第8話:鳴かぬなら鳴かせて見せよう 其の1
「やっぱり濱嶺なのか?」
「藤吉郎よ、とりあえずここじゃ村の奴来るかも知れんし
場所、移そうぜ」
「ワシは何処にもいかん!」
濱嶺はその場に座り込んでいる。
藤吉郎は何故かそわそわしている。
「はぁ〜??おっさん何言ってんだ!
もっかいグーいくか??この犯罪野郎め!」
イライラしてきた俺はそう言い握り拳を上げた。
「ひっ!?」
一瞬驚きを見せたものの今度は黙り(だんまり)を決め込んだ。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
ドカッ
「痛っ!!」
「いつまで黙ってんだよ、お前の家行こうぜ!」
無言のおっさんのケツを蹴り上げた。
「動かないならこのまま蹴り続けるぜ!」
「お前、年寄りにひどい事すると罰があたるぞ」
「だからぁ〜なぁ〜に偉そうに言ってんの?
それに、お前年寄りってのにはまだ少し早いんじゃね〜か?」
そう言いさらにもう一発蹴りをいれた。
このまま蹴り続けられると思ったのか濱嶺は観念して歩き出した。
「良、お前結構酷いな」
藤吉郎がボソッといった。
「なんで??」
「いやいや、普通こんなおっさんぶっ飛ばしたり、蹴っ飛ばしたりしないだろ」
「何言ってんの?コイツのせいでお前縛られたんだろ?」
「いや・・・まぁ、そうだけど・・・」
「なんだよ、煮えきらねぇ〜な、このおっさんが濱嶺だからか?
そもそも、本当にお前の探してる濱嶺なのか?」
「ん〜〜〜だと思うんだが・・・??」
「人違いじゃねぇ〜か?お前の探してる奴って刀作るやつだろ
畑、荒らしたりはしねぇ〜だろ!」
「そうなんだよなぁ・・・」
「それよりまだ着かねぇ〜のかよ??もうかなり歩いただろ?」
「確かに・・・」
ドン・・・
そんな会話をしながらかなり歩いただろうか
俺の前を歩いてたおっさんが急に立ち止まったものだから
俺はおっさんにぶつかってしまった。
「って〜〜!おいこらっおっさん、何急に止まってんだよ!」
「着いたわ」
ぶっきらぼうにおっさんは答えた。
「ずいぶん遠くから来てたんだな、ったく何やってんだか」
そう言いながら戸を開けた。
「やっぱこのおっさん濱嶺だわ」
藤吉郎は呟いた。
目の前には、ほこりを被ってはいるものの
素人の俺が見ても、刀を作っていたであろうあとがあった。
「なぁ、濱嶺のおっさん自分に刀を作ってもらえないか?」
正座をし真剣に訴える藤吉郎に俺は少し戸惑った。
「コイツ畑荒らしの犯人だぞ」
「犯人なら、自分が身代わりになってもいい、だから頼む」
「おいおい、何言ってんだ藤吉郎!」
「何処で聞いたか知らんが、ワシはもう刀は作らん
刀が欲しいなら他所にいけ」
「おっさん、お前少し黙ってろよ!」
「なぁ、藤吉郎、刀ならコイツが言うように他所で
作ってもらおうぜ!まずはお前の無実をはらすのが先だろうよ」
「いや・・・他所で作ってもらう刀では駄目なんだ
濱嶺の刀でなければ、駄目なんだ・・・・」
しばらく沈黙が続いた・・・
「ああぁ〜〜〜もう面倒くせぇ〜〜!!イライラする!」
やはりしびれを切らしたの俺だった。
「なぁ、濱嶺のおっさんよぉ〜
藤吉郎もここまで言ってんだから刀作ってやれよ
畑の事は俺が何とかしてやるからよぉ!」
「良・・・・」
「そう言われても無理なものは無理じゃ
ワシはもう刀を作らんと決めたんじゃ」
「何故?濱嶺殿の腕があれば・・・・」
「ほぉ〜犯罪者から、殿ときたか・・・」
「い・・いや・・・」
「藤吉郎、何萎縮してんだよこんなおっさんに」
「ほぉ〜コイツは変わらずおっさんか、確かに
ただのおっさんじゃがな」
「ただのおっさんじゃねぇ〜よ、泥棒だろうよ
藤吉郎が下手に出てるからって偉そうにしてんなよ」
「良、言い過ぎだ!」
「そんなことねぇ〜だろうよ!」
「畑を荒らしたのは事実じゃ、御主らの好きにせぃ
ただし、刀は作らんがな」
「なぁ〜おっさん?
