第34話
あのね、一言いいかな。
僕たちを飯抜きにしてもね、懲りるどころか、むしろ腹へりの歌を大合唱しちゃうだけだから。
意味ないから。王様、早く勘違いから目を覚まして。
僕はむしろこの悪夢から目を覚ましたい。
そして、なんで僕だけがパンツ1枚にされてるんだ。寒い。
まあ理由は分かってる。脱獄の主犯とみなされたのだ。なんせあとはみんな見た目は女の子。
鉄格子を破壊できるのは僕くらいしかいないと思われたようだ。
よもや、華奢なジーマが真犯人とは誰も思わない。
あれからおそらく1日は経ったかな。腹の虫がそう言ってる。
そんなことを考えながら空腹をこらえていると、コツコツと足音が響いてきて、明かりを持った人影が近づいてくる。2人いるようだ。
接近してきたその人影は看守とそして。
「シーラさん!」
「ごめんなさい、王様の誤解を解くのに手こずってしまってね」
僕らはようやく釈放となった。
うまい、うますぎる。飯がうますぎて気分が悪くなりそうなくらいだ。
出された豪華な食事にむしゃぶりつく僕たち。
僕たちがあの巨大ゴブリンを捕まえる手伝いをした功績を、王様が認めてくれて振る舞ってくれたのだ。
だが、ドーラとジーマの食欲のすごさ。
「いくらでも食べるがよい」
と言った王様の顔がすでにひきつっている。
頼むから食べ過ぎたせいで罰として飯抜き服なしだけはやめていただきたい。
王様としては囚人服のまま、城内を彷徨かせることもできない。かといってもとの服ではボロボロすぎてまるで浮浪者、いや実際浮浪者なんだけど、とにかく汚い。
ということで、冒険者にふさわしい動きやすく丈夫そうな服を用意してくれた。
「そ、そなたたちの働きを認め、ほ、褒美として、冒険者ランクを一つ上げてやろう」
王様がかなり嫌そうにしているのがひしひしと伝わってくる。
そんな王様をよそにがっつくドーラとジーマ。国家の財政を揺るがさない範囲で食べていただきたいものだ。
その日は城内で休ませてもらい、次の日再び冒険者ギルドへ。
ギルドの受付のお姉さんに王様からの書簡を渡すと、めでたくDランクの冒険者になった。
「シーラさんには何から何までお世話になってすみません」
「いいのよ、私、あなたたちのこと気に入ったから。また私1人で大変なときに助っ人をお願いするわ」
そう言ってシーラさんは銀の髪を優雅になびかせながら去っていった。
なんていい人なんだ。
さて、Dランクの冒険者になったので、Dランクの依頼が受けられるわけだが。
「さあ、お腹もふくれたし、いくらでも暴れられるよ!」
元気そうなドーラを見て安心する反面、なにか心配になる僕がいた。
「今日の晩御飯はなんなの?」
ジーマはすでにお腹が空きはじめているのか……魔王軍って大変だな食糧確保。そういや、凛は無事だろうか、かわいすぎて変なやつに襲われてないか心配だ。
そこで僕の腕の裾を引っ張ってくるスーラ。
そして、耳元でささやいてくる。
「少しお話があります」
彼女の方を見ると、瞳に決意のようなものが感じられた。