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放課後安心安全部、かつどーきろく!!  作者: 小鞠 明音
5月 廃部の危機。ストレスで吐きそう……。
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第8章 いざ!クッキング!〈Ⅰ〉


「そーいえばさー、マリンって料理出来るのー?」


山川兄の言葉に俺はぴしりと固まった。そして流れる沈黙の時間。

そんな俺の様子に山川兄は妹に「聞いちゃまずかったかなー」と小さな声で尋ねる。

山川さんはすこし考えたあとに――


「かけられたトマトスープは美味しかったけど……」


と呟いた。何故かかけられたのとこだけ強調して。


すると山川兄が笑顔(目が笑ってない)で「え?なんのこと?」と尋ねてくる。俺は慌てて目をそらしながら冷や汗を流す。答えた瞬間殺される。絶対。


てか山川さん、まだ根に持ってらしたんですね……。


俺は心の中で土下座をしながらもお詫びの品を考える。

そんな俺の様子に山川兄は疑わしげな目を向け続けるが、マリンが「目が怖いよー?」となだめたので一旦終了。空気が読めないバカもたまには役に立つ。


「で、えーと私が料理出来るかだっけ?実はね――」


「できるよ!」

「できねぇよ!」


マリンの言葉に俺は重ねて否定。その声にマリンは頬を膨らませ、俺は過去を思い出し顔を青くする。


「いや、できるってばー!」

「いや、できねぇから!」


またもや同時に正反対の言葉を口にする俺とマリン。


皆は知らないのだ。このヴァカの料理を。そう、あれはもう――


「兵器……」


そんな今にも死にかけな俺の言葉に山川兄はぎょっとしながらも「そんなに酷くはないでしょー」と笑う。

マリンも「ムクひどいっ」と頬を更にふくらませたが、俺は事実を言っただけなのだ。


「とりあえず作ってみればいいのに……」


そんな山川さんのつぶやきはマリンに聞こえてしまったらしい。勢いよく賛成しながら立ち上がる。

俺は何としてでも止めようとマリンにチョップをかましたあと、声を上げる。


「お前ら後悔するぞ、まじで!」

「なんでー?」

「死ぬぞ」

「だからー、そこまでは酷くないってー。ほら、本人もこうして自信あるみたいだし?ね?」


山川兄はヘラヘラと笑いながらやる気に満ちているマリンに目を向ける。

だが、自信があるかどうかの問題ではないのだ。ほんと。まじで。

俺が頭を抱えていると、山川さんがボソリと


「そもそもどこで作る気……?」


と、神の一声のような言葉を発する。


あぁ……魔女なんて思って大変申し訳ありませんでした……山川様……。


俺は心の中で懺悔する。


たしかに調理室は家庭科部が使っているため俺たちは使えない。ガスコンロのみならば実験室にあるがそれのみで調理するのは難しいだろう。


つまり今日、マリンが料理を作るのは不可能なのである。


俺はその事実に

「今日はもう諦めような?」

と、緩みそうになる頬を隠しきれずに笑いかける。

マリンは俺の言葉にだんまりを決め込んでいる。どうやら反論さえも出ないらしい。



勝った……生まれて初めて、こいつに……!



俺はゆっくりとソファーに座り、マリンの目に入らない角度でガッツポーズ。嬉しすぎて涙が軽く潤んでいる。

俺はそのまま未だに突っ立っているマリンに「まあ、座れよ」と穏やかに声をかける。


すると、あることに気がついた。彼女の口角が――上がっていることに。


このヴァカ……笑ってる……?


俺がドン引きしていると、マリンがふふふと笑いを零しながら、口を開いた。


「ふっふっふ……とうとう皆に私の真のアジトをお披露目する日が来たようだね」


まるで悪役のようなセリフを吐きながら、ゆっくりと歩き出す。

そしてふと、何も無い壁の前で止まる。


「もしかして……」


俺は黒歴史未遂事件のことを思い出す。その場所は確か、


「ここが私のアジトだぁぁっ!!」


マリンが勢いよく手を滑らせると壁が移動する。

大きな音に驚きながらもその先に見えたものに俺たちは言葉を失った。


そこには――

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