第1話:プロローグ
昨日から学び、今日を生き、明日へ期待しよう
Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow.
~アルベルト・アインシュタイン~
2014年9月1日
ピンポーン・・・・ピンポーン・・・・・ピンポーン・・・・
ピンポーン・・・・・
しつこく鳴り響くインターホン
「チッ、うるせぇ~な、誰だよこんな時間に・・・・」
眠たい目をこすりながら、窓をあけ外を覗くとそこには
インターホンを親の敵でもとるかのように連射している
透の姿があった。
(あの、バカ・・・高○名人かっ)
「うるせぇぞぉ、そこの不良少年!」
俺は窓から顔を出し声をかけた。
「なんだよぉ~やっぱいるんじぇねぇかよぉ~」
「そりゃ自分家だからいるに決まってんだろ、まぁ上がれよ
鍵は開いてるからよ」
「お・・・おぅ・・・・・」
そう答えたかと思うと慌てて扉を開け
トントントンと階段を駆け上がってきた
ガチャ・・・部屋のドアが開く
俺が声を発する前に慌てた様子で透がしゃべりだす。
「お前が行方不明になってるって噂があってな・・・・
何回も来たんだけどよ、全然いねぇし、マジで行方不明になったかと思ったわ」
「フッ・・・なんだそりゃ」
俺は鼻で笑ったが、実は心当たりはあるのだ。
・・・・が、何から話して良いのかという思いと、ただ単に面倒くさいという思いがあって
「中学の時のツレん所に遊びに行ってたんだわ」
と適当に答えていた。
正直、親が旅行もかね親戚の家にでかけていなければ本当に行方不明とされていた
かもしれなかった。
「そうか・・・・っでもよぉ、だったら電話くらい出ろよ
ずっと電波届かないって言われ続けた俺の身にもなれっての」
安心したのか透の口調はいつも通りになっていた。
「悪りぃ、悪りぃ」
悪びれた様子もなく答える。
「んでどうしたん?こんな朝早くからなんか用?」
「はぁ???何言ってんだよ、今日から学校じゃねぇ~かよ」
「もしも~し、脳みそさん~起きてますかぁ~」
そう言いながら透が俺の頭を小突く
「知ってるわ、にしても早くないか?」
不良少年と呼ばれる俺らは勉強は嫌いだが、何故か学校は好きな奴が多い
しかし、だいたい出勤・・・いや登校は朝ゆっくりと寝て昼からと
いうパターンのはずなんだが
「ばぁか、今日は始業式だけだから、昼から行ってたら学校終わってんだろ?
それにお前、はるなちゃんのお土産はいいのかよ!」
透がまくしたてる。
(そっか、今日は9月1日か・・・・
・・・・・だったからなぁ~日にちの感覚がなくなっていたわ)
なんてことを考え壮絶な夏休みを思い出した。
2014年7月某日
お天道様も真上に登った頃
「飯も食ったし、そろそろ出勤するかぁ?」
ここで言う出勤とはただの登校のことなんだが
昼前に俺の家集合→各自弁当タイム→学校へ
がいつものパターンである。
まぁ、学だけは何故か朝9時にはやってきて俺が起きるまで漫画を読んで
時間をつぶしてる。
だったらそのまま学校行けよ、と思わなくもないが・・・・
こんなダラダラとした生活でも俺達は楽しかった。
いつもの道を生活なみにダラダラと歩く不良少年4人組
「なぁ、俺らこんな感じでいいのかね?」
透が言う。
「いんじゃね?」
のぼるが速攻で答える。
「俺ら、まだ高1だしな、アハハハ」
無邪気に学が答える。
「マナブのくせに全然学んでねぇ~な」
学のアホ面を見てるとつい言いたくなる。
「いやいや、俺はまなぶじゃなくてガクだしぃ」
くだらない、いつも通りの日常会話を楽しみながら学校に着き各クラスに散らばる。
まぁ、透とは同じクラスなんだが・・・・
教室に入ると
「またぁ~今日も遅刻だよ、そんなんじゃ本当に留年しちゃうよ」
真っ先に声をかけてきた女の子は、小山はるな。
俺たち見たいな奴らにも物怖じせず明るく話しかけてくれる数少ない女子である。
おまけに可愛いときたもんだ。
口元のホクロと笑顔が印象的な子だった。
「いやぁ~俺は早く行こうって言ったんだけどね、透が中々来ない訳よ」
「・・・・・いや・・・・違うだろそれ・・・」
透がつぶやくように言った。
「もうぅ、二人ともしっかりしなさいよ」
そんなことを言われることも嬉しい時間であった。
