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剣と魔法のRPGなのに魔法が弱すぎる!  作者: 書き手さん
剣と魔法のRPGなのに魔法が弱すぎる!
17/30

なにより時間がなさすぎる!

 図書館に入ってから、数日がたった。

 ダンジョン攻略はいたって順調。敵はそこまで強くなってないし、安全地帯も1回目と同じ方法で探せてる。珍しく、ホントに順――――

 

「おい! 何やってんだ! 早く逃げるぞ!」


「ごめんなさいごめんなさい! 待ってくださいよ!」


「自業自得なんだからな!? 待ってとか言う前に早く追いつこうとしろ!」


「ごめんなさいってば!」


 あたしが本を読んだために、安全地帯の中(・・・・・・)に呼び出されたモンスターから、必死に逃げる。この中なら絶対大丈夫だと思ったのに! 出てくるだけ出てきて、こっちは攻撃出来ないなんてなしだよ!


 システム上出せる最高スピードでモンスターを振り切り、階段を駆け上がる。地上であたしを迎えた、苦笑いのブレンネさんと白い目のイコールさんから目を逸らし、ボロボロの法衣を着たモンスターを迎撃しようと、階段から出てくるのを待つ。……あれ? 出てこない。


「どうやら、大きすぎて出てこれないようだな」


 ブレンネさんはため息をつく。そう、敵が出てこれないっていうのは、全然いい事じゃない。あたし達がここに入れないっていうのと、同じ意味なんだから。


「本当にごめんなさい……」


 あたしは素直に頭を下げる。それしか出来ない。


 そんなあたしに、イコールさんは大きなため息をついて言う。

 

「やっちまったことはどうしようもないからな。ただ3度目はねぇぞ」


「そうだな、こうしているより次の安全地帯を探した方がいい」


 ブレンネさんもそう言ってくれた。正直まだ申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、自業自得のことで落ち込んでたら、また2人に迷惑かけちゃうね。


「分かりました……でも、ごめんなさい」


 あたしはもう1度そう言って、歩き出した2人を追いかけた。



 現在時刻は午後11時。早めに安全地帯に入っていたから、まだ時間には余裕がある。落ち着いて行くべきだね。


 本棚の谷を歩きながら、あたしが小さく深呼吸していると、イコールさんがブレンネさんに「聞きたいことがあるんだが」と問いかけた。


「今俺達がどこまで来たかって、分かるか?」


「正確な位置は分からないが、多分もうかなり深いところまで来ているはずだ。明日、明後日中には最深部へ辿り着けるだろう」


「ボス部……じゃなくて管理の魔女様がいる部屋の前に安全地帯は?」


 ボスって言った瞬間ブレンネさんの顔が怖くなった。あたしほどじゃないけど、イコールさんも迂闊だよ。


「ある。魔女様が一筋縄でいくわけがないから、何度も戻ることになるだろう」


「え? 戻れるのですか?」


 それなら、少しずつHPを減らして行けば、誰にでも倒すことが出来てしまうけど……。


「私が戻って帰って来ているのだから当然じゃないか。大型モンスターが出現する場所とは違うのだぞ?」


 違うのかぁ。そう言ってみれば、今回のクエストを受けるときも、ブレンネさんは「管理の魔女様を助けてくれ。無理なら、倒してくれ」って言ってたような。

 

 もしかして、倒せば精神までモンスター化してるのが治るってわけじゃない?

 

 一体どうしろって言うんだろう? ブレンネさんに再度質問しようとした時、邪魔が入る。

 

 法衣を着た木偶人形と、ガーゴイルが目の前に出現。イコールさんとブレンネさんは互いに目配せして走っていってしまう。


 時間もないし、今回だけはあたしもモブ戦に参加していいよね? あたしはイコールさんから1番離れたところにいる木偶人形に向かって魔法を放つ。


雷力開放(フラメインクル)!》


 呪文を唱えた瞬間に雷撃が敵を撃つ。敵のHPを半分削り、しかも麻痺がついた。周りの敵を片付けたイコールさんがその敵に向かったので、次はブレンネさんの方を――――

 

「こっちはもう片付く! イコールくんの方の援護をしてくれ」


「分かりました!」


 イコールさんの方に向き直り、戦闘の邪魔にならないように魔法を使う。


雷力開放(フラメインクル)!》


炎力開放(フランアグレ)!》


聖力開放(ルーメインクル)!》


 イコールさんを遠巻きに狙っていたモンスター達を倒し終わった時には、全てのモンスターがいなくなっていた。

 

「悪いな、助かったぜ」


「正直、余計なお世話だった気がしなくもないです」


「いやいや、お前のおかげ早く倒し終わったのは事実だぜ」


 そう言って、彼はイコールさんの方を向く。


「モンスターが出てきたってことは、この近くに安全地帯があるんじゃねぇか?」


「そうだな、探してみようか」


 あたし達は少し散らばって書棚から本を引き抜く。あたしは1番奥側。かなり鎖が長いなぁ。結構ここから遠いのかな?

