第21話:道三の告白
道三の話はこうだ
自分の命を狙っているものがいると・・・
なんとそれが息子である義龍という男であること。
それも確実ではなく可能性が高いという段階らしいが
息子を疑いたくないという気持ちと
もし本当の話ならば・・・という気持ちが
葛藤しているらしい。
それで未来を知る俺に興味を抱いたとのことだった。
未来においても親が子供を殺す、子供が親を殺す。
そんな悲しい事件があるにはあるが・・・そんなに頻繁に
起きてる訳ではない。
それがこの時代においては当たり前のようにある話との
ことだった。
それはとても悲しい話である。
確かに未来を確かめたくはなるだろう。
「ワシはな、この美濃をとるためにかなりの無茶をやってきた
色々な人間に恨まれてもいるだろう・・・・
そんな奴らに命を狙われるなら、それは仕方ない事だと思うが・・・」
そこで言葉を詰まらせた。
「そりゃ、そうだよな・・・キツイなぁ・・・」
かける言葉が中々みつからない。
「わりぃな・・・力になれなくて・・・でも本当に知らないんだ」
「そうか・・・」
「義龍ってさっき俺らを連れてきたヤツだろ?
なんなら俺が確かめてやろうか?」
「いや・・・それはやめてくれ、もしこの話が本当の事だとしたら
策略が表に出たと考えるだろう下手すると関係ない人間まで
巻き込んでしまう恐れもあるじゃろう」
「おっさん・・・意外といいヤツなんだな」
「ワシがか?はははは、そんな事言われたのは初めてじゃ」
その笑い声もどことなく元気がなかった。
そして道三は
「御主、もう帰ってもよいぞ、無理矢理連れてきてしまって
悪かったのぉ」
そう言った。
「あのさぁ・・・未来の事は分らないけど・・・
俺に協力出来ることあったら手伝うぜ!!」
俺は未来人として未来の知識を活かし歴史に名を残す予定だった。
なので未来から来たことを隠すこともしないし歴史を変えてしまうかも??
なんて事も考えた事がない、そもそも歴史を変えてやろうって構えでいた。
しかし真面目に勉強してこなかったせいで時代を変える
どころか決まっている時代に飲み込まれているだけなのかもしれない
そういう思いが頭をよぎり、こんな台詞を吐いたのかも知れない。
「御主がワシの力にか・・・?
それではそういう時がきたら力を借りようかのぉ」
「おうよ、いつでも声かけてくれ!」
「おっ!?そうだ・・・・」
俺は内ポケットにしまっていたタバコの箱を開けた。
ラスト2本の撚れたラークマイルドが入っていた。
1本を自分で咥え1本を道三に咥えさせた。
「なんじゃコレは・・・・??」
「あっそうか・・・別に怪しい物じゃないから
心配すんなよ未来のタバコだよ」
キンッ
ジッポの開く音が響く・・・
シュボッ・・・オイルの匂いがする。
大きく息を吸い込み吐き出す。
「はぁ〜ついにラスイチかっ・・・」
俺の唯一未来の嗜好品だった、タバコもコレで最後と思うと
一段と美味く感じた。
「コレは美味いのぉ〜」
「だろ?それ最後の1本だからよぉ〜
よく味わってくれよ!」
「そうか、それは貴重な物をかたじけないのぉ
それよりそっちの四角い火のでるものはなんじゃ?」
「そっか、この時代にライターは無いんだもんな」
「らいたーというのか?」
「そうそう、火を着ける道具の事をライターと言ってな
そのなかでこういうのをジッポって言うんだよ」
俺はジッポを道三に投げ渡した。
「それやるよ!もうタバコもないし必要ないからな」
「くれるのか??」
「いいよ、でもオイル切れたら火着かなくなるぜ」
「おいる??」
俺は再度ジッポを受け取り中身を取り出し説明した。
道三は初めてのジッポを凄く気に入ったようであった。
「良三と言ったな、本当は何の目的でこっちに来たのじゃ?」
今なら本当の事を話しても問題ないだろう、それに同じ斎藤
何かつながりがあるかもという思いもあり逆に聞いてみた。
「あのさ、斎藤利三って知ってる?」
「利三じゃと??」
「そうそう、利三」
「御主が探している利三かどうかは分らんがうちにおる
稲葉良通に仕えてる男が利三という男じゃが・・・」
「えっ!?まじかよ??」
「それなら明日にでも呼んでやるから一度話してみるといい
しかし、利三に何用じゃ?」
まぁそりゃ気になるわないきなり怪しいヤツが現れて
自分の所の者に用があるとなれば・・・
しかし、さすがに依頼として受けたのに全部話す訳にもいかないだろう。
俺は肝心な部分ははぐらかしてそれとなく伝えた。
道三は納得したかどうかは分らないが、俺を信用しているのか
興味がなかったのかそれ以上の事は聞こうとしなかった。
「御主が探している利三が同一人物ならついでにここで
ゆっくりしていくといい御主らは本日より客人じゃ」
俺らは、囚われの身から一気に客人という完全な出世を果たした。
そして出世した俺らはかなり広めの部屋を充てがわれた。
そして道三との話を藤吉郎に話した。
「まさか、ココに仕えているとはな・・・」
「なんだよ?藤吉郎知ってたの?」
「いや・・・元々斎藤家ってのがここら辺を収めていた
はずなんだが、それをあの道三が奪ったんよ」
「えっ!?何?じゃあ敵についたってこと??」
「まぁ、その辺の事はようわからんがな・・・
でもここに仕えてるって事はこの仕事も無事終えれそうじゃな」
「だな・・・」
「それより、よくマムシと呼ばれた道三に気に入られたな」
「ばぁっか〜俺を誰だと思ってるんだよ、人徳だよ人徳!」
「まぁ、そういうことにしておくよ」
何せよ、俺らは本日はゆっくり寝れることが約束されたわけで
美味い飯が用意された満腹になった後は二人とも
落ちるように眠りについていた。




