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7 紫銀色 その二

 程なくして父達が謁見の間に入ってきました。わたくしは立ち上がり端に寄ります。



 これからの話し合いは、とてつもなく心臓に悪かったですわ。




 「………ですから!娘は皇子殿下を庇い、恐ろしい思いをして心に深い傷を負いました!ですのでここは、皇子殿下が責任を取って、娘を婚約者にすべきではないのですか⁉」

 「そうですわ!それが筋というものではありませんか‼」

 「…………」


 どうやら両親は、わたくしを皇子殿下に嫁がせたいらしいですわね。皇子殿下の妃になれば、わたくしの裏から権力が使える、ということでしょうか?


 皇帝陛下も渋面を浮かべて話を聞いております。


 そんなに悩まないで下さい、皇帝陛下。



 「皇帝陛下、発言の許可を頂きたく」

 「………許可する」

 「ありがとうございます。今回の件に関して、わたくしは皇家には何も求めません」


 皇帝陛下の目を見つめたまま告げれば、皇帝陛下のみならず、この場に集う全ての者が驚きを表していた。両親など間抜けにも、口を開けて呆けている。


 「なっ、なにを言うのだ⁉ラティーニア!お前は皇子殿下を庇ったせいで、傷物にされたんだぞ‼」

 「お父様、嫁入り前の娘になんてことを言うのですか?わたくしは傷物になどなっておりません。どうか言葉をお控え下さい。

 皇子殿下を庇ったことでしたら、臣下として当然の行動です。褒賞など不要かと」

 「ラティーニア‼貴様、私の邪魔をするつもりか⁉」


 お父様、その発言はなにか企んでると言っているのも同然ですよ?


 「邪魔とはどういうことでしょうか?わたくしはただ当然のことを述べただけですわ」

 「貴様っ………!」

 「もうよい」


 不毛な言い争いを、厳かな声が止めた。わたくしは皇帝陛下に臣下の礼と共に謝罪をする。


 「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」

 「うむ。ラティーニアよ、そなたは何も求めずと言うが、それでは皇家の権威に関わる。よってそなたに聞く。なにか望みはあるか?」

 「でしたら!」

 「黙れ。お前には聞いていない」


 わぁ、皇帝陛下の一睨みで黙った。皇帝陛下が恐ろしいのか、お父様が弱いのか………………両方かな。


 でも困ったな。凄く試されてる気がする。ものスッゴい見られてるもの。穴が開きそう。

 隣からも痛い視線を感じるし。


 「………ではお言葉に甘えまして、皇宮への立ち入りの許可を下さいませ」

 「………ほう」


 あれ、失敗したかな?



 皇宮へは皇帝陛下の許可がなければ入れない。皇宮で働く者達は当然として、たとえ貴族であっても許可がなければ門前払いを受ける。

 子供でもそうだ。親にくっついて勝手に入る、なんてしたら親共々罰せられるだろう。ちゃんとした手続きを踏んで、許可証を手に入れなければ。


 わたくしが皇宮に入りたい理由は唯一つ。


 「何故、皇宮に?」

 「図書室の蔵書を閲覧したいのです」


 わたくしは勉強がしたい。知識が欲しい。この世界を知りたい。だから皇宮内の図書室に入りたい。

 皇都にも無料の図書館があるけれど、本の数は段違いだろうから。


 「………ふむ、いいだろう。皇宮への立ち入りを許可しよう」

 「ありがとうございます」


 もう一度、深く頭を下げる。隣から凄い睨まれていますが、気にしてはいけませんね。


 「ではこれにて終了する」


 皇帝陛下を初めとして、他の方が退出するのを待つ。わたくしは最後に両親達と謁見の間を後にした。




 皇宮からの帰りの馬車の中と館に着いてからが大変でしたわ。馬車二台(両親のせいで乗れませんの)で帰ったのですが、同乗していた兄からはグチグチと嫌みや文句を言われ、館に着いてからは父の執務室で両親と言い争い。

 わたくしは全く引きませんでしたので、話は終始平行線でしたわ。仕方ありませんね。





 この時からわたくしと両親の間には、明確な亀裂が入りましたわ。


 そして正しくこの時の選択が、物語の分岐点だったのだと、後に深く思いました。







 

読んで頂いてありがとうございました。

短くてすみません………正式な場での話って難しいですね。

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