第11話:未来に刀はない
誰も何も言わないまま
どれくらいの時間がたったろうか
「濱嶺のおっさんよ、俺って未来からきた
人間なんだよ」
「・・・??」
「いや何、うさんくせぇ~って顔してんの?
これマジ話だっての!」
「まぁ、確かに言われてみれば恰好も
変わっとるし、訳の分らない言葉も使うし・・・」
「だろ??」
「ん~それが本当だとして何かあるのかね?」
「意外と驚かないんだな?それはそれで
少しへこむけどな、まぁいいや」
「お前見てて今更驚くこともなかろう」
「言えてる・・・・」と藤吉郎も口をはさむ
「いや、だからお前らが知らないこの先の
ことを俺は知ってるわけだ
そこで、濱嶺のおっさんよ、良いことを教えて
やるよ」
「だから何かあるのか?」
「実はな、今からずっと先の未来には刀って無いんだぜ!」
「本当か!?」
驚く濱嶺と藤吉郎
「完全に無くなったって訳じゃねえ~けどな
武器としては一切使ってねぇ~よ
あるのは観賞用が殆ど、後はマニアっても
わかんねぇ~だろうけど・・・・
人を切る道具としては使われてないってことだ」
「やはりワシがやってきたことは意味のないこと
だったんじゃろうか・・・」
この言葉に俺は切れたのか憤りを感じたのか
よくわからないが何かこみ上げるものがあり
大声をあげていた。
「いやいや、違うだ ろうよ!」
「お前がここで刀作らなかったら
逆に未来が変わるだろうよ
そうなってみろ、未来においても刀は人殺しの
道具として使用されてるかも知れねぇ~んだぞ
お前がやるべきことは最高の刀を作ることじゃね~のかよ
何が一子相伝だよ!
北斗神拳みたいなこと言いやがってたくせに
全然中途半端じゃねぇ~かよ!」
「・・・・・・・・・」
「最高の刀を作る、その後のことを考えるなとは
言わんが、まずは最高の仕事をすることだろ
それすら出来てねぇ~ヤツが偉そうに次のこと
考えてんじゃねぇ~よ!!
俺が来た町を刀だらけにするつもりか!!」
多分そんなことにはなるはずもないが勢いで
怒鳴りあげてい た。
「そいれはいかんのぉ~」
そう言った濱嶺は少し笑っていた。
「俺は怒ってるのに何ニヤケてるんだよぉ!」
「濱嶺がおかしくなった!?」
あわてる藤吉郎
「心配せんでもおかしくなっとりゃせんよ
そうか、そうか・・・・
最高の刀が観賞用か・・・・アハハハ」
「そうだよ、それもなこんなケースに入ってたり
床の間みたいな所に飾られたりしてんぞ
それのどこがおかしいんだよ!」
「すまんすまん、それなら未来にもワシの名が
残るように最高の刀を作らないとな」
「えっ!?今なんっつった??」
「いや、だから最高の刀を作らないとな・・・と」
「えぇ~作る気になったのかよ?」
「ワシが刀を作らないと未来人が困るんじゃろ?」
茶化すように濱嶺が答える。
「あ・・・あぁ・・・困る」
「お前の言葉でふっきれたわ、ワシは最高の人殺しの
道具を作るんじゃなくて、最高の見世物の刀を作る」
「いいんじゃね!最高ってのが最高だ!
よかったなぁ、藤吉郎」
藤吉郎の肩をパンパンッと叩いた。
その藤吉郎が心配そうに尋ねる。
「見世物の刀って切れるのか??」
「なぁ~に心配そうな面してるんじゃ
最高の刀が切れない訳なかろう!!」
「ほっ」
「あっ、そうだ未来には切れない刀ってのもあったぞ
模造刀ってな、これはハナから飾専用だ」
「ほぉ~切れない刀かぁ~なか なか面白いのぉ」
「良、余計な事を言うでない!
切れない刀は刀ではなかろう!!」
「確かになっ!言えてるハハハ」
「まぁ、ワシの刀をどう使うかはお主次第じゃが
当然切れ味も最高の物になるはずじゃ
そして、お代も当然もらうぞ」
「いいじゃん、いいじゃんやっぱ
プロは金もらってなんぼでしょ!」
「また、分らんことを言って
もちろんお代は払うに決まってる」
そう言い藤吉郎は懐から袋を出しすべてを濱嶺に渡した。
「おっ!藤吉郎太っ腹だねぇ~!」
「ただ・・・すまんが・・・」
「おいおい、おっさんまだ何かあんのかよ?
ここにきてやっぱ止めたとかはナシだぜ」
「 いや、そうじゃないんじゃがワシも刀をうつのは
久しぶり、その中で最高のものを作るとなると
どうしても時間がかかってしまう・・・」
「なぁ~んだよそんなことかよ、俺らは暇人なんだから
いつまででも待つって、なぁ藤吉郎?」
「あ・・・あぁ・・・
それでどれくらいの時間かかるんだ」
「まぁ、7日~10日くらいはかかるじゃろ」
「よかった、そんなものか・・・」
「いったいいつまでかかると思ったんじゃ
久しぶりじゃが、感さえ取り戻してしまえば
その先は慣れたもんじゃ」
そう言って濱嶺は笑った。
「んじゃ俺ら行くからさ時々様子見に来るわ!」
「次来るときは土産物でも頼むぞ」
濱嶺は清々しい顔をしていた。
その表情は見た目の年より若く見えた。




