第27話:此処で会ったが百年目
俺は慣れない道で慣れない馬を一生懸命走らせていた。
本音をいうとやはり俺一人が駆けつけた所で何かの役に立つとは
思っていない・・・
道三を助けるためとは言ったものの本当は俺に助けを
求めなかった事に対する苛立ちだったのかもしれない。
流石に、歩くのよりは早いと言えど新幹線や車を
知っている俺にとってはかなりもどかしく感じた。
それに天翔と言えど走り続けている訳にはいかない。
時折、休憩をはさみ大桑城うぃ目指していた。
何回目の休憩だっただろうか・・・・???
一人の男が目に入って来た。
「んん・・・・アイツ??」
「どうかなされたか??」
「あのさぁ〜柴田さんよぉ〜しつこくて恨みを忘れない
男ってどう思う?」
「何を唐突に??何かありましたか?」
「やっぱ、あんまよくはないよねぇ?」
「いや、そんなことはござらんよ
男は多少しつこい位が丁度いいのでは??
それに、恨みは忘れてはならないと某は思いまする」
「だよねぇ〜・・・」
俺は目に入ってきた男を目指して猛ダッシュしていた。
そしてその男の背中をおもいっきり蹴飛ばした。
座っていたその男は
「ウグッ・・・」
と小さな声を出したと同時に前のめりに転がっていた。
いきなり背中を蹴られたもんだから慌てるなと言うほうが
無理があるだろう、その男はかなり慌て、回りをキョロキョロしながら
「何ヤツじゃ!」
と叫んでいた。
そしてその叫んだ男は前に藤吉郎と美濃に行く途中、
俺をフクロにしたうちの一人であった。
「そっちじゃねぇ〜よ、こっちだよ!おっさん!」
「御主は誰じゃ?いきなり人を蹴るとは無礼な!」
「はぁ??忘れてんじゃねぇ〜よ!
俺は忘れてねぇ〜ぞ、その髭面を!!
よってたかって俺をフクロにしやがって」
「ワシを誰だと思っておる!!」
「もういいよ、そう言う台詞・・・この時代にきて
聞き飽きたよ!どいつもこいつも
いいからかかって来いよヒゲ野郎!!」
「ちょ・・・・良三殿・・・いきなり何をして
おられるか」
「いいから、いいから柴田さんそっちで休んでなよ」
「柴田じゃと・・・」
そういうとヒゲ男は柴田角内の方をみる・・・・・
「よそ見してんじゃねぇ〜よ!」
俺はまだ起き上がっていないヒゲ男の顔面をねらい右ローを入れた。
・・・・が
あっさり、左腕にガードされてしまった。
このヒゲかなりやるかも・・・・
かなり力入れて蹴ったはずなんだが・・・ピクリともしていない。
「ワシになんの恨みがあるのか知らんが痛い目を
みることになるぞ」
そういい、そのヒゲ男は立ち上がり刀を外し
俺の目の間に仁王立ちしている。
この前は気づかなかったが意外と良い体格してやがる。
おまけに刀を使わないとは・・・
俺の顔からはいつのまにか笑みがこぼれていた。
「そっちこそ後悔すんなよぉ〜!」
俺は右ハイを繰り出したが、これもバックステップにて
かわされた。
間、髪を容れず左の牽制をいれ右をヤツの顔面めがけて叩き込んだ
つもりが、その瞬間、膝が崩れた。
見事に、ヒゲ男のカウンターを貰っていたのだ。
コイツ、つえぇ〜
そう思いながら笑っている膝を無理矢理押さえ込んだ。
逆に、ヒゲ男の右が飛んでくる。
頭を下げ何とか躱す。
頭の上でブンという音とともに風が巻き起こるのを感じるくらいの
強いパンチだった。
・・が大振りだったこともあり、そのまま体制を崩しかけた。
ヒゲ男の左顎を今度は俺の左が捕らえた。
「いやぁ〜おっさんヒゲのくせに強ぇ〜じゃん!!」
「御主も若いのに中々やるのぉ〜」
「まだまだだよっ!」
そこからはよく覚えていないが・・・殴り、殴られ繰り返しで
中々、勝負がつかなかった。
早く倒れやがれってんだ・・・そう思ったその時であった。
蹄の音とともに
「勝家!!やめんかぁ〜〜!!」
二人とも同時にその声の方に顔を向ける。
「殿・・・・」
「あっ!?お前ぇ!」
馬に乗ってやってきた殿と呼ばれるこの男・・・・
学ランを欲しがった挙げ句、俺にぶっ飛ばされたヤツだった。




