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戦国Trilogy  作者: 白猫
16/49

第16話:濱嶺の刀


濱嶺の刀ができるまでの間

藤吉郎は情報収集、俺は万屋の宣伝に勤しんだ。


俺も情報を集めたかったが、俺が行くと

なんだかややこしいことになると藤吉郎に止められた。


おれは泣く泣く手書きで万屋のチラシを作って

宣伝をしていた。


まぁこれはこれで楽しかったんだが

そんな事をしながらの約2週間

情報収集から藤吉郎が帰ってきた。


一生懸命説明していたが俺はよくわからなかったので

取りあえず分ったふりだけしておいた。


「昔の人間ってなんだか細けぇなぁ」


現代の社会の高校生ってのは非常に楽なポジションと

いうことも改めてわかった。


俺がいつか元の世界に戻れることがあったら

透たちにも説教してやろ うと新たな野心が湧いた。

がもちろん戻る方法なんてものは分らない

分らないことは考えても仕方がないので考えないことには

していた。


二人揃った俺らは久しぶりに濱嶺の家を訪ねた。


「いよぉ~久しぶりぃ!出来てる??」

俺の声に気付き中から濱嶺が出てきたが・・・



その姿はまるで何十年もたった姿だった。

もともと若くはないが、今の濱嶺は腰は曲がり

髪はすべて白髪、しわも明らかに増えている。

これではまるで爺ちゃんではないか?


「どうしたんだ!?」

驚いた俺らはあわてて尋ねる。


「ああ、お主らには言うとらんかったなぁ

 濱嶺家が作る刀は一子相伝という話はしたな?」


「ああ、あのうさんくせぇ~話ね」


「その理 由がこれじゃ」

そういい自分の姿を指す。


「濱嶺家の作る刀は自分の魂を込めて作る刀

 刀によって込められる魂の量は違うが

 良い刀程たくさんの魂が必要となるんじゃ

 だから一生かけて作られる本数もたかがしれとる数じゃ」


「えっ!?魂とかって入れたり出したり出来るもんなん?」

そんな話は生まれてこのかた聞いたことがない俺には

にわかには信じられない。


・・・・・が目の前の濱嶺の姿を見ていれば信じない訳にも

いかないのも現実だった。


「まぁ、その点でいえはワシ等一族の刀は特別なもんじゃな

 だから、自分の魂がなくなる前に子供に伝えるんじゃ

 しかし、ワシには嫁も子供もおらん、少々無理をして

 しまったかもな、アハ ハハ」


「いやいや、それって笑いごとじゃないんじゃね~かよ」


「なにを言う未来に残る最高の飾物を作ると約束したじゃろ!