この子に会うのも学校の楽しみだな、なんてことを思ってると。
ガラガラ・・・・と扉の開く音と共に先生が教室に入ってくる。
そして、開口一番に
「お前ら、もうちぃとやる気でんかぁ?」
当然俺らに向けられた言葉である。
「はぁ~いぁ~」
不真面目な返事をする俺ら。
「高校の3年なんてあっと言う間だぞ、時間の使い方は自由だし
勉強だけがすべてとは言わんが、もうちっと大事な時間の使い方をしろよ」
口うるさい先生で、俺らはことあるごとに怒られてはいるが、決して嫌いにはなれなかった。
自分のことしか考えない先生が多い中、珍しく生徒としてではなく同じ人として話をする先生で
あったからである。
「先生よぉ~それ俺らに言うんじゃなくて、アイツに言ってやったら」
と透が空席を指していった。
俺らのクラスには入学から一度も登校してない奴がいた。
「あぁ・・・・関口かぁ・・・アイツは・・・」とまで言いかけ
「人の心配をするより自分達の心配をしろ」と言葉を変えた。
(アイツって関口って言うんだ)
俺は学校に来てない奴のことなど気にもしなかったが、夏休み前にして不登校児の名前が
関口と言うことを初めてしった。
2014年7月21日
「明日から夏休みだな、一生懸命勉強するもよし、部活に精を出すのもよし、友達と思い出を
作るもよし、後2年もしたら、進学や就職やと色々あるからな、今のうちにいい思いでを
作りなさいだが・・・これだけは言っておく、くれぐれも人様に迷惑をかけるようなことの
無いように」
「特にそこの二人組は気をつけろよ!」
いい思いでを作れなんて先生もなかなか珍しいが最後の一言は余計である。
当然余計な一言を言われたのは俺と透である。
「大丈夫だって先生、透が悪いことしないように俺が見張っておくからよ」
「お前も一緒だ!」
間髪入れずに先生が返してくる。
「そうだ、もう一つ言い忘れたことがあった」
そう言い今度は全員に顔をむけた。
「これは先生からのお願いでもあるが、なるべくなら夏休みデビューはするな、
先生の仕事が増えるからな」
一瞬の間があったがクラスの連中は爆笑していた。
何がおもろいんだ??なんて思ってると、はるなちゃんが声をかけてきた。
「半田君は夏休みどっか出かけるの?」
「いや・・・・特に予定はないな、多分、透らとブラブラするくらいかな?
はるなちゃんはどっか行くの?」
「家族で旅行の予定」
嬉しそうに話すはるなちゃん、やっぱ可愛いなぁ~
なんて思ってる所に透が邪魔をしにきた。
「何?何?なんの話??」
「うるせぇ~よ、お前邪魔」
「いやいや、いいじゃん俺も混ぜてくれよ」
「はるなちゃん家族で旅行だってよ」
ムスッとして答えた俺におかまいなしに透は話を続ける。
「じゃあ、はるなちゃんお土産期待してるよぉ」
たまにコイツの図々しさがうらやましく感じる。
「俺も・・・・」
便乗して俺も図々しさを発揮した。
「じゃぁさ、お土産買ってくるから、始業式の日はちゃんと来てね」
「いくいく」俺と透は同時に答えた。
既に教室は帰宅を急ぐ生徒や部活に行く者とまばらな状況だった中
「よおぅ、帰ろうぜ!」
教室の入り口から、のぼると学の声がした。
「じゃあ、私も帰るね、半田君も、米沢君もちゃんと始業式来るんだよ」
「了解!お土産楽しみにしてるわ」
手をふり俺らは、はるなちゃんの帰宅を眺めてると
「早く帰ろうぜぇ」
学がせかすように声をあげる。
「んじゃ、帰りますかぁ」
俺らは予定もないまま学校を後にし家方向へと歩いていった。
帰宅途中、不意に
「お前ら夏休み予定あんの?」
と俺は聞いてみた。
俺の問いにしばらく全員が黙ったままだった・・・
(やっぱりコイツらも暇人だな)と心の中で思った。
しばしの沈黙を破るかのように透が
「飯でも食って帰るか?」
と話題を変えた。
「いいね」
「どこ行く?」
のぼると学は乗り気のようだが、俺は朝早かったせいか眠くて仕方ない状況だった。
「わりぃ、俺眠いから今日はパスな、家帰ってねるわ」
「マジかよぉ~じゃぁ、3人で行きますか?」
透が言うと
「じゃあ、またTELするわ」
「よい睡眠をぉ~」
なんてことで3人と別れ一人帰宅する途中であった・・・・
「おいっコラッ!!」
急に後ろから罵声が響いた。