 

 あたしは本を胸に抱いて、奥へ奥へと走る。今いる通りを角まで行って、続く道を見ると、その先は行き止まり。


 周りに気をつけながら、鎖を引きずり歩く。まだまだ長さに余裕があるから、安全地帯はこっちじゃなかったみたい。

 

 でも、一応奥まで見ておこうかな。そう思って歩を進める。そしたら、大きな発見があった。

 

 奥の本棚と、左の本棚の間。そこに、本棚のない、普通の通路があったのである。



「一応、手前に戻って調べてみたが、先程までいた安全地帯に戻ってしまったな」


 ブレンネさんの言葉を受けて、あたしも通路を指さす。

 

「こっちには安全地帯がなくて、かわりにこれです」


 勝手なことして酷い目にあったので、あたしは2人を呼びに戻って、それからここにみんなで来た。今は日付がかわる30分前。そろそろ急がなきゃいけない時間かも。

 

「ここは見覚えのある場所か?」


 ブレンネさんに質問するイコールさんも少し焦り口調。12時こえたらあたしとブレンネさんは最初のPOP場所に戻るけど、イコールさんはここに1人取り残されるんだもん。

 

 そうなったらあたしのせい。だから、絶対そんなことにはならないようにしたいけれど……。

 

「ここ自体に見覚えはないが、壁のデザインが管理の魔女様がいた場所に似ている……。そこに繋がっているのかもしれないな」


「その前に安全地帯があるんだろ? じゃあ行くしかねぇな」


 ちょっと焦りすぎだと思うけど……正論だよね。あたしにはとめられない。


 ブレンネさんも乗り気じゃない顔をしている。でも反論は出てこなそうだ。


「さ、行こうぜ」


 あたし達に背中を向けて、イコールさんは通路をスタスタと歩き出す。はぐれないように追いつくけど……やっぱり不安だよ。自分の意見じゃないからかなぁ?


 予想以上に長い通路を数分間歩き続ける。いくつかドアを見かけたけど、どれも鍵がかかっていて開かない。実質的には1本道のこの通路。やっぱり不安だよ。


「イコールさん、具体的な根拠はないんですけど……。なんかこのまま進んじゃいけない気がするのです」


「俺も同じ意見だ。が、何かしらの方法でログアウトできれば、今日のスタート地点に戻れるんだぜ? それなら前に進んでおくべきだろ」


「確かにそのとおりですね!」


 イコールさんは焦っていてもきちんと考える人だった。あたしなんかとは全然違うね。

 

 と、そこで、ブレンネさんが口を開く。


「あーそうか、私のあの魔法をイコール君はそういうものだと思っていたのか」


 その顔はこころなしか青い。


「私の魔法は1度しか効果がなくてな……。永続的に留まれる場所を作るものではないのだ」


「「つまり?」」


「イコール君はあの村へ、私とソウ君はモンスターとして出現する場所に戻ることになる」


「「嘘でしょ(だろ)!?」」


 ブレンネさんになにか言ってる暇も、歩いてる暇もない! 一刻も早く安全地帯にたどり着かないと! あたし達は通路の出口の扉に向かって、全速力で走る。

 

 走った勢いのまま扉を蹴破り、円形の大きな部屋に入る。天井はドームになっていて、美しい彫刻が彫られていた。


「ここが……安全地帯?」


「いや、違う。しかし……まさかな」


 なにがまさかなの? と疑問に思った瞬間に、あたし達が入ってきた扉が閉まる重苦しい音を聞いて、ブレンネさんが何を察したのかに気付いた。

 

「ボス部屋は、ボスを倒すまで出られないんだよな……」


 目の前には、あのボロボロの法衣の男より更に巨大な人型モンスターが、宙に浮いている。さしづめ、ラスボス前の大ボス戦ってところかな?


 でも、そこが1番まずいわけじゃない。

 

「これを後、20分で?」


 そう、あたし達に残された時間はたったの20分しかないのだ。

 

 絶体絶命にも、程がある。

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