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放課後安心安全部、かつどーきろく!!  作者: 小鞠 明音
5月 廃部の危機。ストレスで吐きそう……。
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桜坂 優の場合 『入学式→現在』

「実際関わりたくないとさえ思ってる。だから、ましてや恋人なんてありえないっ。ということでよろしく」


自己紹介でそう言った隣の席の男子は言い切ったという顔で着席した。


俺はそんな様子のそいつ――佐藤と、佐藤を睨んでいるクラスの男子たちに呆れながら、つぶやく。


「苦労するだろうなぁ……」




――翌日。放課後の教室にて。


「アイツ、ちょっと吉川さんと仲良いからってマジムカつく」

「佐藤ってぜってぇ調子のってんだろ」


忘れ物を取りに教室に慌てて戻ると、そんな声が中から聞こえてきた。


「あーあ、ほら思ったとーりだな……めんどくせぇ」


俺は溜息をつきながら、回れ右をして靴箱へと歩き出した。

忘れ物は諦めることにした。だって、俺にはあの場所に入っていく勇気などない。


「不憫なやつだなー」


まあ、頑張れよ 佐藤クン。


☆★☆


「えっと、大変申し訳ありませんでした。あと、吉川さんと俺はただの腐れ縁ですので誤解しないで下さい」


なわけねーだろ。


俺は心の中で全力でツッコんだ。


ここまで盛大に痴話ゲンカ(?)をしたのに言い訳するとか、ある意味すげー。

俺は小さく笑った。結構、面白い奴かもしれない。


あ、良いこと思いついた。


俺はノートにペンを走らせる。そして、書き終わるとそのペンで佐藤をつつく。


〜筆談開始〜



「……」


あれから20分近く筆談をしている俺たち。

俺と佐藤との間には確かな友情が芽生えていた。て、いうか……、


やべぇ、めっちゃ共感できる。


まあ、とにかく俺は佐藤ムクについて色々と誤解していたらしい。

話(ていうか筆談)をしてみると、今までの彼の苦労の連続が分かった。

それが、ほとんど幼馴染のせいだということも。

俺も幼馴染がいる。そいつにはいっつも迷惑をかけられているから、佐藤の苦労が他人事とは思えなかった。


「こらっ、佐藤君、桜坂君っ。青春を謳歌するのは今じゃないですよっ」


急にそんな可愛い声が頭の上から聞こえて、俺たちは慌てて目線をあげた。そこにいたのは、みみちゃん先生。


「「申し訳ありませんでした」」


同時に頭を下げて、声がハモった。

そのせいで、俺たちは吹き出してしまいまた、怒られてしまった。


その日から俺とムクはよく話すようになった。


☆★☆


「うっぜぇ。教室でイチャついてんじゃねーよ」

「ほんっと、今度1回しめてやろっかなー。あの、佐藤とかいうやつ」


あー、デシャヴ。見たことあるわー、この光景。

そして、今回もまた忘れ物。


普段ならばこの間のように諦めて帰るところだが、今回は明日提出のプリント。絶対に持ち帰らないとダメなやつ。


俺はなるべく気配を消して、ドアを開ける。うん、めっちゃ見られてる。

素早く自分の棚に移動し、プリントを回収する。


「失礼しましたー」

「おい、待てよ」


デスヨネー。


教室を出ようとしたところで、声をかけられる。

そして、振り向いた瞬間に胸ぐらを掴まれて、壁へと身体を押し付けられる。

こんなにドキドキしない壁ドンは人生でこれが最初で最後だろう。


てか、地味に痛い。


俺は相手に手をはなして貰おうとその手を掴んだ。


メキっ。


「あ、やべ、力加減しくじった」

「い、いったあああぁぁっ」


俺が掴んだ瞬間に響いた嫌な音。発生源は相手の手で、原因は俺の握力。


多分、骨は折れてないと思う。


まあ、少しイラついてたしな。うん、仕方ない。仕方ない。


未だに痛みに悶絶している馬鹿と、その様子をみて慌てている奴らを放置して、俺はそそくさとその場を後にする――あ、


「おい、お前ら。ムクは結構いいやつだぞー。料理うめーし。話してみれば、分かるだろーから」


俺は爽やかに笑いながらそう言った。


なんだか、野郎どもが震えていたけど、気にしなーい。


☆★☆


「昨日はやりすぎたか?やっぱ」


さすがに全治一ヶ月はダメだっただろうか。

俺は昨日のナンパ野郎のことを思い出しながらつぶやいた。


普段だったら気にしないのだが、昨日はムクと吉川も一緒だったため顔を合わせるのが少しだけ不安だ。


「おはよー、ムク」


俺は心の中の不安などを顔に出さないように、いつも通りに挨拶した。


「お、おおお、おはようございますっ」


返ってきたのは、なぜか敬語。でも、ムクの顔に俺への恐怖心などはなかった。


やっぱ、お前は良い奴だな。


俺たちは敬語が時々入り交じった会話をしながら笑い合ったのだった。



ついでに、ムクの謎の敬語は一週間ほど続いた。





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