第37話
まじか?! まじか?! まじなのか?!
ドーラが僕のことを好きだなんて。
信じられない。
身を隠しつつ、ドーラをこっそり見る。
彼女はこちらに背を向けていた。
艶のある白い肌に背中から腰にかけての曲線。
高校生の僕にはまぶしすぎる。
僕はどうしたらいいんだ。
スーラからも告白されているというのに。
しかし、なんて贅沢な悩みだろう。
こんな悩みが赦されるのか。
世の男どもに妬み殺されそうだ。
だが、ここで浮かれている場合ではない。
こんなとこにいることが、ドーラに気づかれでもしたら……。
そう思いながらもついつい見入ってしまう。曲線美! 曲線美! 曲線美!
ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。
後ろから肩のあたりを突っつかれる感触。
だが、今それどころじゃねえ。
「ねえ、こんなとこでなにしてるなの?」
なんだよそれどころじゃねえって言ってんだろうが。
って。
振り返るとそこにはこちらを見つめるアメジストの両眼。
「ジ、ジーマ?!」
驚いて思わず大きな声をあげてしまう。
その直後に全身を駆け巡る寒気。
僕が水辺のほうをおそるおそる振り返ると、体を両手と赤い髪で隠しながら僕を睨むドーラの姿があった。
「な、なにしてるんだ、ハルカ?!」
こめかみに浮かぶ青筋。
殺気に満ちた琥珀色の瞳。
と、そこへ。
「ここにおられましたか、ハルカ様。あ」
再び振り返ると水のように青い髪と澄んだ瞳のスーラが全てを察したような顔をしていた。
ひどい目に遭った。
勇者じゃなければ確実に死んでいただろう。
その後もスーラとドーラはろくに口を訊いてはくれず、気まずい雰囲気の中、目的地の森に着いた頃には夕方になっていた。
「あたしが全滅させてくるから」
「スケルトン相手でしたらわたくしでも戦えます」
「雑魚は引っ込んでな!」
「なんですって?!」
そして着いた途端、今度はスケルトン退治をどちらがするかでスーラとドーラが揉めはじめた。
普段なら僕が言えば、なんだかんだ話がまとまるのだが、今回は逆にまとまらなくなりそうなので、口出しできない。
それに、ジーマが混ざろうとするのを止めるのに精一杯だ。
スーラからすれば、スケルトンと戦って実践的な訓練を積みたいところだろうし、ドーラからしたらさっさと終わらせたいだろう。
両者の気持ちはよく分かるがこんなことをしていると。
「お腹空いた」
「お腹が空きました」
言わないことではない。
やはりこうなった。