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戦国Trilogy  作者: 白猫
48/49

第48話:喜平次


突然の報告にそこに集まった家臣達はどよめいていたが信長は違い

キョトンとした顔をしていた。


「一刻の猶予もございませんな」丹羽長秀が言う。

・・・が信長はそんな一大事にも関わらず丹羽長秀の言葉には耳をかさず

俺を指差した、いや正確には俺の隣であった。


「そやつは誰じゃ?」


俺は信長が指差す方向、俺の隣に顔を向けた。

「あっ!?忘れてた!」


隣の男は「へへへへ」と罰が悪そうに愛想笑いをしていた。


「だから誰なのじゃ?」信長は不思議そうに訪ねる。


「わ、わたくしはき、き、喜平次と、も、申します」

俺が紹介する前に喜平次は自ら話した。



この喜平次という男、俺が清洲に向かう道中で知り合った男だった。

竹林を抜ける手前一人の男がうずくまって何やら探している光景に

俺は出くわした。


俺は怪しい動きの男が気になり馬を止め訪ねた。

「何か探しもんか?」


「い、いや・・こ小銭をお、お、落としましてね」


おどおどした話かた、決してオーラの感じられない雰囲気

本当であれば構っている暇などないのだが、何となく気になったことと

良い行いは自分に返ってくるんでは?なんて験担ぎのつもりで一緒に

探してやることにした。


が、探しものは意外にも簡単に見つかった。

「おい、コレか?」


「お、は、はい、そでれ、いえ、それで、ご、ございます」


「でもこれって?」

俺が見つけた小銭は紐に通された数十枚が連なるものだった。


「まさか、お前?平次、銭形平次か?」


「い、いや・・・き、き平次です」


「やっぱり平次じゃん、すげぇ!!

 俺こっちの世界にきて初めて有名人にあったわ!

 そりゃ、コレなかったら困るわな、すげぇー」


「だ、だれかと、間違ってい、いませんかか?

 わ、わたしはただの、た竹細工の、しょ職人ですが・・・」


「いや間違いねぇ~ってそんな金の持ち方して平次って名前そんなに

 いねぇ~だろ!」


「平次ではなくて、き、き平次なんで、すけ、けど」


「いいよ、どっちでも、お前今は気づいてないかも知れんけど

 これからバンバン悪いヤツ捕まえるすげーヤツになるんだって」

興奮のあまり俺はまくしたてるようにしゃべっていた。


「な、なんでそんな、ここと、わ分るんですか?」

不思議そうな顔の喜平次が訪ねる。


「面倒くせーから説明はしねーけど分るんだって」


「は、はぁそうですか」


「お前、コレからなんか用あるんかよ?」


「い、いや、べ、べつに」


「おっし、丁度いいやついて来いよ」

何が丁度いいのかは不明なんだがせっかく出会った有名人をこのまま

みすみす逃すのが惜しいと思い俺は信長の所に連れてきていたのだった。



「で喜平次とやらは何者じゃ?良三とはどういう関係じゃ?」

信長は険し顔で訪ねてきた。


尋ねられた喜平次を無視し俺は自信満々で答えてやった。


「信長、お前は知らねーだろうがな、コイツは後にすげー

 有名になるヤツなんだってよ、テレビにも出るくらいにな」


「てれび?それはなんじゃ?」


「あっそうか、テレビは分らんよな、まぁ何にせよ凄ぇ~ヤツになるんだって」


「ふ~ん、そうは見えないが・・・」



「殿、そんなことは今どうでも良いことではござらぬか?

 それよりも急がないと!!」

柴田勝家が苛立ちを隠せず話に割って入ってきた。


「分っておる、なぁ良三よこれから祭りがあるんじゃが一緒に楽しまんか?」


「ふ~ん、祭りねぇ~」


「楽しいぃぞ」信長はそういってニヤリとした。


「じゃあ、いっちゃおうかなぁ~」

長いことこの時代に居座っていたためか俺の感覚もかなりずれていたことに

俺自身気づいていなかった。

数度の戦場を経験し生きてる実感を得られる快感を無意識のうちに欲して

いたのかもしれない、喧嘩に行く前のあの昂揚感、それ以上のものが

そこにはあったのだ。


「それでこそ良三、皆の者も待たせたな支度済ませ次第出陣じゃ!」


「おいおい、信長よ全員で行くのか?」

高まった士気に水を差すように俺は言った。


「当たり前じゃ、今川の数を知らんのか?」


「そりゃ正確な数はしらねぇけど凄ぇ~多いってことは知ってるわ」


「だったら全員で行くしかなかろう!」

信長はそうきっぱりと言い切ったが俺は即座に反対した。


「いやいや、違うだろう圧倒的数で負けてるんだろ、だったら機動力で

 勝負しねぇ~と勝ち目ねーじゃん!喧嘩でもそうだろ?

 機動力プラス細い道とかでさ敵の戦力を削るとかさ、常識じゃん!」


小馬鹿にしたような俺の発言に信長は一瞬ムッとしたもののすぐに気を取り直し

「では、どうする?」と訪ねてきた。


「まずは隊を分けようぜ、各隊に頭を置いてよ、数百づつは各城に残してよ

 ってか地図とかないの?」


俺の言葉に信長は即時対応した。

「おい、誰か地図を持てぇ!」


信長の声に家臣の一人が地図を出してくれたのだが

案の定、さっぱりと分らない内容いや見てくれだった。


「おいおい、ゼンリンはないのかよぉ~まぁいいや」


「ぜんりん?」


「俺がこれ見てもわかんねぇ~から説明してくれよ

 俺らが今いる所はどこだよ?」


俺は信長と家臣の説明を聞きながらおおよその場所を把握し

人員を振り分けた。

そして振り分けた先には人数以上の旗や鳴り物を用意させる指示をだした。

勿論この清州城においても同様のことをを行い、2,500弱の兵で出陣する

ことにした。


この時の俺はちょっとした軍師にでもなったつもりで若干浮かれていたが

残されることを命じられた家臣達は声を荒げ反対するものが殆どであった。

当然、俺にも残されたものの気持ちは分らないでもない戦場に出て

武功を上げたい気持ちもわかるがここで今川に負けることだけは

絶対避けなければいけない思いの方が強かった、何せ相手は偽物なのだから。

その思いと浮かれた気分が相まって俺は残される人間の気持ちを

軽視していたのかもしれない。

更によそ者である俺が簡単に指示を出してしまった事で残された者達の

気持ちを余計に逆なでしてしまったのだ。


しばらくは騒然とした雰囲気になってはいたものの

最後は信長の言葉に従わざるを得ないそんな感じで残された家臣達は

しぶしぶ納得した。


俺は人をまとめる難しさを痛感させられた。

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