なんでそこまで拒むんだ?金か?確かに俺らは
金なんて持ってないけどな、でも刀作んのがおっさんの仕事じゃ
ねぇ〜のか?」
「金ならある・・・・」
藤吉郎がぼそっと答えた。
「えぇ!?藤吉郎お前、金持ってんの??」
「金なんかじゃない!!」
急に大きな声で濱嶺は否定した。
「おいおい、何急にでっけ〜声出してんだよ夜中だぞ!」
「じゃあ何故?」
と藤吉郎が訪ねた。
「・・・・・・・・」
濱嶺は何も答えなかった。
「まぁ、いいや藤吉郎、刀は諦めろ!」
「そう言う訳にはいかん!!」
「お前も意外と頑固だな、じゃあ刀は後回しで、とりあえず
畑の方をなんとかしよ〜ぜ」
「それなら自分が犯人で良いと言っただろ」
「んな訳にはいかねぇ〜よ、だって俺お前かばって
犯人見つけるってタンカ切ってんだぜ
よく考えろよ、ココで一番大事なのは何なのか?」
「カタナ・・・・」
「ちがぁ〜〜〜う!!!!」
「よく聞けよ藤吉郎!おっさんもついでに聞いとけ
ここで一番大事なのは俺の信用だ!
分るか?俺の信用だ!お前らも俺が嘘つきって呼ばれたら
悲しいだろ?」
「いや・・・全然」
「そこっ!二人で声を合わせるな!」
「特にそこのじじぃ!お前が一番悪い、お前を突き出せば
すむ話なんだからな!」
「あははは、なら突き出せばよかろう」
「駄目だ良、そしたら刀が・・・・」
「わぁ〜〜ってるって、だから我慢してんだろ!」
「刀は作らんぞ」
「うっさい、じじぃ黙ってろ!」
「どっちにしろまずは犯人つくらねぇ〜とな」
「???どういう事だ?」
不思議そうにしてる藤吉郎に説明する
「だから、まとめるとこうだろ?
お前は刀が欲しい、でもおっさんを突き出すと
刀が手に入らない、んでもっておっさんを突き出さないと
俺の信用がなくなるってことだろ?
ようはじゃんけんだな、どれかを出すと必ず負ける奴がでる
だったらどうするか?
グーチョキパー意外を出すしかねぇ〜だろ?」
「あははは、お前面白い奴じゃな」
「だからじじぃは黙ってろって!
おっとその前に、おっさんを突き出すことはしねぇ〜
だから、二度と他人の畑に手だすなよ!」
「わかった、それに関しては本当にすまない事をしたと
思っている、約束する二度と同じことはしねぇ〜」
一応であるが濱嶺は反省した様子であった。
「でもよぉ〜良、犯人つくるっても無実の人を
貶めるわけにはいかねぇ〜だろ?」
「だよなぁ〜だとしたら天災か?動物か?
さすがに天災は無理があるなぁ〜・・・」
本日何度目かの沈黙タイム中に濱嶺が口を挟んできた。
「動物かぁ?そうだ猪豚なら裏の山にぎょうさんおるぞ!
あれなら畑も荒らすからな、ちょうどえ〜んじゃないか?」
「おっ!?おっさんナイスアイディアか?
ってか?猪豚って豚??猪??どっち??」