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修道騎士が猪突猛進すぎる!

 私とイコールさんに使者のシリウスさんとアスミさん、そしてブレンネさん五人はとある村の入り口ーー淡い灯りに照らされた大がかりだけど古びた看板にはトッレマッジョーレと書かれていますーーに立っていました。おかしいですよね、さっきまで図書館にいたのに。


「あの図書館からグリフォンで1時間くらいの場所だね。凄まじいとしか言いようがないや」


 マップを開いて場所を確認していたシリウスさんが呟く。あたしもつられて確認したけれど、縮尺を大きくしても大きくしても図書館が現れないから諦めて閉じる。


 代わりに見えたのは順序よく並んだ石の終端。あたしの後ろには暗い石畳の夜道がずーっと続いている。


「イコールさん。もしかしてこれ」


「多分図書館解放時に出来た道だろうな。あい……魔女様の管理下にある道だからここまで移動させられたんだろうよ」


 イコールさんはブレンネさんに睨まれながら、自分を納得させるように言います。確かに管理下にあればなんでもできちゃうなんて正直納得し難いです。


「でだ、ブレンネさん。そろそろ俺達がなにを「あれ? アスミ?」」


 言われて辺りを見回して、けれどアスミさんは見つからない。転送ミスってわけじゃないはず。最初は一緒にいたし


 ということはアスミさんの性格を考えると……。


「あそこじゃないか?」とイコールさんが指差す先はぼんやりと明かりが灯る建物の軒先。観音開きの自由に入れるようになっている扉をアスミさんが揺らそうとしている。行動が早すぎるんですけど!


 それを見たシリウスさんも「これだからあいつは……」とため息をついて駆け出して行ってしまったので、残されたあたしとイコールさんは顔を見合わせて、それからブレンネさんを見る。


「……まぁ、もとより私はただの監視役だ。どうせあそこに向かわせるつもりだったしな」


 少し悲しげなブレンネさんに同情せざるを得ないですね……でもあの二人がトリガーを引いたことを考えれば、妥当な行動力なのかもしれません。


「なら行こうぜ。あの二人を放っておきたくないしな」


 イコールさんに頷き返して、少し寂れた感じのする村内を横切る。図書館に行く前に立ち寄ったあの村より広くて建物も大きそうだけれど。


 走った先の建物はどうやら酒場のようだけれど、ここも大きさから考えられるような喧騒は聞こえない。というか


「静かすぎませんか?」


 声のトーンを落として真横のイコールさんに話しかける。


「夜中に灯りをつけてやってる店だ。俺らプレイヤーはともかくとしてNPCはいそうなもんだけどな。ちょっと見てみるか」


 こくこくと同意して、あたし達は扉の上下の隙間から店内を覗く。


 店内にはいくつもの丸テーブルと椅子。そして奥にはカウンターが見える。お客さんも少なくない数いるね、頭上に名前が浮かんでいる人たちはほとんどぽかんと絶句しているけど。


 で、肝心のシリウスさんとアスミさんなんだけど、あたしの見間違えじゃなければ店の真ん中でNPCに囲まれて、両手を上にあげている。


 あたしとイコールさんはほぼ同時に頭を隙間から引き戻す。


「……………………」


 三点リーダ8つの間に、イコールさんはため息をついて頭を抱え、それから何かを考えるようにあごに手を当てました。気持ちはよく分かります。どうしたらたった数十秒の間にこんなことになってしまえるんだろう……。


「とりあえずあいつらに気づかれないように中に入るか。何があったか誰かに確認しないと」


「あいつらっていうのは?」


「|NPCにも使者たちにも《どっちも》だ」


 ですよね……あたしたちまであれに巻き込まれるのは絶対まずいもん。


 イコールさんは蝶番の軋む音を抑えながら扉を開ける。とりあえずあたしが先に入ろう。抜き足差し足静かに歩いて人がいるテーブルに座る。


 相席したその人はあたしが席についてもあっけに取られたままだ。


「あの……」


 話しかけられてようやく気づいたらしいその人は、ぎょっとした顔でこっちを見ます。声をあげられては困るので、慌てて自分の口の前に人差し指を立てる。

 

「えっと、あの人達は?」


 合点がいったとばかり頷く相席のお客さん。


「あれとは関わり合いになりたくねぇよなぁ……分かるぜ。とはいえ俺も数日前にここに来たばっかりで事情はよく分からねぇんだけどな……」


 あたしもぶんぶんと首を縦に振って同意する。うん、今はできることなら関わりたくない!

 

「この村の奴ら、やけに『教会』を嫌ってるんだよ。俺が王都から来たって話したときも露骨に嫌そうな顔をしてたしな」


「…………」


 オチが読めてしまいました。


「そんなことも露知らずにあのお嬢ちゃん「私は『教会』の騎士よ。あなたたちが抱えている問題とやらを解決しにきたわ」っていいながら入ってきてな」


 あまりにも思い切りが良すぎるでしょ! でもアスミさんなら何度こういう経験してもそう言いそう。


「えっと、じゃあもう一人の方は?」


「もう一人の兄ちゃんは多分中を見てこっそり入ろうとしてたんだけどな。あの嬢ちゃんが「ああ聖職者様! 私のことは置いて逃げてください!」って叫びはじめたせいで気付かれて」


「ああなっているんですか……」


 絶対わざとだよこれ! なにがなんでもシリウスさんを巻き込んでやるっていう鉄の意思を感じるよ!


