第25話
そのときだ。
向こうの方で大きな爆発音のような音が聞こえた。
「な、なんだ?!」
僕はさすがにとび起きた。
見ると少し離れたところで煙が上がっている。
そして。
「ハルカ、助けてーーー!!」
ドーラが猛烈な勢いでこちらに逃げてくる。その後ろにはこれまたすさまじいスピードで巨体を揺らしながら迫る魔人の姿。
ドーラでも魔人には手も足も出ないのか。それとシーラさんは見当たらない。いったいどこに?
シーラさんのことは心配だが、とりあえず今は目の前の魔人をどうにかするしかない。
「スーラは向こうの木の陰に隠れてて!」
「わ、分かりました!」
「ドーラ、こっちに来て!」
「ハルカ! こいつ強すぎんだよ!」
ドーラが僕と合流した。
「ドーラの炎でも、魔人には全く効かない?」
「全くかどうかは分からないけど、あんまし効いてるように見えないよ。どうしよう、ハルカ?」
目の前に紫の装甲を身につけた巨大な魔人がきていた。
「なら、ドーラの攻撃と僕の攻撃を合わせよう!」
「どうやるの?」
「ドーラが炎をなげつけたところに僕が攻撃を仕掛ける!」
「分かった!」
魔人が剣を振り上げている。
「ドーラ、足だ!」
「りょーかい!」
すぐさまドーラの両手から放たれた炎が、魔人の、向かって右側の膝に着弾する。
僕は炎の軌跡を辿るように走り寄ると、すれ違いざまに燃える膝に一撃する。
すると、確かな手応えがあった。
そして、片足の膝から下を失い、うつ伏せに倒れこむ魔人。
僕は今だとばかりに後方から上に飛び乗り、魔人のうなじの装甲の隙間に深く剣を突き刺す。
魔人が弱りゆくのが分かる。
そのとき。
「ハルカ! 仕留めたの?!」
シーラさんの声が聞こえた。
向こうから駆け寄る彼女の姿。
「シーラさん、大丈夫でしたか?! もう安心……あ」
僕はうっかりしていた。
シーラさんに気をとられて、自分の輝く右手を魔人に向けてしまったのだ。
虹色に光る魔人の体。
「しまっ! 今のは取り消しだ!」
右手に必死に話しかけるが、時すでに遅し。
魔人は人の姿になっていく。
こんなデカブツを女の子にしたら、これまで以上の貧困は必至!
「ハルカ、どーするんだよ?! これ以上腹減り生活はごめんだよ!」
ドーラ、お前にだけは言われたくない!
しかし、なすすべはなかった。
どんな女の子になるんだ?
ただ、ひたすら怖かった。
だが、現れたのは。
白い素肌に紫の髪をした12、3歳の女の子だった。