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イロハにほへと〜私の生きる道〜  作者: 明石風 京香
序章
1/3

昔語り

遠い遠い昔の話をしよう。


遠く大和の奥深く。

今ではある一族だけが分け入ると言われている地。

その地に伝わる伝説がある。


古より、神と人とは似てはいたが異なる存在だった。

神は人を憂い、見守り、人は神を畏れ、そして敬った。


人々は信仰をもって暮らし、神の声を聴き、神の御業を見届けた。

だが・・・






時は移ろい、人々はいつしか争いを好み、神の声を聴かなくなっていった。


神は嘆いた。

人にとっては神の姿を見、神の声を聴いたのは遥か昔のことであったが、神にとってはとても短い間のことだったのだ。


神は人の仕打ちに心を閉ざし、人々に災厄をもたらした。

山は震え、海は荒れ、空には雷が鳴り響いた。


人々は神の仕業と恐れおののき、やっと神の前に平伏した。

しかし、神は人を許すことができなかった。


人は神よりもずっと早くに死に行き、また、移ろうもの。

それ故に神は、また忘れられることを恐れたのだ。


困り果てた人々は神への供物として幼い少女を差し出した。

少女は悲しみに沈み、泣き暮らし、やがてその身を投げ出そうとした。


驚いた神は、決して人に仇を成そうとしたわけではないこと、少女を神の世界へ連れ去ろうとしたわけではないことを伝えた。

少女は神の言葉を受け、その身を差し出し、神のために生きることを願った。


それ以来、神は少女を巫女と呼び、依り代とすることで人々に己の声を伝え、巫女に神楽を舞わせ、怒りを鎮めた。


巫女が人の身であるが故に、己と永くは生きられないことを知っていた神は、限られた人に力を与え、その与えられた力で人は華の御使いを呼び出し、神へと使わせた。


神はその華の御使いを巫女の夫とし、契らせ、子を産ませた。

神が自身の子を巫女に宿さなかったのは、神を産むことが人である巫女にとって、畏れ多く、また、その身が耐えられぬと知っていたからだった。

神は娘を失うのが怖かったのだ。

それほどまでに巫女を愛していた。


後に、世が平らになったことを喜んだ人々は、その巫女を代々受け継がせることとし、人との交わりを禁じた。

神の御業による子は代々女子のみが生まれ、その力もまた、受け継がれた。


神は代々受け継がれる巫女を愛し、共に生きた。

また、巫女の夫となる使いを呼ぶ一族に繁栄を約束した。


産まれてくる巫女の娘には必ず華の印が体のどこかに刻まれていたという。

その印の華の使いを夫とすることが神の声だと人々は理解した。

華を呼ぶ一族はそれぞれの家に異なった華の紋を持ち、巫女の娘、巫女姫の身体に現れた印の使いを呼び寄せたという。






神と巫女とはかくにして、この世を鎮めてきたのだった・・・。

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