第四章 桜坂双子と+1 〈Ⅰ〉
皆さん、こんばんは。
小鞠明音です。
今回から五月が始まります(今は1月)
ムクの友人、桜坂優君が大活躍(?)したり、
憧れの人、ハルカ様が登場!!
ぜひぜひ、お楽しみください。
「よぉー、おはよームク」
「あぁ、おはよう。優」
今日から五月。まだ少し風が冷たい朝。
俺は清々しい爽やかな気持ちで学校へと登校――出来るわけがなかった。
「なんか、疲れてねーか?お前」
さっき挨拶を交わした友人、桜坂 優にそう尋ねられて、俺は溜息をつきながら頷く。
そんな、俺の様子を見て大体の事情が分かったのか、優が笑う。
「おい、笑うなよ……」
疲れすぎて、怒る気力も無い。俺はいまだに笑う優を睨んだ。すると、鼻で笑われてしまう。
「どーせ、吉川だろ」
「……あぁ。今日起きたらな、ヴァカがいたんだ、目の前に。パジャマ姿で」
「てか、お前らって家が近いんだっけ」
「隣。ベランダから行ける」
「いーなー、そのシチュエーション。
ぜってー恋におちるだろ、それ」
コイツは何を言っているのだろーか。
相手はあのヴァカだぞ?ありえないし、考えたくもない。
俺は世にも恐ろしいことを考えながら首を振った。
「てか、お前だってハルカ様っていう素晴らしい妹がいるだろ」
「あー、あれな……。実は――って、やっぱいい。人の夢は壊しちゃダメだよな、
うん」
「勝手に自己完結すんな、優」
「あはは……。で、吉川とそれから何があったんだ?」
作り笑いで誤魔化されたような気がするけど、まあいいか。
「えっと――」
俺は朝からあったヴァカとのやり取りを優に話し始めた。
無駄に上手な絵で寝顔に落書きされたこととか、朝食を結局アイツの分まで作るハメになったこととか、その他もろもろのこととか。
全部話し終わると、優は腹を抱えて笑っていた。
「ほんっと、いつ聞いても笑えるな、お前らのやり取り。普段の吉川からじゃ想像つかねー」
「そーか?」
「だって俺、話したことねぇし。てか、そもそも吉川って、お前以外とはあんま話してねーし」
俺は優の言葉に首を傾げた。あのヴァカが人見知りとかしないと思うけど。
俺は、今までの1ヶ月間を思い出してみる。
そして思い出したのは、マリンが俺と話している姿ばかり。あとは、山川さんかみみちゃん先生か。
でも、それ以外の人たちとは話している姿を見たことがない。
「てか、吉川は?一緒に来たんだろ?」
「あー、みみちゃん先生に呼び出されてる。多分、部活関係」
「へー」
「そうだっ!!」
俺は良いことを思いつく。とてもいい作戦を。その名も――、
「マリン仲良し大作戦!!」
ドヤァ。
俺が立ち上がってそう言うと、クラス中の視線が集まった。
だんだんと、顔が赤くなっていく俺。
数秒後には、ストンと椅子に座って恥ずかしさのあまり、顔を伏せた。
「なんだ、そのだっせぇ作戦」
「いや……、マリンの友達を増やしてえなーって。
それで、ハルカ様とか話合わねえかなって。ほら、(ヴァカの)性格はアレでも一応天才だし」
「あぁ……春香か……。(春香の)性格はアレでも天才だしなあ……。うん、いいぜ。いつやんの?」
なんだか、優の言葉の所々の間とかが気になるけど……。まあ、良かった。アイツに友達が出来そうで。
これで、ヴァカの面倒を見なくてすむ――こほん。
「今日の放課後にする」
俺がそう答えた瞬間にチャイムが鳴った。ドアが開き、みみちゃん先生が入ってくる。マリンも後ろのドアから入って、席についた。
そして、またいつもの毎日が始まる――。