第六章 対決!生徒会 〈Ⅲ〉
「そうだったのか……」
「そうなんです……」
説明を終えると、会長は顎に手を当てて呟いた。
そのまま何かを考え始めたらしく、副会長二人が肩をゆすっても、何も返事をしない。
「おーい、会長ー?月ちゃーん?」
「おい、会長。聞こえているか?」
「……」
おー、すげー集中ぶり。本当に動かない。てか、死んでるようにも見える。
副会長達が至近距離で顔を覗きこんでいるが、ビクともしない。
今の状況って結構、変だよな……。
男みたいな女子に、女みたいな男に、眼鏡のイケメン。そんな三人が密着しているこの状態。
こんな風景になんの感情も浮かばない俺も、おかしいのかもしれない。
「……マリン。とりあえず、お前のせいだ」
「えっ!?何がー?」
マリンは俺のつぶやきに対して、目を白黒させる。それでも、声が小さいのは会長がいるからだろう。本当に今まで会長に何をされてきたんだろうか。
山川さんは黙々と読書中。あ、その本、俺の好きな作家のシリーズ最新刊だ。今度ダメ元で「かーしーて」って言おうかな。
あー、なんだか帰りてぇ。
会長は喋らないし(そもそも起きてる?)、W副会長も諦めたのか、お菓子食ってるし。マリンは震えてるし、山川さんは読書中だし。
時計を確認すると、5時50分。あと10分で部活はどうせ終わるんだし、もう帰りたい。
「マリン、もうそろそろ俺は――」
「弁当だー!!」
会長のお言葉。まじで、心臓止まるかと思った。
人間は本当に驚いた時、声さえも出ないということを身をもって知りました。
☆★☆
「あー、もー!本当にびっくりしたよー!」
「……?す、すまん」
「ムクぅ……私帰るー」
「あー、部長が帰ったらもともこうもないから帰るな」
マリンが涙目で俺に抱きついてきたため、俺は軽く頭を撫でて、ため息をついた。会長は頬を膨らませている山川兄からお説教をくらっている。
副会長(男)は動じてないらしく、一人黙々とお菓子を食べていた。傍から見ればボッチなのに……。そんな姿もさまになっているため、イケメンって禿げればいいなーって思った、今日この頃。
「……で、弁当って何なんだ?」
副会長が眼鏡をクイッと指で押し上げ、視線をお菓子から会長の方に向ける。
「あっ、ああ!弁当と言うのはだな――」
会長は山川兄の猫パンチ攻撃をサッと交わして、ニヤリと笑った。
「6月の体育祭でお前達には、昼食用の弁当を1000食分作ってもらう!そして、全部売り切ることが出来たのならば、廃部はなしだ!
あぁ、もちろん先生達には許可を取って、6月いっぱいまでは部の延長をしてもらうぞ。あと、体育祭の前日は体育以外は休んで、家庭科室ででも用意をしておくといい
まあ、このくらいだろう。あとは宮本先生に伝えておく」
そう言い切った彼女は「どうだ?」 と、言わんばかりに胸を張った。そんな彼女の言葉に発せられた言葉はただ一つ。
「「「はああぁぁぁっ!?」」」
全員の声が揃った絶叫は校内中の響き渡ったのだった――。




