第59話
僕の右手が光りだすと、サイクロプスも同じ光に覆われる。
やがて、髪がエメラルドのような輝きを放つ、スタイルのいい美女に姿を変える。僕よりほんの少し年上のようにみえる。もと巨人のわりに意外と華奢だ。
「うーーん」
彼女はまだ意識が戻らないまま伸びをする。
いろいろ見えちゃいけないところが丸見えだ。
僕はもはや服というよりぼろ切れとなった布をぬいで、彼女に身に付けさせる。ビキニのように胸元と下腹部は覆われた。
僕はもちろんパンツだけになってしまったが。
やがてゆっくりと彼女は目を開いた。
「お、これは?! これが魔物を人間の女の子にするっていう秘術ですね!」
自分の体を見回しながらテンションの高いリアクション。なんかいつもと違うな。
知っているのか、魔物を女の子にする特殊能力のことを。
「お、これは失礼しました! 私の命を助けていただき感謝します。私はサロと言います」
立ち上がって深々とお辞儀をしてくる。
サーイとかイーロとかより比較的まともな名前だと言うのが率直な僕の感想だ。
「サロさん? 僕は宙。よろしく」
「ハルカですか、よろしくです!」
そう言って握手をかわす。
はっきり言って相当な美人だ。しかも可愛らしさも備えている。その上、かなり巨乳だ。正直これまで何人か魔物を女の子にしてきたが、その中でもサロは特に魅力的にうつってしまう。
って何を言ってるんだ。僕にはスーラとドーラが。
すると背後から呆れた声が聞こえてくる。
「こうやって人が増えていくわけか」
ため息をつくリリカ。
今回は仕方ないだろう。
リリカを見ると、僕の後ろに隠れるサロ。
無理もない。もう少しで殺されるところだったわけだし。
「ハルカ、助けていただいたお礼は十分にしますからね」
「え? いいよそんなの。僕が好きで助けたわけだし」
「いえいえ、そういうわけにはいきませんよ、ハルカ。私、こう見えてもいろいろと物知りですし、使えるアイテムもたくさん持ってますから任せてください!」
胸をはると豊満なそれがますます強調される。
「物知り、か。じゃあ訊きたいんだけど」
「どうぞ、どうぞ。なんなりと聞いてください!」
「今、魔物がどんどん減ってるみたいけどどうなっているの?」
「お、いきなり核心的な質問ですね! それは新しい魔王様が原因なんです!」
新しい魔王、それってまさか。
「凛太郎のこと?」
「そうです、よくご存じですね」
「まあな。しかし、あいつの何が悪いんだ?」
「そうですね、何がと言われたら困るのですが、強いていえば存在そのものですね」
「存在そのもの?」
「はい、新しい魔王様はとにかくよく食べるのです」
「は?」
真面目な話、もう食欲ネタはいいぞ。
「食べ過ぎるのでとうとう魔物たちまで標的になりました。結果として魔物がここまで減っているんです」