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0 紅色 その一

この話では登場人物の心理描写や出来事を細かく書いていきたいと思います。

グダグダにならないようにしますが、話はゆっくり進む予定です。

どうぞお付き合い下さい。

 わたくしには忘れられない、忘れたくない“記憶”がある。



 五歳の時にわたくしの頭と心を支配した“記憶(それ)”は、一七歳になった今尚、鮮明に刻まれている。


 あの日から繰り返される夢。


 忘れられない記憶。

 心に溢れた想い。

 独り善がりな感情。


 そして無意味な問い掛け。



 “記憶”が蘇ったあの日に、わたくしの中に「私」が生まれた。

 生まれたと言っても、わたくしが消えた訳ではない。わたくしと「私」が合わさって一つになった感じ。



 あの時から、わたくしは今日まで生きてきた。

 これからも、わたくしは生きていく。




 貴方と共に。


 貴方の為に。














 後ろから、小さく自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。


 澄み渡った青空に美しい白い花弁(はなびら)が舞い踊る様を、なんともなしに見上げていた顔を少し動かし、声が聞こえた後方に視線を向ける。

 遠くに大切な人達の姿を見付けて、身体ごと向き直る。

 自然と笑みが浮かぶ。


 此方へと歩み寄る人達の内の一人が、笑顔で手を振っていたので、わたくしも彼等に見えるように振り返す。





 その時、時を告げる鐘が辺りに鳴り響いた。



 その瞬間、わたくしの頭を割れんばかりの激痛が襲う。

 視界が赤一色に染まる。

 両手で頭を抱えると、足の力が抜けて立っていられず、膝から崩れ落ちるように倒れる。

 軽い衝撃とともに、鼻腔を草花の香りが通り抜ける。


 遠くで誰かが叫ぶような声が聞こえて、自分を呼ぶ声も聞こえるけれど、応えることが出来ない。

 身体に力は入らず、声も出ない。

 うつ伏せに倒れたまま、頭から全身に広がるような痛みに顔が歪む。


 意識を保っていられず、瞼が重くなってきた。目を閉じれば、眠るように意識が暗闇へと落ちていく。


 完全に落ちる前に、身体に浮遊感を感じて、慣れ親しんだ熱に包まれる。


 声が聞こえたけれど、やはり応えることは出来ない。




 知らずの内に、一滴(ひとしずく)の涙が流れていた。




 わたくしは“いつものように”、声にならない、相手に届かない言葉を紡ぐ。








 ―――ごめんね








読んで頂いてありがとうございました。

次回からもよろしくお願いいたします。

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