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剣と魔法のRPGなのに魔法が弱すぎる!  作者: 書き手さん
剣と魔法のRPGなのに魔法が弱すぎる!
19/30

図書館のボスが本気すぎる!

 1日中、そわそわしていたと思う。


 勉強どころか、点字の本を読んでいる時でさえ集中出来なかった。頭の中にあったのは1つだけ。間に合ったのか、間に合わなかったのか。


「でも、いざ結果を見れるとなると、怖くて開けないんだよね……」


 タイトル画面から一動作で、ログイン画面、つまり現在地が見えるところにたどり着いてしまう。


「でも、ブレンネさんとイコールさんを待たせるのも忍びないし……行こう」


 覚悟を決めてログイン画面へ、現在地は……『エクレーシス・ブレラ・ビブリオテーカ』? 少なくとも、あたしのPOP場所じゃないよね? そう判断した刹那、ログインボタンを押していた。


「イコールさぁああああああああん! やったよぉおおおおおおおお!!」


 ゲーム世界に体が具現化した瞬間、叫びながらイコールさんに飛びつく。

 

「うおっ? ちょっ、まっ」


 受け止められたアタシは、イコールさんの腕の中で180°回転して、地面に降ろされる。


「いきなり何をするんだ……? 流石にそのテンションにはついていけないぞ?」


「すみません。感極まっちゃって、つい」


「女子って言うのは、すごい感動するとあんなことやるのか……? 分かんねぇな」


 そして、苦笑いを浮かべるブレンネさんの方に向き直る。


「ブレンネさんのおかげで、なんとか間に合いました。本当にありがとうございます!」


 お辞儀をしたあたしの頭の上で、ブレンネさんがフッと笑ったのが分かる。


「イコールくん、彼女は私や君のようにあの後すぐここに留まれることを確認出来なかった。4日以上、間に合ったかどうか不安なままだったわけだ。感動の度合いが違うと思わないか?」


「まぁ確かにそうだな。さっきのも納得出来なくはない……のか?」


 首をかしげるイコールさんが脳裏に浮かんだけど、ブレンネさんの話す対象はあたしに移る。


「そしてソウくん、間に合ったのは私のおかげなんかじゃない。紛れもなく君のおかげだよ。こちらが礼を言わなければならない」


「そうだ! あれは一体どうやったんだ?」


 イコールさんまで乗ってきたので、あたしは頭をあげて、『魔法がかかっている状態でだけ、弱点が出現する』っていうあたしの予想を2人に話した。


「なるほど、だから『偏りし力を持つものに我は倒せぬ!』と言っていたのか。私には気付けなかった」


「パーティーが悪けりゃ絶対倒せないってか? いや、でも時間をかければあのままでも行けそうだったな」


「怒り状態になった後が、とっても強いんじゃないですか?」


「あぁ、なるほど。そうかもな」


 前のボスについて話すことはそれくらいかな? そろそろ先の話に移ろう。


 さしあたっては…………


「ブレンネさん、あたし前からずっと気になってたことがあるんです」


「なんだね?」


 急に話を変えたあたしを、ブレンネさんは不思議そうな顔をして見る。


「管理の魔女様のことなのですが、管理の魔女様を助けるのと、倒すのって、意味が違うんですか?」


 管理の魔女様と言った途端に、ブレンネさんは真剣な顔になった。考え事をするように目を閉じて、「そういえばそんなことを言ったな」と呟く。


「あぁ、全く違う。助けるのは倒すより難しいだろう」


「なぜですか?」


「魔女様にかけられている魔法を解かなくてはならないからだ」


「「え?」」


 やっぱり倒しても魔法は解けないんだ……でも、解く方法なんてあたしもイコールさんも知らないよ?


「魔法を解くために俺らを連れて来たっつうことか? そんなこと出来ねぇぞ?」


「最後まで聞いてくれ。尋常ならざる魔力をお持ちの魔女様に、魔法をかけ続けるのは至難の技。十中八九、私やソウ君がかかったトラップのような、魔法を内包した物を使って持続させているのだろう」


 怪しいものを作るのが得意だとは、確かに言っていたけれど、そんなことまで出来るの?


