第二章 不思議少女 スミレちゃん〈Ⅱ〉
「えーと、こちら山川スミレさん。そして、コイツがヴァ――こほん、部長兼幼馴染の吉川マリン」
「よろしくねっ!えっと、どう呼べばいいかなっ?」
「山川」
「うんっ!分かった。スミレちゃん!」
わー、全然噛み合ってねー。
「――っ!?山川様っ、その手に持ってるアレなノートを閉じて下さいっ!」
俺はこの時、改めて国語という勉強と会話のキャッチボールの大切さを身に染みて感じたのだった。
☆ ★ ☆
「本当に、ごめんなさいっ!」
「俺は悪くないはずだけど……本当にうちのヴァカがご迷惑をおかけしましたっ」
「許さない」
「「即答っ!?」」
「……ここは?」
「ここは、我ら放課後安心安全部が乗っ取った!返し――」
「ここは放課後安心安全部の正式な部室でございます、山川様」
俺のゼロ円スマイル発動っ!
マリンはさっき殴ったため、床で悶絶しているけど気にしない。
「……何するの?トマトスープ作成?」
「「大変申し訳ありませんでした」」
マリンと俺は涙目で土下座する。
あぁ、部室の床冷たいなぁ……。今度カーペットを部費で買いに行こう。
「活動内容は?」
山川さんの質問に、俺たちは一斉に目をそらす。
「「まだ、決めておりません」」
「……は?」
「いや……うちのヴァ――ヴァカがな、ノリでつくった部活でな」
「ひどいなっ、ムクっ!ノリじゃないよ!大真面目だよっ、こっちは!」
それなら、トマトスープをつくっていた理由を知りたいよ、俺は。
俺がこれ以上言ってもこのやりとりが続くだけなので、終了。
「なら、お悩み相談室みたいなのを作れば?」
「「それだっ!」」
山川さん、マジで神。さっきは魔女とか言ってごめんなさい。
「部員は?」
「私とムクの2人だけっ!」
山川様にマリンはドヤ顔で答えた。
山川様は「コイツ、ヴァカじゃないの?」という顔で俺の方を見てくる。
「うん。ヴァカだよ、コイツ」
なんのやりとりか分かっていないヴァカはきょとんと首をかしげていた。
お前のことだ、マリン。
「まぁ、今日は本当に悪かった、山川さん。そして、助かったよ」
「うんっ!活動内容も決まったしっ、本当にありがとう!」
「……じゃあ、帰る」
イスから立ち上がって帰ろうとする山川さんをなぜかマリンが止めた。
なんだか、すっごい嫌な予感がする。
「ねぇっ、この部活に入ってよ!スミレちゃんっ!」
「イヤだ」
「うん、マリン。山川さんも嫌がってるし――」
「お願いっ!」
「……」
予感的中。
アレなノートを持った山川さんは、部室を出ていったのだった――。