が吹き飛ぶ。

 直感的に目の前にいたドーラを自分の方に引き寄せた。

 ‎彼女が今までいた空間を斬撃が通過する。


 黒い人影が剣をふるったのだとその直後に分かった。

 ‎全身真っ黒な甲冑姿。

 ‎竜殺しだ。

 ‎いきなり壁を壊して斬り込んできやがった。

 

「竜の匂いがしたと思ったら、そこの女、何者だ?」


「彼女を狙うなら、僕がだまってない!」


 ドーラと竜殺しの間に、割って入る僕。


「なんのつもりか、知らんが、私の邪魔をするのなら容赦はしない」


「僕も手かげんしない」


 僕は腰にさげた鉄の剣を抜く。

 ‎

 竜殺しの持っている剣は幅が広く細かいギザギザがノコギリのようについている。


 竜殺しが斬りかかってくるのを、僕の体は反射的に防ぐ。

 ‎1秒の間に何回も切り結ぶ。

 ‎鋭い攻撃は勇者としての力を与えられていなければ僕の命を何度奪っていたことか。

 ‎こいつ、めちゃくちゃ強い。

 斬撃のスピードが上がっていく。

 ダメだ、これ以上速くなると対応できなくなる。

 だが、竜殺しは攻撃をやめる。

 ‎

「お前、何者だ? これほどの冒険者ならかなり有名のはずだが。名前はなんという?」


「僕の名前は(はるか)だ」


「ハルカ? 聞いたこともないな。だが、覚える価値もあるまい」


 一瞬にして僕は竜殺しに刺し貫かれていた。

 その後に伴う焼けるような痛みに気が遠くなるのだった。


 

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