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第15話

 僕とスライは洞窟の奥に入っていった。

 途中から僕にも分かるほどの不愉快な匂いが奥からするのが分かった。

 前回も立ち入った、奥の広がった空間までやってくる。

 そこは死屍累々。コボルトたちの無惨な姿があった。

 ‎

「ひ、ひどい」


 スライから声がもれる。

 ‎ざっと確認したところ、ほとんど抵抗したあとがないコボルトたち。

 長居する気も起きず、僕たちは洞窟の外へと向かった。


「あれは一体?」


「この間、コボルトたちを退治しようと思って、ここに来たとき。紫のフードに黒いローブ姿のあいつがコボルトたちにいろいろ話していたんだが」


スライの表情がこわばった。


「あいつが……わたしたちのときと同じだわ」


「同じ?」


「みんなを集めて話しているうちに、みんなだんだんまどろみはじめて、騙し討ちのように……」


 いろいろと思い出したのだろう、つらそうだ。だが、少し確認したかった。


「そっか……君はなんで助かったんだい?」


「よくわからないけど、離れてたからかな、あいつから」


「なるほど」


 しばらく黙る2人。


「ハルカ」

 

 先に沈黙をやぶったのは、彼女だ。


「なんだい?」


「わたしやスーラを人間にしてくれたのはいいけど、これからどうするの? どうしたらいい?」


 言葉につまった。助けるためと思って軽々しく人間にしてしまったはいいが。ある意味、責任を取らないと。


「わたしはずっとあなたの厄介になるのは、ちょっと気が引けるよ」


 僕は少し考えた。


「君のしたいようにしたらいいけど、僕は君たちが人間の中でもなんとかやっていけるようにしてあげたい」



 その後、少しして洞窟の出口に差し掛かった瞬間、突然後ろに気配が出現した。

 ‎振り返るとそこには例の呪術師が立っていた。

 ‎

「お前は!!」


「!」


 僕もスライもとっさのことに動けない。

 ‎相変わらず、変声器を使ったような声で語りかけてくる。


「この間は話す暇がなかったね、ハル」


 ハル?

 その呼び方は?!


「僕だよ」


 そう言ってフードの下から現れたのは。


「凛?!」


 黒い短髪に黒目勝ちの瞳、ボーイッシュな美少女を思わせるのは、幼なじみの凛太郎こと凛だった。背も低い凛だったから女と勘違いしたんだな。


「凛、なにやってんだよ? そんな格好でさ。ってか凛、どうしてここに」


「僕も、こっちの世界に転生することになったからね」


 ということは凛もあのとき……。


「すまん、僕のせいで」


 もとはと言えば、あの夜、自転車に乗って坂道でスピードを出したばっかりに。

 ‎申し訳がなかった。


「いいんだよ、むしろ感謝してるよ」


 感謝? 凛から意外な言葉が出た。


「それってどういう意味だ?」


「僕、魔王になったんだ」


 凛の笑顔は昔の僕がよく知っている無邪気なものだった。



 

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