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ダンジョンに緩急がありすぎる!(上)

 カツン、カツン、カツン


 苔むしたレンガの壁、等間隔に設置された燭台の上のかすかな光、そしてその光がなんとか照らし出す冷たい石畳。うん、なんというか……


「まさしくダンジョンって感じですね……」


「牢屋があったところと同じような雰囲気だな」


 そんな感想を求めてたわけじゃないんだけどなぁ……。あたしはイコールさんにバレないように小さくため息。あーあ。やっぱりこんなことやるより本読んでたいなぁ


 イコールさん達に引きづられたあたしはこの図書館に無数に存在する小部屋の1つに連れて行かれた。そして部屋の床に描かれた魔方陣に足を踏み込むと……もうここにいたよ。説明は聞かされてたとはいえ、急すぎると思うんだ。


「そもそも、このダンジョンって1パーティーずつ挑むらしいですけど、6人基準で難易度が設定されてたりしないですよね?」


 このゲームの1パーティーは最大6人だからね。十分ありえると思うよ。まぁイコールさんは「あれだけのボスを3人で倒してるのに何を今更」って顔してるけど。


「そんな顔はしてねぇよ」


「勝手にあたしの脳内を読まないでください!」


 と、そこでダンジョン内に『あーテストテスト』とブレンネさんの声が響く。


『それに関してはこちらから答えておこう。パーティー人数によってモンスターの数などで難易度を調整している。6人で入ろうと1人で入ろうと難易度が同じでなくては個人の実力は測れないからな』


『では頑張ってくれ』と続いて外からの放送?は切れる。


「だとよ」


「そうですね……」


 もううだうだ言えるタネがないよ……。


 仕方ない、ここは発想を逆転させよう。これはどっちにしろやらなきゃいけないことなんだ。今のところトリガーミッションを放置する気なんて、あたしには全く無いんだから。それにこのミッションが終わるまで、あたしは本を読めることが決まってる。よく考えてみればそもそも本を読めるようにするためにここに来てるんだし。


 ならやることは1つだね。


「さっさと攻略して本を読みましょうか、イコールさん」


「俺はあんまり読みたくないんだけどな。ま、早く攻略しちまおうってのには賛成だ」


 なんとも反応を返ししづらいイコールさんの言葉を振り切って前に出ると「ああちょっと待て」と後ろから声がかかる。


「戦闘になる前に把握しておきたいんだが、魔法の威力はどうなってる?」


 一瞬頭の上にクエスチョンマークが浮かびかけたけれど、すぐになんのことか察しがついた。


「そう言えばあたし、弱体化してましたね」


 死んだらキャラ消去とか他のプレイヤーから攻撃されるとか凄まじいデメリットが付いていた『魔女化』だけど、あの状態の時はステータスが強化されてたんだよね。一番上がり幅と影響が大きかったMPはキュラ様とMP回復アイテムが安くなったおかげであんまり気にしなくていいけど、他の、例えば魔法攻撃力は……。

 

「多分半減ぐらいだと思いますけど……」


「自信なさ気だな」


「だって気にかけたこともないですから」


「ゲームで一番気にしなきゃいけないことだと思うんだが……」と首をひねるイコールさん。そうしたくなる気持ちも分からなくはないけど、普段全く気にしてないんだから仕方ない。


「で、半減ねぇ……。『魔女化』してなかった王都で戦った時も十分に高火力だったから問題ないとは思うが、あんまり強いボスは勘弁だな」


「安心して下さい。割合魔法(一番強いの)は弱くなってませんし、新しい魔法も覚えてますから」


 やけに自信満々に聞こえたのだろう。イコールさんは一瞬目を丸くする。


「本人がそう言うなら問題ねぇか。よろしく頼んだぜ? 魔法使いさん」


 あたしは笑顔で頷き、答える。


「はい! あ、でも雑魚戦はやっぱり不向きなのでよろしくお願いします」


「わかってら。んじゃあ行こうか」


 そしてあたしたちは暗い通路を歩き始めた。



「…………」


 通路の奥から現れた屍人のようなモンスターに対して、イコールさんは無言で剣を振るう。生ける屍は剣を避けきれずノックバック……というか壁に衝突して消滅した。出発してすぐの頃は「セイッ」とか「ヤッ」とか言ってたんだけどね。必要ないと分かったんだろう。


「ふぁ~」


 あんまりにも手応えがなさすぎてあくびが出る。イコールさん1人で対応できない時はあたしがフォローしないとって気合い入れてたんだけどなぁ。


「……気持ちは分かるが、あくびはやめろ」


 一緒に現れたもう1体の屍人をあしらいながらイコールさんが言う。まぁもう4階層ぐらい手応えのない敵と戦ってるんだから、イコールさんも嫌になるだろう。


「じゃあ話し相手になって下さい。と言うか、聞きたいことがあるんですけど」


「なんだ?」


「あの鎌、使わないんですね」


 今、イコールさんの手に握られているのは今までずっとイコールさんが振るってきたのと同じ長剣。キュラ様を倒した? 救った? どっちとも言いづらいけど、とにかくあの時の大鎌ではない。