 まぁ、ワシのことはえ~から、こっちに来い」

俺らは濱嶺に着いて行った。


そこには素人の俺が見てもわかるくらいのオーラが漂う

刀が2本あった。

「ほれっ」

そう言いそのうちの1本を藤吉郎に手渡した。


「これが今ワシにできる最高の刀<桐龍>じゃ」

藤吉郎はそれを手にし20cm位鞘から抜き出しニヤっとした。


いつもの藤吉郎の雰囲気じゃないことに若干の違和感はあったが

気のせいだろうと思うことにした。


「そしてこっちが<覇月>じゃ、この覇月はお前のじゃ」

もう1本の刀を俺に渡そうとし たが・・・


「いやいや俺金も払ってないし、そんなのもらえねぇ~よ」

慌てて断ったが


「まぁ、そういうと思っておったけどな

 ワシが作りたくて勝手に作ったもんじゃ

 用がなければその辺に捨ててもらっても構わんよ」


「捨てるって・・・・そんなことはねぇ~と

 思うけど・・・」


「せっかくこう言ってるんだからもらっとけよ」

藤吉郎はそういいながらも俺のことは眼中に無く

自分の刀をまじまじと見ていた。


「そういう訳じゃほれっ」

俺はしぶしぶ濱嶺の刀を受け取った。


「多分お主はこの刀をいつか手放すであろう。

 いくら未来の刀は飾といえど、今の刀は立派な武器じゃ

 人を殺すための道具ともいえよう、だからお前 は誰かに

 この刀をくれてやるときが遠い未来か近い未来かは

 わからんがきっと来るはずじゃ」


「来るはずじゃって、そんなこと分んのかよ」


「いや、分らんよ、ただの感じゃ」


「なんだよぉ~感かよぉ~!」


あっけらかんと答えた濱嶺は笑っていた。


「そうそう忘れる所じゃった、お主に刀を渡すと

 嫌がられると思ってなお主の気に入りそうなもの

 もついでに作ってやったぞ」


「えっ!?なになに??」


「ほれ」


濱嶺は俺に短い刀らしきものを投げてよこした。


「さっきの刀とずいぶん扱い違うなぁ~

 ってこれも刀じゃん、短いけど・・・」


濱嶺が投げてよこしたものは若干太くて丸いが

どう見ても短い刀であった 。


「何をいうておる、抜いてみぃ」

俺はその短刀らしきものを鞘らしきものから引き抜いた。

出てきたのは刀風の円筒の棒のようなもの・・・まさに


「これって鉄パイプじゃん!」


「てつぱいぷ??まぁ、なんとでも呼んでもらって

 いいがな、特殊な加工もしてあり頑丈にしてある

 強度だけなら刀にも負けんぞ、切ることは出来んがな」


「いいじゃん、いいじゃんこれの方がずっと

 しっくりくるわ! 

 まわりのヤツは刀持ってる奴ばっかりだし

 丁度、欲しいと思ってたんよ、おまけにケースまで

 ついてるし!

 これにはさっき見たいに桐龍や覇月みたいな名前は

 ついてないん??」


「名前かぁ~・・・・煙突でどうじゃ ?」


「焔砥津かぁ~いいじゃん」


嬉しそうに鉄パイプをぶんぶん振り回してる俺をみて

藤吉郎は不思議そうな顔をしていた。

いつもの藤吉郎の顔だった。

「やっぱり変わってるな良は」


「いやいや、これがいいんだって

 なぁ、濱嶺?」


「そうじゃな、やはりお主には刀よりそっちの

 方が似合ってるな」


「だろ!」


「よしっこれで斎藤探しにいけるな?」


「だな」

藤吉郎が答える。


「誰じゃ斎藤ってのは??」


「俺らの初仕事だよ」


「ほぉう、無理せんよーに頑張れよ」


「いやいや、濱嶺はそれより休めよ」


「すまないな、自分らの為に・・・」

藤吉郎が後を追いかけるように声をかけた。


「 気にするな、自分でやりたいと思ったことをやったまでじゃ」

刀を貰った俺らは濱嶺の家を後にした。

家を出るとき俺は濱嶺に呼び止められた。


「お主はこの時代の人間じゃないからかもしれんが

 そうでなくとも、何かを持っている感じがする

 これからの世は乱れるであろう、が決して流されるなよ

 自分の信じた道を進めよ!きっとそれが正解じゃ」


「なぁ~に言ってんだよ、俺が流される訳ねぇ~じゃん!」

元の世界では流されっぱなしなのはひとまず置いておこう

と思った。


「ならよい、達者でな・・・・」


この言葉が濱嶺の最後の言葉になるとはこのときは

まったく気付かなかった。


後日、濱嶺の家を訪ねたときには

家の中はすっかり片 づけられていた、というより

初めから人が暮らしていたという気配が少しも感じられなかった。


気になり町の人間に訪ねもしてみたが、

濱嶺の存在すら誰も知らなかった。


それは初めからそこにいなかったようにも思えるものだったが

俺は無理やりそれを否定した。


きっと今は元気になってどこかで刀や鉄パイプを作っているのだろう。

そう思うことにした。


「だってアイツが作った鉄パイプココにあんじゃん」


俺は濱嶺が作った鉄パイプを強く握りしめていた。

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