「あるとしたら魔女様がおられる部屋のなかなのだが…………少なくとも私1人では見つけるどころか、探すことすら出来なかった」


「探すことすら出来ねぇ状況って、どんなだよ」


「口で説明するだけなら一言で済む。今までのモンスターとは比較にならないほど、強いのだ。倒す方が簡単とは言ったが、それすら難しいほどにな」


 ただ漠然と『強い』って言われてもなぁ。よく分からないよ。


 いまいちよく分からないと顔に出ていたのだろう。ブレンネさんは提案してきた。


「この部屋を出てすぐに、魔女様のおられる部屋がある。一度行ってみれば私の言いたいことは分かるだろう。ただ──」


 いつになく真剣な声で、ブレンネさんは続けた。


「絶対に死ぬんじゃないぞ?」



 ブレンネさんに連れられて、あたしたちは今、重厚な木の扉の前にいる。


 部屋を出て、廊下を2、30m歩いたところにあるから、本当にすぐ近く。途中に扉は無かったから、もしかするとあの応接室の壁1枚先はこの部屋なのかもしれない。


「私は山犬の姿になっておく。イコール君、開けてくれ」


「あたしも手伝うよ」


 ぎぎぎと音をたてながら、入り口の扉は開いていく。かなり広く、天井の高い部屋で、ここから見える3つの側面は鎖の垂れた本棚で覆われている。天井に窓はないけれど、宗教画が描かれていて、まるで教会のようだ。


 そしてその部屋の中央に、人の姿を象った、黒い影が立っている。今までのモンスターに比べたらかなり小さい。


 それなのに、唾をごくりと飲んでいた。そして一歩、足が後ろに下がっている。他のモンスターから感じたことのない威圧感が、ひしひしと伝わってくるよ。


「なんだ、あれは」


「魔女様だ。もっとも、本来の姿ではないがな」


 黒い影は、目があるのだろう部分をあたしたちに向けたまま、ピクリとも動かない。


「襲って……こないですね」


「今はまだ、な。一歩でもここに立ち入ればすぐに攻撃が始まるだろう」


「……………………」


 これはモンスターと言うより、戦闘ロボットって言った方が正しそう。侵入者を排除するロボット。正直入りたくない。でも、ここで立ち止まってたら話が先に進まないよね?


 あたしは勇気を出して、引いた足を前に進める。イコールさんも同じように思ったみたいで、同じく足を踏み出していた。


 あたしたちは頷きあって、同時に敷居をまたぐ。


 その瞬間


『ウァアアアアアアアアアアア!!』


 獣のような叫び声が部屋の中に響く。事前に聞いていなければ、叫んでいるのが女の人だなんて、分からなかっただろう。


 足を一歩を踏み出したままの姿勢で硬直していたあたしたちに、ブレンネさんは呻くように言う。


「2人とも、ここに留まるな……」


 ブレンネさんの言葉が終わる前に、影が両手を天井へ突き上げる。


 そして、次の瞬間に床から数えきれないほどの黒い影の槍が射出された。天高く舞い上がった槍は、弧を描いてあたしたちの頭上へむかって降り注いで来る。


「走れ!」


 イコールさんの怒号を聞く前に、あたしは走り出していた。それとともに槍の進行方向が変わる。


「追尾式!?」


 こんなの逃げてたって意味ないじゃん! 出来るか分かんないけど、やるしかない!


雷力解放(フルメインクル)!》


 放たれた電撃は、黒い槍の1本を撃ち抜き、撃墜する。攻撃で壊せる!


 ちらっとイコールさんの方を見ると、降り注ぐ槍の雨を、剣で斬り、いなしていた。


 もう降り注いでる?


