第七章 お弁当大計画!〈Ⅱ〉
気づけば半年……これからは、なるべく更新します。_○/|_ 土下座
俺はソファに座り、その隣にはマリン。テーブルを挟んだ目の前のふたつの椅子にはみみちゃん先生と山川兄。そして、少し離れた机に山川さんが。
「では、第1回!弁当大計画を始めます!」
無駄に元気に発言するマリン。良ければ、第1回では無く、最初で最後であってほしい。
心の中で呟きながら、俺はとりあえず全員分のフルーツティー(もちろん手作り)をカップに注いだ。
「えーっと、今日はお弁当のメニューを決めるために集まったんだよね?」
早くもやる気なさげな山川兄の言葉にみみちゃん先生が「はい!」と答えた。
「ではでは、意見はありますかな?」
どこから持ってきたのか付け髭を撫でながら、変な口調でみんなに尋ねるヴァカ。
「お米がいいなー」
「……おにぎり」
「サンドイッチ!」
「え、えと、たこさんウィンナーとか……?あっ、わたしが食べたいわけじゃなくて、小さい子ども用にって……」
わー、みんな見事にバラバラである。いや、そこまで酷くはないか。
てか、たこさんウィンナーは可愛い。それをピンポイントで言ったみみちゃん先生も可愛い。
あ、でも、小さい子用に作るってのはいいかもしれないな。たしかに。
「じゃあ、サンドイッチとおにぎりにそれぞれなんかおかずを付けるか」
「それでいいと思うっ!」
「ボクもそれにさんせー」
俺の言葉にみんなが頷く。
よし、主食はこれで決まったな。意外とメニュー決めは簡単に終わりそうである。
そう、心の中でガッツポーズしたのも束の間――、
「はいはーい!ボクはデミグラスソースハンバーグがいい」
「私はね、トマトコロッケ!」
「……塩辛」
「え、えと、卵焼きは外せないと思います!」
え?何?今どきの弁当ってそんなんなの?卵焼き以外、何だか違うような気がする。
いや、たしかに、デミグラスソースハンバーグはコンビニ弁当にあるけど。体育祭での弁当にしては胃に重すぎじゃないか……?あと、トマトコロッケってなんだ。塩辛!?弁当に!?
みんなのリクエストにそう、心の中でツッコミを入れると俺は目の前のテーブルに突っ伏した。
「んー、とりあえず卵焼きは入れるとして……あ、でもミニハンバーグとかならいいかもな……ミニコロッケも……あ、もういっそスープも販売……いや、でもそれは……」
「おーい、ムク?大丈夫ー?」
「悪魔にでも取り憑かれた……?」
俺が周りにダダ漏れ状態でお弁当のおかずについて考えていたら、ドン引きという名の心配をされてしまった。
失礼な。俺はいつだって元気100倍――ではないな。主にヴァカのせいで心身ともに疲れている。
てか、今はそんなこと考えている場合じゃないな。弁当について考えなければ。
「あ、でも野菜系は何を入れよう。きんぴらはやっぱ外せないよな。ほうれん草のソテーとか?キャラ弁は可愛いんだが、衛生上問題があるし、時間もな……
てか、値段とか材料費とかは決まってるのか?」
「え、えーと佐藤君……?あ、値段は600円くらいで、材料費は学校側が出してくれるそうですよ」
「ほんと!?」
「は、はいっ!今さっき、確認してきました!」
みみちゃん先生の言葉に俺が食いつくと、コクコクと頷く。少し、怖がらせてしまった、ごめんなさい。
だが、600円で1000食分だと――
「60万!?」
俺はその数字に驚いて、思わずソファーから立ち上がってしまう。
材料費は大体1食分は200円もしないはずだ。そのため、材料費を1000食分の売り上げから引いても、40万円ものお金が手元に残る。
え、やばくね?
俺がその金額の多さに震えていると、みみちゃん先生が言いづらそうに口を開いた。
「あ、あの……お弁当の売り上げは学校側に寄付することになってます……」
その言葉に山川兄は「まあ、そうなるよねー」と呟く。どこかのヴァカは少し残念そうだが。
まあ、ただの部活で40万円稼いでもそうなるのが妥当である。それに、文化祭ならともかく、体育祭だし。それに、材料費は学校側出すっていう前提だしな……。
「……ん?あっ!!」
俺はそこで大事なことに気づく。なぜ、会長が弁当のことを廃部阻止のために出したのか。あれは、ただのはた迷惑な思いつきではなかったのだ。
「弁当などの調理系は材料費が安く済む分、ちゃんと売れたのなら儲けの方が大きくなる。そして、学校側に40万もの寄付をしたのならば――当然、その部活を廃部にするなどできなくなる」
俺の言葉に山川兄以外はコクりと頷いた。どうやら、最初から気づいていたらしい。
山川兄は俺の言葉でやっと気づいたようだが。
とりあえず、会長。はた迷惑な思いつきとか思って、大変申し訳ありませんでした。ちゃんと、考えがあったんですね。
そう、会長へと俺は心の中で謝ったのだった。




