第二章 不思議少女 スミレちゃん〈Ⅰ〉
放課後安心安全部に新キャラ(?)登場!
第二章スタートです!
俺は今、女子と歩いていた。放課後の廊下を。
ほかの男子ならば、喜ぶかもしれないこの状況。
でも彼女は――トマトスープ(マリン特製)で服が赤く染まっていた。
「悪かったな、うちの部長が……」
「……」
無視。それどころか、目も合わせてくれない。
すごく悲しいんですけど……。
「……」
「……」
お互い無言。気まずい。とても、めちゃくちゃ、すごく。
「えっと、保健室って確か1階――」
「いい、教室で着替えるから」
そして、また無言。
もう、帰りたい……!(泣)
だんだん俺の瞳が潤んできたところで少女が立ち止まった。
「私、このクラスだから」
目の前の教室は『1―C』。
「頭、良いんだな」
「……」
俺の言葉を無視して教室に入った少女。とても丁寧にドアの鍵まで閉めて。
「はぁ……」
俺は溜息をついて、ゆっくりとその場に座った。
1―C。この学校の特進科だ。
特進科にはA、B、C組があり、俺の通っている普通科には1、2、3組がある。
正直、めっちゃ分かりづらい。何でアルファベットか数字でそろえないのかと疑問に思う。
て、いっても、伝統とかだろうからしょうがないけれど。
「そーいえば、特進科にもマリンみたいなのがいたっけな……」
可愛くて、勉強も運動も出来る。そんな完璧な天才が同級生にもう1人、A組にいたと思う。
確か、彼女も特進科の1年代表として入学式でなんか読んでたから知ってる。
黒髪のツインテールでとても可愛い人だった。
それに、噂では誰にでも優しいらしい。
「あのヴァカとは大違いだよなぁ」
きっと、こんなことをしないはず。トマトスープを見知らぬ人にいきなりぶっかけるだなんて。
あのヴァカは何故か普通科に入ったためどちらの方が頭が良いのかは分からない。だが、彼女の方があのヴァカよりも天才であってほしい。
というか、彼女の方が絶対に勝つ。
名前は『桜坂ハルカ』さんだったと思う。クラスメイトに双子の兄かなんかがいたよーな気がする。
「終わった……」
「ぎゃあっ」
俺がハルカ様について考えていると、目の前のドアがいきなり開いた。
俺は驚いてその場でずっこけ――そうになるのをどうにか防いだ。
「ど、どちらさまですか……?」
ドアを開けたのは知らない人。スカートを履いてるため女子だ(と思う)。
少女は黒いポンチョを来ていて、フードのせいで顔が半分隠れていた。
さらに、やたらと長い銀髪の前髪が顔を隠している。
そして、なぜか手には『黒魔術の全て』と書かれた本。
魔女に見えるのは俺だけ?
俺は咄嗟に逃げたしたくなったが、体が動かない。魔術かなんかだろーか。とにかく怖い。
「どちら、さま、ですか……?」
あぁ、俺の残ライフはゼロに近い。でか、もうゼロかもしれない。
二度目の同じ質問の声は途切れ途切れになってしまった。
「山川スミレ」
さっきまで無言で俺のことを見つめていた少女が小さなこえでつぶやくように言った。
でも、どっちみち誰かが分からない。
困惑している俺に気づいたのか、少女はさらに自分のことを語りだした。
「1―C。好きなことは読書と事K――面白そうな物件を見て回ること。塩辛が大好き。2年生に兄がいる」
ん?好きなことのとき、事故物件って言おうとしてたよーな。いや、気のせいだ、うん。
「ていうか、そういう個人情報じゃなくて――」
「入学式翌日に普通科新入生代表からトマトスープをかけられた人」
「す、すいませんでしたあーっ!」
魔Z――もとい、山川さんは根に持っていたらしい。あのヴァカがしたことを。
「大変申し訳ありませんでした、山川様。私、佐藤ムクがあのヴァ――部長に代わってお詫び申し上げます。つきましてはその『デ〇ノート』と書かれた黒いノートをどこかにしまってください。お願いしますーーーっ!」
山川さんに必死に涙目で土下座なう。
恐る恐る、山川さんの方へ目を向けると、お手製であろう『デス〇ート』はなくなっていた。
た、助かった……。
安心のあまり、マジ泣きしそうになりながらも立ち上がろうとすると――、
パシャリ。パシャパシャパシャ×4。
山川さんとは逆の方向。つまり、俺の真後ろから聞こえたカメラの連写音。
「ププッ。ムクっ、なにやってるのw」
Q、ふきだしている幼馴染×スマホ×土下座している俺=?
「お前のせいだろうがあぁぁぁっ!」
A、トラウマ写真。