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戦国Trilogy  作者: 白猫
17/49

第17話:妖刀と決意


俺は左に身を躱し相手の刃を間一髪よけた。


ガスッ!


その相手の刀は大杉に食い込んだ。


「良、躊躇うな、きれ!!」

藤吉郎の言葉が耳に入ったかどうかは

分らなかったが、瞬間、俺は刀を抜き振り下ろしていた。


「うぐっ・・・」


いや、正確にいうと振り下ろされたと言うべきか

まさに意思をもったように動いた。


目の前の男はまるで糸が切れた操り人形のように

崩れ落ちた。



濱嶺の家を後にした翌日

俺達は早速、斎藤に会うため美濃に向かった。


初仕事だったことに加え、どこかに出かけるという

何でもないことが意外と楽しく感じ俺は少し浮かれていた。


その浮かれた気分が吹き飛ばされるまでものの数時間と

かからなかった。


それは山超えの途中、中腹あたりでのことだった。


ガサガサ、ガサガサ・・・と物音がしたと思った瞬間

5人の男達に囲まれていた。


全員が刀を抜き既に臨戦態勢だった。


「全て置いてけ!」

そう言ったのは更に後ろにいたもう一人の男だった。

普通に考えれば、コイツが頭だと言う事は一目瞭然だった。


「おいおい、何なんだよお前ら」

そう言いながらも何処か現実とかけ離れた景色が

油断を招いていたのかもしれない。


「山賊だ・・・」


「えっ!?山賊???そんなもん本当にいんのかよ?

 俺は、山賊王になるってか??」


「バカ油断するなっ」


その時、ガキッンと鈍い金属音がし鉄パイプが地面に落ちた。

運がよかったのか、相手の刃があたったのは鉄パイプ

もし・・・・コイツがなければ・・・

一瞬にして俺の浮ついた気持ちが飛んでいったのがわかった。


俺は急いで落ちた鉄パイプを拾おうとした瞬間

今度は目の前に刃先が見えた。

無意識に仰け反り間一髪躱すことができた。


「何度も言わせるなよ!

 置いていかないなら殺してとるだけだからな」

頭らしき男は笑いながらそう言った。


「藤吉郎・・・」

藤吉郎に目線をやると既に刀を抜き構えている。


「良、抜け!殺らなければ、殺られるだけだ」

そんな緊張した言葉とは裏腹に藤吉郎は笑っている。

濱嶺の刀を受け取ったときに見せたあの表情と同じだった。


もといた世界でも絡まれる事はよくあった。

喧嘩もしょっちゅうしていた。

だが、そんなものとはまるっきり違った。

が今はそんな事を考えてる余裕もなかったもの事実だった。


遣り切れない気持ちのまま、仕方なく俺も刀を抜いた。


「何だこの感触は・・・・?」


真剣だからなのか、この手に吸い付く感じ

そして刀全体から真っ赤なオーラを発している。

このまま刀を握っていると吸い込まれていきそうな感覚に陥る。


ガキッ・・ブシャ

「うっ・・・・」

ドサッ・・・・ドサッ・・・・


藤吉郎の目の前に二人が転がっていた。


アイツ・・・殺ったのか・・・??


そうだ、峰打ちであれば殺さずにすむそう思い

俺は柄を回転させた瞬間、俺の目の前にいた男が

刀を振り下ろしてきた。


ガキン

とっさにガードすると

相手の刀がいとも簡単に折れた。

俺の刀の方はなんともなっていないどころか

赤いオーラは更に輝きをましていってるようにも見えた。


俺はその男の肩めがけて峰を叩き付けた。


「うぐっ・・・」

うずくまった相手の顔面を思いっきり蹴り上げた。


更に振り向きざまにもう一人の男の横っ腹に

峰を叩き込む。


「大丈夫か藤吉郎?」

藤吉郎を見ると残りの一人も転がっていた。

その転がった男達を見下げ笑みを浮かべている姿が目に入った。


一気に形勢は逆転した。


残る男は後ろにいた一人となった。

何だかソワソワしている。


「逃げるかな?」

「逃げるわな?」


「やっぱ逃げたぁ〜!」


残りの男は一目散に逃げ出した。


「はぁ〜・・・疲れたぁ〜・・・」

その場にへたれ込もうとした時だった。


「良、後ろっ!!!」


横っ腹に峰打ちをかましたヤツが意識を戻し

俺に一振りを浴びせようとしていた所だった。


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・


俺は倒れ込んだ男を見下ろし、しばらく呆然としていた。

それは、初めて人を殺してしまった事への罪悪感なのか

恐怖なのか分らなかったが・・・・



「良、良!!」

その声で俺は我に返った。


「あ、あぁ・・・悪りぃ・・大丈夫だ」


「良、人を切るのは初めてか?」


「当たり前だろ?殴ったヤツは数知れないけどな

 俺のもといた世界では斬り合いなんてのは

 テレビや映画の世界だけだぞ!」


「そうか・・・未来には刀はないって言ってたな」


「それより、俺の鉄パイは???あったあった

 なぁ、藤吉郎、俺の刀・・・なんだか

 怪しい光出して勝ってに動いた気がしたんだけど・・・」


「濱嶺の作る刀は妖刀だからな」


「妖刀??」


「まぁ、簡単にいうと意思を持った刀ってとこかな

 じゃなきゃ、歴史に名を残す人間になれないだろアハハ

 まぁ、作った本人は知らないんだろうけどな」


「アハハじゃねーよ、簡単に言ってけどそれってヤバいんじゃね?」


「さぁな、でも覚悟はいるのかもな」


「覚悟かぁ〜・・・・」


「決めたっ!刀は使わねぇ〜!

 人を殺さない覚悟を持つぜ、コイツでな!」


「コイツでなって、さっきそのてつぱいぷっての

 落として使い物になってなかったじゃん!!」


「いいんだよ、今日は練習だよ!」


「でもな、良・・・・

 もし今日と同じ状況になった時は迷わず殺れよ

 でないと本当に殺られるぞ・・・今はそういう時代なんだ」


「そういう時代かぁ〜・・・」

同じ日本人同士が、当たり前のように殺し合う時代って

でも、現実なんだよな、これが・・・


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