「大鎌は当たり判定がぜんぜん違う。まぁそれがあの時は役に立ったわけだが、普段使いしたくはない。それに」


「それに?」


「剣でしかブレンネさんに稽古を付けてもらえないからな」


「稽古、ですか?」


「あぁ、あいつは教導ってスキルで自分の覚えている剣術を教えられるらしくてな。あいつの剣に対応して動くだけでスキルが覚えられるってわけだ」


「ブレンネさんはそんなことまで出来るんですか!?」


 当然その「教導」なんてスキルは今まで聞いたことがない。


「まぁ驚くよな。技のレパートリーも尋常じゃないぜ? ここより先にサービス開始した北米のコミュニティでも見つかってない技まで使ってきやがる 一体俺ら(プレイヤー)はどれだけ時間を掛ければあの領域まで辿り着けるんだろうな?」


 図書館の攻略中、犬になって弱くなったというのが嘘みたいに強いと感じたのを思い出す。たいして弱くなってなかった訳じゃなくて、元が凄すぎたんだね……。


「まぁとにかく、そんなあの人でも大鎌は「教えられるほどは出来ない」らしい。だから今もこれを握ってるってわけだ」


「使えないわけではないんですね……」


 末恐ろしい話だよ。まぁあんなことをやってのけたキュラ様のお付きなのだから、その強さも納得できはするのだけれど。


「大鎌は……どうしようか。物好きなやつがいれば交換するのがいいと思うんだが」


「私は使った事ないですけど、ショップってありましたよね?」


「あれはユーザーメイドのものしか売れないからなぁ」


 雑談しながらも、イコールさんは敵をバッタバッタと薙ぎ倒していく。図書館での雑魚戦よりあしらうのが上手くなってる気がするよ。敵が弱いだけかもしれないけど。


 あんまりにも暇なのでこの層のマップを開く。戦ってくれてる人がどうしても隅々までマッピングしたいと言うから渋々書く係を務めているのだけれど、思ったより便利な機能がついてる。大体のことがらは視界に入れると反映してくれるし、アイコンも豊富。字も簡単に書き入れられる。


 マッピングのためきょろきょろしたり、地図に書き足したりしながらイコールさんについていく。この階もそろそろマップが埋まりそう。ということはこの通路の先にはあれがありそうだね。


 予想通り歩いた先には上の階へと進むための階段があった。


「次の階でやっと終わりますね」


「そうだな、でも気を抜くなよ」


「いまさらそれを言うんですか?」


 気を抜くどころか、頑張る必要のあったところすらなかったと思うんだけど。


「言いたいことはよく分かるが、だからこそだ。これ一応実力を図るためのものだろ? しかも景品までついてる。このままじゃ1回目とはいえちょっと楽すぎるだろ」


「……この後難易度爆上がり?」


「可能性はあるだろうな」


 嫌だけど、さすがにこのままなんにもせずに終わるのもあれだね。どうせ本を読めないならゲームを楽しみたいよ。


「難易度上がるならやっと私の出番ですね」


「珍しいこと言うんだな」


「ついてくだけはつまらないですから」


「なるほど。じゃあ手応えある戦いがあることを祈って登ろうか」


 あたしは頷いて、イコールさんとともに最奥への階段を登る。



 一番上の階は今までとちょっと毛色が違った。


「なんだここ? ボス部屋か?」


 松明の明かりに照らされたさほど大きくない部屋。中央には書見台のような物が2つ置かれている。中央のものにうかつにさわるといつかみたいにいきなりボス戦が始まりそうなので先に部屋を観察しておこう。


 側面は特に異常なし。階段から見て奥の方には……扉、かな? なんだかよくわからない模様が書かれた二枚の石の板があって、その境目に魔法陣が浮いている。何かをして封印を解くと先に進める。そんな仕掛けなのだろう。


「多分ここに手をかざせってことだな」


 中央を見ていたイコールさんがあたしを呼ぶ。扉を開ける仕掛けは多分中央の台にあるのかな? 戻って確認すると扉にあったのと同じような装飾がなされていて、上の斜めになった面には手の形が描かれている。確かに、いかにもかざしてくださいと言いたげなデザインだね。


「奥の扉に封印ぽいものがありました。多分ここに手を置くと」


「ボス戦か。腕が鳴るぜ。にしてもこんなギミックがあるってことはここで1度パーティーメンバー全員が集まらせたいってことだろ? ボスは予想通り強敵かもしれないな」


 ちょっと考えてイコールさんの言いたいことを理解する。ここに台が2つあるのはパーティー(あたし達)が2人だからで、増えたらここの台も増える可能性があるんだね。

 

 そして全員がここに集まらなきゃボスへの道は開かれないと。


「確かに一筋縄じゃいかないボスかもしれません。でも」


 あたしはにこりと笑ってイコールさんを見る。目の前の闘剣士はそれに気づいて不敵な笑みを浮かべる


「ああ、俺達なら楽勝だ」


 頷き合ってあたしたちは台に手をかざす。


 すると奥の壁にあった魔方陣がジジジと嫌な音を立てて消える。2枚の石板が少しずつ開いていき、そこで


『ダンジョンミッション〈入り口まで逃げろ〉発生』


「は?」


「え?」


 とっても具体的な名前のミッションが発生した。逃げろってどういうこと!?

(下)は明日の8時に投稿です

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