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放課後安心安全部、かつどーきろく!!  作者: 小鞠 明音
【4月 創部 。 いろいろあったな……】
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第二章 不思議少女 スミレちゃん〈Ⅲ〉


「スミレちゃんはいますかー?マリンだよっ!」

「山川さんならさっき出ていったよ、よ吉川さんっ!」

「そっかー」

「もしっ、よろしければっ、僕がその部に……」

「ううんっ、大丈夫!ありがとうA君」

誰だよ、A君って。雑すぎんだろ。


今は昼休み。


昨日、山川さんにふられたというのにヴァカは朝からずーっと花が咲くような笑顔で山川を追いかけ回していた。

ストーカーのように。いや、ストーカーよりもタチが悪い。

一応、ヴァカでも天才なのだ。


探偵顔負けの推理力で瞬時の居場所を突き止め、陸上選手顔負けの速さで追いかける。

きっと、俺がしたらドン引きどころか警察呼ばれるだろーなー。


「……ねぇ」

「うわぁっ」

「うるさい」


もうここには居ないストーカーのことをかんがえていたら、急にブレザーの裾を誰かに掴まれた。


「な、なんでここにいるんですかー?山川さん」

「アイツどうにかして」


どうやら山川さんはお怒りMAXらしい。顔は見えないけどオーラですぐ分かる。


「えっと、じゃあなんで入りたくないんだ?うちの部活に」

「……」


無視ですか、そーですか。


「敢えて言うなら――」


考えていただけらしい。無視されてなくてホッとしてなくもなくもないことはない。


「部長が嫌だから」


「悪い」


それは俺にどうすることも出来ない。

手遅れである。

だが、一応、部長のフォローもしないとな、うん。


「いや、良い奴ではあるんだぜ。独りでいる子を見過ごせないとか――」

「バカにしてる?」

「すみませんでしたーっ!」


俺は涙目で謝る。山川さんへの謝罪は、これで何回目だろうか。


「他には……?」


「へ?」

「……吉川マリンについて」


山川さんの口から出た意外な言葉に俺は驚いて、間抜けな声を出してしまった。


山川さんの顔はもちろん見えない。でも、さっきのような怒りのオーラはもうどこにもないように感じる。


「えっとな――」


俺はマリンについてできるだけ詳しく話した。


彼女はただ相槌をうつだけだったが、話をちゃんと聞いてくれた。途中から愚痴のようになってしまったが、それでもずっと聞いてくれた。


「――で、アイツはヴァカでバカだけど天才で、すごく優しい奴なんだ」


「……そう。話してくれてありがとう。

授業が始まるけど?そろそろ」

「って、やばっ!じゃーな、山川さん」


俺は廊下を走り出した。走りながらスマホを見ると授業の始まり五分前。

タダでさえ普通科と特進科の教室は地味に遠いのだ。

俺は無我夢中に廊下を走る。良い子は真似するなよ。


「そーいえば……」


俺が走り出す直前、山川さんの長い前髪の間から青い瞳が見えた。とても綺麗な澄んだ青色。


その瞳が――笑っていたように思えた。


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