第3話
とりあえず次の日の朝をむかえる。
僕たちは村のすぐ外の木の下で過ごした。
要するに野宿。
暖の取り方もなにも分からなかったが、あまり寒くなかった。
だが、一睡もできていない。
昨日のことは夢なのではないか。
そう思うが、僕の隣ではスーラがすやすやとのんきに寝息を立てていた。
村ではどういうわけか日本語が通じた。
仕事依頼のための掲示板が村の中央にあるということなので、早速向かった。
掲示板をさくっと見て、はっきりしたことがある。
ほとんどが魔物退治の依頼であること。
掃除、荷物運びなどその他の仕事は数が少ない上に給金も悪いと来た。
「どうするんだよ、スーラ?」
「どうしましょう? とりあえずお腹が空きました……」
「手っ取り早いのにしないと、お腹が空いてなんもできなくなるよ」
「そうですね、でも魔物を倒すのは……」
泣きそうな顔になるスーラ。
「困ったなあ。ん? これなんてどうだ?」
僕はとある掲示板の張り紙を指差した。
「隣街まで荷物運搬、道中の護衛。これなら魔物退治じゃないぞ。報酬もいい」
「本当ですね。ですが、お腹が空きました」
スーラ。
すでに、君から使えないわりに食べますよわたくしオーラが充満してるように感じるのは僕の勘違いかな。
勘違いと信じたいんだけど。
僕は道中護衛の依頼を受けてきた。
馬車の中に商人のはげたおっさんが乗り、僕たちは外で馬車を動かして護衛……
ちょっと待て。
馬車なんて動かしたことないぞ。
「スーラ、馬車動かせるか?」
「いいえ」
満面の笑み。
やっぱりな。
かわいいからまあいっか。
だが、なんとかしないと。
スライム相手だったとはいえ、昨日の感じから僕の戦闘力はかなり高い。
護衛だけすればいいから、馬車を動かし方くらい商人本人から教わればいいのだ。
雲ひとつない空の下で、風に揺られる草が日に照らされて輝く。
馬車の操り方も知らないなど、論外と商人から怒られつつも、僕らは隣街に出かけた。
日本にはなかった果てまで広がる草原の中、一本道を馬車で進む。
草の匂いのする風を気持ちよく受けながら、僕とスーラが並んで座っている。
「スーラ?」
「なんですか?」
長い青い髪がそよ風になびいて、空と溶け合うような光景に目を奪われる。
「魔物は1匹も殺しちゃいけないのか?」
「魔物を退治するなら、わたくしのようにみんな人間にしてください」
いくら女の子にモテたい願望のある僕とはいえ、そこまで手当たり次第なのはなあ。
そんなことを考えている時。
突如、黒い影が馬車の上にかぶさった。
見上げると翼の生えた巨大な赤い竜がこちらを鋭くねめつけていた。