宮本 美々子の場合 『創部→4月』
ここからは第三章のみみちゃん先生視点となります。
「お願いっ、みみちゃん!顧問になって!」
入学式の日の放課後。
とある女子生徒――吉川さんが、わたしを訪ねて職員室へと来た。
彼女は、普通科の入試をトップで合格した期待の新入生。
中学校での内申も良く、教師達の間では入学する前からの有名人だった。
そんな彼女は部活をつくりたいと思ったらしく、『特別創部届』を持ってわたしのところへと来た。
「良いですよ」
わたしは楽しそうだったのと、生徒の頼みを断れないという思いから、顧問を引き受けた。
☆ ★ ☆
「でも、あの子たち、何をするのでしょうか……?」
とにかく、校長から許可はおりたが、まともな活動をしなければ廃部へ一直線である。
そんなことを考えながらわたしは職員室を出る。手には大量の書類。
「――っ、きゃあ!ごめんなさいっ!」
出た瞬間に人とぶつかってしまった。その拍子で書類が全部床に落ちてしまう。
わたしがしゃがんで集めていると、相手の生徒も拾ってくれた。
「あ、ありがとうございましゅっ」
そう言って顔を上げると――ハエがいた。正確には彼女とわたしの顔の間に。
わたしは驚いて小さく悲鳴を上げてしまう。
すると、彼女はわたしに拾った書類を渡して走り去ってしまった。
「あのっ……廊下は歩いて下さいっ!」
多分、聞こえてないだろうなと少し落ち込みながらわたしは歩き出した。
☆ ★ ☆
「まさか、あの子が……」
今日は吉川さんがさっそく新入部員が来たと喜びながら入部届を渡しに来た。
その新入部員は『1―C 山川スミレ』。
昨日、廊下でぶつかった子だった。
これはきっと、何かの縁だろう。仲良くなりたい。
それに、あと二人で廃部の可能性はなくなる。
「そういえば、佐藤君ってどんな子だろう……?」
いつも吉川さんと一緒にいるような気がするけど、あまり話したことはない。
でも、今日は授業のときに吉川さんとケンカしていた。
彼は確か副部長だけど、私が顧問だということは言ってないような気がするし、彼も知らないような気がする。
「大丈夫かな……?」
いろいろと。
わたしはそっと溜息をついた。
☆ ★ ☆
「昨日は楽しかったなあ……」
わたしは昨日のことを思い出して笑った。
佐藤君も面白い子だったし、お菓子も美味しくて。
「わたしもあと8歳若ければ……」
あの部に入れたのだろうか。想像したらまた笑いが止まらなくなってしまう。
そんなだらしない顔のまま歩いていたらとあるポスターが目に止まる。
4枚に見えた1枚のポスター。
あの3人の個性が溢れていて、紙1枚だけでもあの子たちの顔が浮かんでくできた。
「あ、宮本先生――どうしたんですか」
「い、いえっ、何でもないですっ!」
ポスターをずっと見ていると、国語担当の先生に声をかけられ、わたしは慌ててそう返した。
にやけはおさまってるかな……?
「あ、校長が呼んでました。校長室に来てくださいと」
「はっ、はい!分かりましたっ」
わたしはぺこりとお辞儀をして、小走りで校長室へと向かった。
「はあっ、はあっ」
わたしは乱れた呼吸を整えながらドアの前に立つ。
そして、メガネを外した。
そうだわたしも――、
「私もあの子たちのためにがんばらないと」
☆ ★ ☆
10分後。
「す、すみませんでした……」
「いえ、大丈夫です」
校長室は少し暗い。あまり私は暗い所が得意ではないから早くここを出たい。
私はゆっくりとメガネをかけた。
「では、5月が終わるまでには廃部を阻止しますねっ。失礼しました!」
わたしは校長にお辞儀をして、校長室から出た。右手にはスマホ。
「容量が重くなっちゃうけど……」
わたしはさっきの写真も保存した。
「少し、やりすぎたかな……」
でも、これで校長には認めてもらうことができた。
あとは、生徒会だけ。
「これからはあの子たち次第……」
わたしは――私はゆっくりと微笑んだ。
みみちゃん先生はどうでしたか?
個人的に書いてて微笑ましいキャラです。
また、誤字脱字がありましたら言ってください。
気になる点なども言ってくださると嬉しいです。