第7話:意外な犯人
「んじゃ、ワトソン君まず君の意見を聞こうか?」
「・・・・・ ・・・・・」
「藤吉郎!お前だよ、何キョロキョロしてんだよ!」
「あぁ〜そうか・・・ワトソンって自分か」
「そうだよ!さっき言ったばっかじゃんよぉ」
「すまんすまん、自分はこれと言って何もないが
ほーずむくんは??」
「!?ほーずむってなんだよ、ホームズね!ホームズ!!」
「ああ、そうかすまんすまん」
「まぁ、2つだな、藤吉郎選べ!」
「自分・・・わとそんじゃなかったっけ??」
「いいんだよ、ノリなんだからワトソンは心に締まっとけ
んでだな、1つ目は真剣に犯人探しをし、無実を証明する
2つ目はな、どうせこの村のことあんま知らないんだから
ばっくれる、さぁ選べ!」
「ばっくく・・・??」
「あぁ、そうか!知らん顔して逃げるってことね」
「逃げたくはないな、逃げたら自分がやったと思われる
ってことだろ?」
藤吉郎の目は真剣だった。
「まぁ〜〜そうなるわな」
なぜ、2つ目を出したかというと、後から考えれば何とかなるだろう
なんて簡単にタンカ切ったもののいざ考えると面倒くさくなってしまったからだ
俺、警察じゃねぇ〜し・・・なんて気持ちも無きにしも非ずだ。
無言の時間がしばらく続いた。
このまま考えてても前に進まない気がした俺は
「じゃぁ犯人見つけるって方向でいくとして
まずは被害者の話でも聞きにいきますかぁ」
と口火をきった。
多分、藤吉郎も良い案が浮かばなかったのだと思う。
「だな」
と俺の意見に賛同した。
俺達は藤次郎のおっさんに被害にあった家を教えてもらい、
その家の人たちに話を聞いて回った。
結果から言うと何にも分らなかった。
誰も目撃もいないし、足跡も残っていない。
まぁ、足跡があったからといって鑑識でもない俺が分る
訳もないんだが。
「これからどうする??」
心配そうに藤吉郎が訪ねる。
「どうするってたって何にも分らなかったしな
あれしか残ってないだろ!」
「あれって?」
「張り込みだよ!次に狙われそうな畑で一晩中見張るってやつだ
幸い、時間は死ぬほどあるしなアハハハ」
「次に狙われる所が分るのか?」
「心配すんな、ドラマで見た事あんだよ
こうやってな、この村の地図を簡単に作るだろ」
そういって俺は地面に村の見取り図らしきものを書いた。
「被害にあったのがココとココと・・・ココと・・・
これを囲む訳だ、んでこの間の場所、次に狙われるのは
ここだな!」
「お前すげぇ〜な!」
藤吉郎は羨望の眼差しで俺を見ている。
「いやぁ〜そんな大したことねぇ〜よ」
謙遜したように見せたが本当に大した事ないのであった。
プロファイリングのまねをしてみただけで本当は何も分ってない
適当に言っただけの事だったからだ。
・・・が俺は引きが強い!パチンコ行っても勝つしな!
そう思ったのも事実である。
その夜、俺らは早速張り込みに出かけた。
牛乳とアンパンがないのは少し寂しい気もしたが、そこは
我慢するしかなかった。
「なぁ、藤吉郎二人で起きててもしょうがねぇ〜し
じゃんけんで見張り役決めようぜ!」
「じゃんけん???」
「大丈夫、簡単だから教えてやんよ
この握り拳がグー、二本指がチョキな、んで手を広げてんのがパーな
ココまでで質問は??」
「おう、大丈夫、ぐーとちょきとぱーだな」
「そうそう、グーはチョキに勝つ、チョキはパーに勝つ・・・」
「と言う事はぱーはぐーに勝つってことだな?」
「おお、物わかり良いじゃん、その通りだよ
んで大事なのがかけ声な
気合いの入った勝負では最初はグーと言ってグーから出すんだよ
ちょっと練習してみっか?」
「ああ」
「よっしいくぞ、最初はグーじゃんけんポン」
「もいっちょう!最初はグーじゃんけんポン」
こうして数回練習をした。
「んじゃ、次本番な!」
「よし、こいっ!」
気合いの入った藤吉郎を裏切るかのような高速かけ声!
「じゃんけんぽん」
慌てて、出した藤吉郎はグー、当然俺はパー
「あははは、初心者はこうやって鍛えられていくんだよ!
じゃあ、お前見張りねっ、俺寝てるから何かあったら起こして」
「ぬぅ〜・・・・汚いやつ」
「汚くねぇ〜よ、藤吉郎これが戦略ってやつだ
勝負は何事も自分のペースで運ばないと負けるぜ」
「・・・・」
納得してるようではなかったものの、藤吉郎は仕方なく
見張り役をやった。
そして俺は優雅に寝に入るはずだったのだが、
時間にして僅か数十分だろうか??
直ぐ起こされる事になった。
「おいっ良!誰かきた」
寝入る前だった俺は藤吉郎の声で直ぐに起きた。
「マジで来たのかよ?俺ヒキ強!?」
「アイツ怪しいよな?」
小声で訪ねる藤吉郎に俺も小声で答えた。
「間違いねぇ〜だろ!こんな時間こんな所に!」
「よしっ、俺がぶっ飛ばしてくるから、逃げられないように
藤吉郎は裏回ってくれ」
「どうした、藤吉郎??」
「いや、すまんこんな時に言う事でもないが何だか、楽しいな」
「・・・・そういや・・・そうだな」
確かにそこにはワクワクしている自分がいるのが分った。
俺はその怪しい奴の背後から肩に手をかけ声をかけた。
「おいコラッ何やってんだ!」
振り向いたそいつはヤバいと表情をみせた
その瞬間、俺はそいつの顔面に力一杯の右を
叩き込んだ。
ゴッという鈍い音とともに、そいつは地面に転がった。
そして俺を見上げると振り返り裏手に逃げようとした
・・・がそこには藤吉郎が仁王立ちで行く手を防いでいた。
小さい体ではあるものの、そのオーラで大きく感じた。
そいつは意外にもあっさりと観念した。
腰にはござのような物を巻いて歩いた後が自然に均されるように
なっていた。
「話を聞いてくれ・・・・」
「聞かねぇ〜よ!、このこそ泥が!」
「いい年してなにやってんだ」
そう、そいつはどう見ても60歳は超えているであろうおっさんだった。
ただ、片目が義眼なんだろうか?水色のビー玉のような目をしており
それが怪しい雰囲気をかもし出していた。
そして俺が殴った後の鼻血も合わせて更に
怪しさ倍増であった。
「おい、藤吉郎お前も黙ってねぇ〜で何か言ってやれ」
「・・・・・・」
「おいどうした?」
藤吉郎はそのおっさんを見て何だか黙り込んでいた。
「おいってばよ!」
「もしかして、おっさん濱嶺か?」
おっさんが答える前に俺が口を挟んだ。
「はぁ、何言ってんだ?誰だよ濱嶺って?」
「話ただろ?刀工を探しにきたって、その刀工が濱嶺って言うんだけどよ
確か、水色の目をしているって話でな」
「マジかよぉ!」
俺らはおっさんに視線をむけると
その時そのおっさんがぼそっと呟いた。
「何故、その名をしっている?」