第七章 お弁当大計画!〈Ⅰ〉
「……みみちゃん先生?」
「…… 」
「おーい」
「ふえぇぇぇぇ!?」
反応おそっ!まぁ、思考がストップした原因は俺の話だろうけどさ。
――15分前。
「どうすればいいんだ……?」
俺は廊下を歩きながら、ずっと昨日のことについて考えていた。
「弁当1000食分なんて、無理だろ……」
そもそも桁がおかしい。そもそもこの学校の生徒は一般の高校よりも少なく、500人くらいしかいない。教師達は40人くらい。
つまり――もし、校内の全員に売ることが出来たとしても、あとの半分は来客者たちに売らなければならないということ。
「無理すぎるだろ…… 」
もう、うん、そんな言葉しか出てこない。「なんとかなる、仲間となら!」なんて言う、前向きな主人公キャラでもない俺はもう既に諦めモードに入っていた。
「失礼しまっす……って、俺が一番乗りか」
俺はとりあえず、部室のソファーに寝転がった。ああ、いつ寝転んでもふかふかだ……。
マリンはHRが終わった瞬間にどっかいってしまった。1人だけの部室は静かで、とても心地よい。
「ねみぃ……」
まぶたがそのままゆっくりと自然に閉じて――
「しちゅれいしまふっ!佐藤君っ!廃部じゃなくなる方法があるってホントですか!?」
ドアの開ける音とともに発せられた声によって、俺は飛び起きた。
し、心臓、今、止まった!一瞬止まった!永遠の眠りにつくところだった……。
俺はソファーから転げ落ちながら、深呼吸。
なんか、入学してから、俺、よく命の危機に晒されている気がする……。部室に今度AEDを置いておこうかな……。
「ごめんなさいっ!驚かせてしまって……」
みみちゃん先生がペコペコと頭を下げながら、申し訳なさそうに謝ってくれたので、俺は慌てて「大丈夫だから」と言った。
「で、えーと、会長に聞いた……?」
みみちゃん先生が言っているのはきっと、体育祭の弁当のことだろう。俺は立ち上がって彼女に尋ねた。
「でも、無理だよなぁ……弁当1000食分なんて」
「え?何のことですか……?」
「……え?」
みみちゃん先生は意味がわからないという顔をしてキョトンと首をかしげた。いや、もちろん可愛いけれども。
「あの、弁当って何のことですか……?」
みみちゃん先生が冷や汗を流している俺におずおずと尋ねる。
俺は会長に怒りを覚えながら、先日あった全てのことについて話したのだった。
そして――。
「ふえぇぇぇぇ!?」
なんてことになったのだった。
「えと、桁がおかしくないですか……?」
「ゼロが3つで正しいらしいです」
「お弁当ですか……?」
「はい。お弁当です」
「作れるんでしょうか……?」
「作るしかないでしょう」
俺は死んだ目をしながら、みみちゃん先生の言葉に答えていく。なんだか、乾いた笑いが零れそうになってきた。
俺がそんな様子でいると、みみちゃん先生がしばらく悩んだ後にこう告げた。
「とりあえず、みんな集めて――お弁当の品を決めましょうか」




