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第2話

 長く青い髪はまるで澄んだ川の流れを連想させ、白い肌は絹のような美少女。

 年は僕と同じか1、2歳下かな。

 しかし、裸の上に胸も大きめで、目のやり場に困る。‎

 天使の言うとおり、確かに魔物を女の子に変えることができた。

 ‎

 そこで少女が目を覚まし、起き上がる。青い宝石のような瞳で自分の手を見つめる。


「これは一体?!」


 そう言って僕の方を見る。

 ‎

「あなたはわたくしに一体なにをしたのですか?! わたくしは……きゃっ!」


 そこまで言ったところで、自分が一糸まとわぬ姿であることに気づく彼女。

 頬を赤く染め、慌てて両手で身を隠す。‎

 僕はふとマントのことを思い出して、彼女のほうを見ないようにして、マントを渡す。


「とりあえずこれで体を覆って」


「は、はい。ありがとうございます」


 少しして。


「もう大丈夫ですよ」


 その声で僕は振り向く。

 少女の体を包む黒い布が、そこからすらりと伸びた手足の白さを引き立てていた。

 凛より背は少し低いが、スタイルはいい。ここで凛が比較対象になるのもおかしいか。

 しかし彼女の容姿があまりに素晴らしいので、鼻の下が伸びそうになる。


「ところでこれはどういうことなのですか?」


 彼女の問いに僕は答える。


「実は僕の魔法で君を人間にしたんだ」


「そんな魔法が?! 信じられません! ですが……」


「ですが、なに?」

 ‎

「人間になれて良かったです! 魔物はみな元は人間なのです! そのときの記憶はないですけど……」


「えっ、そうなんだ」 


 それは知らなかったよ。


「改めまして、わたくしはスーラと言います! あの、お名前うかがってもよろしいですか?」


 そう言って礼儀正しくお辞儀をしたとき、布に挟まれたスーラの胸の谷間を、僕は見逃さなかった。

 

「僕は(はるか)っていうんだ」


「ハルカ様、ですね。この度はわたくしを魔物から人間にしていただいてありがとうございました! これからよろしくお願いします!」


 そう言ってまたしても深々と頭を下げてくれる。人間に戻れて嬉しそうだ。


「とりあえず今日はどこか街か村に行こうと思うんだが、このあたりにないかな?」


「ハルカさんは恩人なので地の果てまでもついていきます! この近くですとあちらの方に小さな村がありますよ!」


 そう言って指を指すスーラ。とりあえずその方向に進むことにした。



 ほどなくして、村に到着した。

 今日は死んだり、転生したり、スライムを女の子にしたり、濃密すぎる1日で、いろいろ疲れた。

 とにかく休みたい。


 だが、そこで、僕はお金を全く持っていないことに気づく。

 ‎宿屋らしきものは開いてるが、他の店はみな閉まっている。


「どうされたんです?」


 スーラが覗きこんでくる。


「いや、実はお金がないんだよ、僕はこっちの世界に転生したばかりでね。村の近くで魔物倒してお金を稼ぐとかできないかな?」


 すると、スーラは困った顔になる。


「確かに魔物を倒せば、お金は手に入りますが……あの、その……」


 戸惑った様子で口ごもる彼女。


「どうしたの?」


「魔物を倒してお金を稼ぐということは、魔物たちは死んでしまうということですよね?」


「多分、そうだよね」


「でしたら、元魔物のわたくしと致しましては、魔物を倒してお金を稼ぐというのは賛成できません」


 え、なにそれ?

 ‎魔物を倒すのが勇者の使命なのに、魔物を倒したらダメ?


「じゃあ、どうすんの?」


「二人で普通のお仕事をしましょう! でもお腹が空きました」

 

 僕もそういやお腹が空いたよ。  

 でも、無事魔物をかわいい女の子にできた。これからたくさん魔物を退治するぞ! そんなふうに気持ちは燃え上がるのだった。‎

 だが、このときの僕はまだ知らない。

 お腹が空いたという言葉の恐ろしさを……。

 ‎

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