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第53話

 睨みつけるのは青い瞳と髪のスーラ。

 ‎睨まれるのは黒兜にネグリジェ姿のリリカ。


「この状況が分かるように説明してください!」


 スーラが青筋を立てて叫ぶ。

 ‎これ以上の修羅場はいいかげん困る。

 ‎ここは僕が説明すべきだ。

 

「簡単な話だよ、僕がここまでやってきて、部屋に入れてもらって、彼女に訊くべきことを訊いただけなんだ」


「それだけ、なんですか?」


「それだけだよ」


 スーラはまだ疑っているらしい。


「じゃあ、リリカさんに一体何を訊いてたんですか?」


「ドーラが妹さんを探してるの知ってるよな。リリカが匂いでその妹さんを見つけることができないか、それを訊きにきたんだよ」


「え、それだけですか?」 

 

 スーラは意外そうに驚いた。


「そう、それだけ」


「はあ」


 彼女は1つため息をつく。


「要らぬ心配をしてしまいました。申し訳ありません、わたくしの早とちりで。リリカさんがハルカさんに興味津々になって誘ったわけじゃないんですね」


 スーラの誤解があっさり解けてホッとする。

 だが。


「私は誘ってはいないが、ハルカには興味津々だぞ」


 な、なにを言い出すんだ!


「お、おい、リリカ!」


「いや、本当のことだから」


「それはどういうことですか、リリカさん? 具体的にどう興味がおありなのかを詳しく、お話を、伺いたく、思います」


 前髪の下でスーラの瞳が怪しく光る。

 ‎口調も怨念かなにかが宿っているかのように聞こえた。


「誤解を招くようなことを言うんじゃない!」


 慌ててリリカとスーラの間に割って入ろうとしたが、スーラが鋭い視線をこちらにぶつけてきたので、何も言えなくなってしまった。


「それで、リリカさん、ハルカさんに対してどう興味がおありなのかについて詳しく」


「そうだな、ドーラたんやお前、そしてあの魔人を人間の姿にする能力……これだけでも十分興味惹かれることだ」 


「なるほど、それで?」


「こんなパッとしない容姿なのに、なぜかお前たち全員に好かれているのも不思議だからそこも知りたい」


 パッとしない容姿で悪かったな。

 ‎リリカを睨みつけてやるが、向こうは気づいた素振りさえ見せない。

 ‎話はややこしくするし、リリカはなかなかのトラブルメーカーかもしれないな。

 ‎そう考えると頭が痛くなってくる。

 ‎ノーリスクで食費がなんとかなるなんて虫のいいことを考えて神様すみません。


「なるほど、それは危険な興味の持たれ方ですね」


 そう言うスーラ、君こそ今結構危険な気がするんだが。

 そのあと、スーラの疑念を払拭するのにかなりの労力を要した。


 次の日の朝。


 「私の鼻によると、ドーラの妹と思われる匂いの元はどうも西にいる」


「じゃあ西にいけば会えるのかい?」


 リリカの話を聞いて、ドーラが瞳を輝かせる。


「おそらくな。次の依頼も西に向かう必要があるからちょうどいいな」


 リリカの返事でドーラはかなり喜んでいる様子だ。

 ‎内心は複雑な気持ちなんだろうが、とかくそういうの表に出したがらない性格なんだとだんだん分かってきた。

 ‎でも、妹が見つかればドーラも心から打ち解けてくれるだろう。


「それで、リリカ。次の依頼というのは?」


 肝腎なことを聞き忘れていた。


「ここから歩いて片道5日ほどのところに住んでいる、とある人物にこの手紙を届けるというものだ」 


「は?」


 僕は思わず変な声をもらしていた。


「この依頼、報酬は50000ゴールドだよな? 片道5日ほどって往復10日になるんだよな? その間食費はどうなる?」


「ん? 私はほとんど食べなくても、ドーラたんの血の匂いがあれば大丈夫だが」


 リリカ、お前ひょっとして、いやひょっとしなくても。


「とんでもなくバカなんじゃないかお前」


「な、なんだと?! 私を愚弄するとはいい度胸だな、ハルカ。私のどこがバカだというんだ?」


「はあ。もういいよ。説明する元気もない」


 やはりとんでもないやつを仲間にしてしまったらしい。

 




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