「俺も相席していいかな?」


 そこで後から入ってきたイコールさんも男の了承を得て同じテーブルに座った。


「俺はこの街道の先の図書館からこっちにきたんだが、あんたはどうしてここに?」


「そ、それはだな……死んだ婆さんの遺言で一度はこの村に行っておけって言われてたんだ」


 男は分かりやすく動揺してなにかを隠そうとしてる。


「なにか美味しい話でもあるのか? なに、一枚噛ませろなんて言わないさ。王都に店持ってるわけでもないしな」


 男はうーんと唸ってから、他のテーブルには絶対聞こえない声の大きさで喋り始める。


「あんたの言うとおりだ。美味しい話がある。道ができてすぐにこの街道沿いの村について調べたんだけどな、ここはMPポーションの原材料の一大生産地だったらしいんだよ」


 ん? 何かがおかしい。確かにこの街道沿いの村にはMPポーションの原材料の生産地があるし、この街道のおかげで安くなったって話も聞く。でも、その生産地はここじゃなくて『教会』の二人に連れられ立ち寄り、ブレンネさんと出会ったあの村のはず。


「なあ、それっていつの資料で確認したんだ? 最近のか?」


「いや、30年くらい前のだったかな。最近のは全く見つからなかったし、うちの商人ギルドちょいと出遅れたから穴場を見つけたかったしな」


「なるほどな。それで本当に当たりだったと」


「そういうことだ。この辺りにはでかい湖があってな。そこに黒い睡蓮が群生してるんだ。あれの種を粉々に砕くとMPが得られるようになるらしい」


「……銀枠の方か」


 ぼそっとよく分からないことを呟くイコールさん。えっと、でも前に渡されたMPポーションの原材料はそんな粉末状の物じゃなかったような。


「もしかしてMPポーションの原材料って1つじゃないんですか?」


「そりゃそうさ。魔力が込められた食べ物ってのはその場所によって全く違うし、そいつらを別の場所で育てても魔力が宿らなくなるから意味がない。けどまぁポーションが1本1本別の味で当たりはずれがあるのは飲まなきゃならない側からしたら嫌だろうから、全部混ぜて甘く煮詰めてるんだってさ」


「凄まじく甘いのに意味があったんだ……あの、他の原材料って何があるんですか?」


「ん……お嬢ちゃんは聖職者か魔法使いだったりするのかな?」


 こくりと頷くと男の人は神妙な顔になる。


「じゃあ知らない方がいい。なに、この村での商談がうまくいけば王都に出回るMPポーションの半分は蓮の実が原材料になる」


 もう半分、というか今のには何が入っているの……? 気になるけど、聞かない方が良さそうだ。


「村人たちの反応は?」


「それがな、なぜだか渋るんだ。村側からしても美味しい話のはずなんだがなぁ。ま、もうちょい粘ってみるさ」


「なるほど、お話ありがとう」


 イコールさんはすっとお金をアイテム化して男に渡す。自然にこういうのができるイコールさん、ちょっとヤバい人かも。


 とりあえず、ここで何があったかは分かった気がする。昔ここはMPポーションの原材料が採れてたけど、『教会』に何か仕掛けをされて採れなくなっちゃったんだ。だから、『教会』の人たちを目の敵にしている、と……


 アスミさんたちの方に目を向けると、まだホールドアップしたまま何かを喋っている。


「どうしますかイコールさん? というかあたしたちにできることって何かあるのかな」


「とりあえず今聞いた話をシリウスに伝えておく。これだけのこと分かってりゃあいつは上手くやるだろ。ほい、送信っと」


 送った途端シリウスさんはメールを開くらしきモーションを取る。少し考えるようにうつむいた後、周りの人々に向かって話し始めた。数分の間話続けた後、彼はこのテーブルを指差した。


 酒場いた人々の視線があたしたちに集中する。あ、これマズいやつだ。席を立とうとして、イコールさんに止められる。


「安心しろソウ。シリウスは危険な状況だったら俺らを巻き込んだりしない」


「本当? シリウスさんはアスミさんと違うって言える?」


「言える言える……多分」


 言ってる間に囲んでいた男の一人が近づいてくる。


「お前らは何をしにきた?」


 彼はイコールさんに大分近いところで立ち止まって、威圧感たっぷりの口調で言ってきた。


「湖にいる化け物を倒してあんたらの助けになるためだ」


 対してそれを見上げはったり含みの決意表明をするイコールさん。両者数秒のにらみ合いの末に


「……ついてこい」


 男が踵を返した。あたしはイコールさんと一緒に立ち上がる。


「あ、あんたらもあの2人の仲間だったのか?」


 今まで唖然としていた相席していた男がやっと口を開く。


「ま、そんなところだ」


「ここの人たちが乗り気になるようにあたしたちも頑張るから、あなたも商談頑張ってね」


 あたしもいい感じのロールプレイ、できたかな? あっけにとられた男を残してあたしたちは酒場を後にした。

年二投稿、癖になってんだ


……悪癖にほどがあるのでどうにか頑張ります


追記

VRMMO系小説読者の嗜み(個人の見解です)、マジック:ザ

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