第14話
結局、スーラとスライ以外のその集落のスライムたちはあの紫フードの呪術師に殺されたらしい。
「わたし、やられたままなんて嫌」
「わたくしも」
スライム姉妹はどうも復讐したいようだ。
ただ、あいつは多分強い。
かえって返り討ちに合いかねない。
そんな危険な目に合わせたくない。
それに憎しみに燃えるような人になってほしくもない。
「君たちみたいなかわいい女の子が復讐なんて考えないでほしい」
って僕は何を言ってるのか。
案の定2人とも、顔を真っ赤にしている。
「まあ、わたしがかわいいのは認めるけど」
「……」
スーラにいたっては黙りこんでしまった。
「代わりに僕が敵をとるよ」
すると、二人はこっちを見た。
真剣な表情でしばらく凝視していた彼女たちは突然吹き出す。
それも腹を抱えて笑っている。
「な、なんだよ?! なにがおかしいんだよ? あっ」
そこで気づいた。僕はパンツ1枚姿だった。にしても腹へったな。
宿屋に戻った。
部屋には極限まで腹を減らしたドーラが倒れこんでいた。
彼女が1日我慢してくれるだけで、3000ゴールドは食費が浮くため、彼女の協力は必須なのだ。
まあでもこんな調子ではあまりにかわいそうなので、1日1500ゴールドずつの倹約にしてもらおうか。
今は意識レベルが低下しているドーラにスライを紹介してみても、意味がないだろうから後にするとして。
僕は少し行きたいところがあった。
みんなが寝静まってから、僕が向かったのは前回コボルト退治のために潜り込んだ洞窟だ。
今夜は月も星も雲に隠れて、一層暗かった。口を開けている洞窟の奥は不気味な世界に繋がっていそうで怖かった。
そのとき。
「こんなとこでなにしてんの?!」
振り返るとブルーサファイアの輝きがキラキラとしていた。
スライだ。
「おどかすなよ」
「あははは、ごめんごめん」
ポリポリと頭をかく彼女。
好奇心旺盛でついてきたものと思われる。
「で、ここはなに? ってこの匂い、コボルトくさいな。ひょっとしてコボルトの巣?」
「そう、コボルトの巣だ」
スライムは鼻がいいのだろうか。
でも、スーラはそうでもなかったな。
「なんで、こんなとこに?」
当然の疑問だろう。
「確認したいことがあってね」
「それもいいけどさ、その前に少しお話できない?」
話ってなんだろうか。特に急いでいないからかまわないけど。
「別にかまわないけど」
「わたし、ちょっと訊きたいんだけど」
彼女はどういうわけかもじもじしている。
「なんだよ?」
「なんか、食べ物ない? ちょっとお腹空いちゃって」
またそれか、こっちに来てからその言葉が疫病神か背後霊のようにつきまとっているから、本当に成仏していただきたい。
そこでスライは匂いを嗅ぐしぐさをする。
「なにか、食べ物の匂いしないかな? コボルトくさいだけね。ん? でもこの匂い!」
「どうしたんだ、獲物でも見つけたのか?」
だが、スライは真面目な顔で。
「コボルトたち、死んでるんじゃない?」