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第31話

「ここがギルドですか」


 いろんな冒険者がたくさんいるからか、警戒しながらあたりを見渡すスーラ。


 冒険者ギルド。

 そこに属して、冒険者となることでギルドを通して依頼を受けることができる。街中の掲示板などと違い豊富な依頼が舞い込んでくる他、適正な報酬金額が設定されているといったメリットがあるようだ。


 だが。

 ‎冒険者にも依頼にもランクがつけられており、依頼のランクよりも冒険者のランクが低いと依頼は受けられないらしい。


 しかし、豊富な依頼があるのはありがたい。

 ‎そう思って僕はラッツの街にある冒険者ギルドに登録した。


 すると、冒険者の身分証をもらった。

 ‎しかし、ギルドに入るとか全然思い付かなかった。きっと慢性的な栄養失調による血糖などの不足が原因で頭の回転が悪くなっているにちがいない。


 とにかく最低ランクのEからスタートだから、Eランクの依頼をサクサクこなしてランクアップしちゃいましょう!


 と思っていた矢先、ギルドの受付のきれいなお姉さんが一言。


「張り切ってるとこ申し訳ないんだけど、あなたたちが受けられる依頼、あるかしらね」


 ‎そして、Eランクの依頼を探すが、掲示板のどこにもない。

 ‎ない! ない! ない! なんもねえじゃん! どうなってんだ?!


「Eランクの依頼1つもないけど、どういうことっすか?」


 涙を流しながら、さっきのお姉さんに聞く。

 ‎お姉さんかなり嫌がってるのが分かる。

 ‎こんなばっちい服着てる男が、顔も鼻水やら涙やらでぐちょぐちょな状態で接近してきたら嫌がるのも無理はない。

 ‎実際、スーラたちもいつもより僕と距離を取ってるように思う。

 ‎決してこんなのを望んでいたわけではない……。


「最近とにかく弱小モンスターが減っているから、それに関わる依頼も激減してて取り合いなのよ。AやBランクの依頼ならあっても、引き受けられるランクの冒険者は逆にいないしね」


 顔を強ばらせながらも話してくれたお姉さんいわくそういうことだそうだ。

 ‎魔王が凛になったのはいいのだが、弱小モンスターが激減した件について、あいつは身に覚えがないという。

 ‎凛に従属しない配下の一部が凛に成り代わってやっているらしいが、以前見たコボルトたちの無惨な姿を考えると、相当残酷なやり口だ。

 ‎しかし、当面大切なことは衣食住だ。

 ‎住は野宿で我慢できてもだ。

 ‎衣食は妥協できんぞ。

 ‎とくに衣はこれ以上妥協する余裕は全くない。

 ‎僕はベトベトの服にぐちゃぐちゃな顔でカウンターに身を乗り出して懇願する。


「じゃあ僕たちEランクの冒険者はどーすれば? このままじゃ僕はろくろく飯にありつけず、あげくの果てに、このきったない服のままでいないといけないんです」


「そんなこと言われても、どーしようもありません! ってかなにその服についてるネバネバ! それ以上近づかないで! しっ! しっ! むしろ脱いだほうがマシなんじゃないの?!」


「じゃあ、脱いだらなんとかしてくれますか?」

 ‎

「そんなことは誰も言ってません! こら、脱ぐな!」


 僕がこんなことをやってる横で、スーラとドーラとジーマは口々に不幸の呪文を口にしていた。


「お腹が空きました」

「お腹空いた」

「お腹空いたなの」


 この呪文を聞くと、余計に腹が減るのだった。 


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