 意識を自分の上に戻した瞬間に、1本の槍が脚に突き刺さる。


「え?」


 突き刺さった瞬間、普通のプレイヤーよりずっと多いはずのHPが2割も減った。「死ぬんじゃないぞ?」と言うブレンネさんの声がよみがえる。


 冗談じゃないよ! 何この威力!?


 確かに今までのモンスターとは全然違う! クリアさせる気が全く感じられないよ!


 でも、こんなところで死ねないよ! あたしは呪文を叫ぶ。


炎力爆発(フランアグレシ)!》


 火の玉があたしの目の前で槍に当たり、爆発。凄まじい光に思わず顔を庇ってしまった。


 閃光が去った後に、槍は残っていない。助かった?


 黒い影はブレンネさんに近寄り、闇色の剣を振るっている。よし、今のうちに魔女さんを操ってる物を探そう。


 近くの壁の側に行って、本棚から鎖のついた本を引き抜…………けない? どうなってるの?


「ソウ!」


 後ろからイコールさんに呼ばれて、体ごと振り向いた瞬間


 ザクッ


 あたしの体1つ横。つまりほんの数瞬前まであたしがいたところに、影色の剣が突き刺さる。そして、目の前にはブレンネさんのところにいたはずの、黒い人の影。


 あたしを貫けなかった剣は本棚からゆっくり引き抜かれ、切っ先があたしに向けられる。


「────────ッ!」


 自分の口から、声にならない悲鳴が漏れる。こんなの戦える相手じゃない! あたしは出口に向けて全力で走る。


雷力解放(フルメインクル)!》


雷力解放(フルメインクル)!》


雷力解放(フルメインクル)!》


 当たる気なんて全くしなかったけど、避けさせなきゃ追いつかれる。そんな気がして、魔法を乱発する。


 でも、影は避けさえしなかった。当たってもダメージどころか怯みさえしない。


 影は電撃をくらいながら、剣を持った手を前に突きだす。すると剣は消え、そのかわり手首の周りに黒い球が現れる。


 闇力注刺(テネブアグレシ)? 暗闇状態になったら絶対逃げ切れない!


 どうしようどうしようと焦っている間に、影はボールを投げるようなモーションをする。それと同時に球は黒いナイフに変化し、一直線にあたしのところへ…………


「こんな持ち方で悪いな」


 当たる寸前に、白い山犬があたしを口で掴んで跳躍。一気に出口までたどり着く。噛まれてるのに痛くもないしダメージもない。なんか不思議な気分と現実逃避気味に思う。


 ブレンネさんとあたしが外に出ると、扉は勝手に閉まった。イコールさんは既に外にいる。全員が外に出ると自動的に閉まるのかな?


 あたしは廊下の床に降ろされた。立ち上がろうとしたけれど、何故か足に力が入らない。腰が抜けるってこういう状態なんだろうなぁ。


 あたしは座ったまま、ブレンネさんに言う。


「ありがとうございます、また助けられちゃいました」


「気にすることはない。私は皆であの部屋から出られたことを何より嬉しく思っている」


 そう言って、ブレンネさんは一度言葉を切る。


「で、だ。どうすればあの部屋の中から目当ての物を探せるだろうか?」


 あたしは黙るしかなかった。だってあんなの無理だよ。倒せる気がしない。


 と、そこでイコールさんが口を開く。


「 なぁソウ。さっき部屋の中で本棚を調べてたよな? 本は取り出せたか?」


「うんん、ダメだった」


 あたしが首を振りながら答えると、イコールさんは唸る。


 そして、これしかねぇと言いたげに顔を上げた。


「あの本棚の中を見られるようにして、中の本も調べろっつうなら無理だが、そうじゃなけりゃ──」


 イコールさんは、あたしたちをしっかり見据えて言い切った。


「少々手間だが、探せるぜ。魔法を内包した物とやらを」

申し訳ありませんが、次話の投稿は2週間以上後、場合によっては3月初旬になる可能性があります。ご了承ください。

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