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魔法チートのなれのはて  作者: ナベのフタ
幼少領主編
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第4話 イリアとの約束

 ― Side ラウス ―

 なんてこった。

 穴から部屋までに戻るのに服が土だらけになったからイリアの時のように洗濯していたらインに見られてしまった。


 あの糞メイド本当に許せねぇ。

 ノックはしないし、すぐに殴るし、メイド失格だろ!

 主人をなんだと思ってんだ。

 本気でパパンにクビにするよう頼んだろか?


「それでお坊ちゃま、いつから魔法を覚えられたので?」

「…」

「だんまりですか? それだといつまでたってもお食事ができませんよ」


 にこにこと上機嫌なメイドが俺に質問してくる。

 その笑顔がたまらなく恐ろしい。

 そして主である俺は何故か椅子に縄で縛り付けられている。


「あ、主に向かってこんなことしていいと思っているのか?」

「あら、私は当主様よりお坊ちゃまのお世話を任されております。

 魔法はとても扱いが難しく危険が多いのです。主を想うメイドとして放ってはおけません」

「む~」

「ほら、さっさと吐いて楽になってください」


 くそー、このメイドヤバすぎる!

 何が恐ろしいかといえばこの屋敷で一番偉いはずの俺がこんな目にあっているのに他の使用人たちが普通に働いていることだ。


 見習いメイドなんて「まだ時間がかかりそうなのでお夕食を温めなおすよう料理長に頼んでおきますね♪」とか、自然すぎ! 皆もっとメイド長の仕打ちに違和感を覚えようよ。


 メイド長完全にこの屋敷の首領(ドン)だよ!

 影どころか表まで首領だよ!

 これは謀反だ! 領主の座への乗っ取りだよ!


「お坊ちゃま、あまり言うことを聞かないようでしたらお尻ペンペンしますわよ」

「やめて! ケツが割れる!!」


 インの脅しに屈した俺は魔法を覚えた経緯を全て話した。魔法は「俺天才だからできた!」と、一応嘘は言わずに説明して、服の汚れについては土魔法の練習でついた事にした。

 こっそり屋敷の外へ出かけたことは絶対に隠さないと。


 危険な綱渡りだったぜ。

 嘘だとばれてお尻ペンペンを食らうことだけは避けなければならない。以前インのお尻ペンペンで既に一度尻が割れてしまったからな。


「分かりました。お坊ちゃまには魔法の才能がお有りのようです。

 明日から魔法が使える家庭教師を雇いましょう」

「えっ、こんな田舎に魔法使いいるの?」

「ええ、それなりにいますよ。

 それとお坊ちゃま、ご自分の領地を田舎と呼ぶのはおやめください」


 だってド田舎じゃん。

 窓の外見てみ? ジャングルだよ。


「では、私は明日村へ行って参りますので。ああ、ちょうどいい機会ですのでお坊ちゃまもご自分の領地を見て回りますか?」

「んっ、んー、今度でいいや」

「そうですか」


 あぶねー、一瞬行こうかと思ったが万が一イリアや悪ガキどもと遭遇したら面倒なことになる。

 俺がお忍びで村に行っていたことがバレたら…インにケツが割られる!?


「俺、今日はもう寝るよ」


 食事を早く切り上げ自室に戻る。

 俺は自室で魔法の開発に取り組む。

 

「約束しちまったからな」


 イリアとの約束を果たすため夜通し新魔法を開発する。

 インに気づかれないためにはどうすればいいのか。あんなド田舎じゃすぐに俺のことも気づかれるか? それならバレた時に尻へのダメージを最小限に抑える魔法でも考えるか?


 若干ネガティブ入りました。

 ちゃうねん、眠いねん。


 翌日、魔法開発で徹夜したせいで俺は昼まで眠っていた。

 目が覚めると朝食が昼食だったのでいつものように良く噛んで食べる。

 さて、昼食が終わったら村に行くか。

 フィオナと約束していたからな。


 使用人には部屋で昼寝するから入ってこないよう指示する。

 そして秘密の抜け穴から屋敷の外へ出る。

 インは既に村に行っているので鉢合わせしないように気を付けないと。


「風よ!」


 俺が昨日の夜考えたのは村までの簡単な移動法とインに見つからないようにする隠密法だ。短い時間で習得するため二つとも同じ風の属性で覚えてみた。


 移動には風魔法で自分の体を浮かせて空を飛ぶ【フライ】、インから身を隠すのは風魔法で周囲の情報を得る【ソナー】、これら二つを使って村まで向かった。


 風を操り、空を飛ぶというのは魔力操作が難しいが俺には問題ない。【操魔の魔眼】で魔力が目視できるので余裕もいいところだ。

 【ソナー】は神様に教えてもらった魔力感知の広範囲バージョンで半径500m以内の魔力や音を感知するすぐれものだ。

 これでインと鉢合わせすることもなくなった。


「あっ! おにいちゃん!!」

「ようイリア」


 約束通りイリアは昨日と同じ場所で俺を待っていた。

 俺が現れるやイリアは涙目で抱きついてくる。


「おそいよー! イリアすごくまってたんだから!」

「それはごめん。どれぐらい待っていたの?」

「朝から!」

「っ!?」


 うぐっ、何この子。

俺の精神を削ってくる、…重いよ。


「それじゃあイリアはまだお昼ごはんを食べてないの?」

「うん? たべてないよ」


 それは悪いことをしたな、何かご馳走してやりたいが…。


「フィオナちょっとここで待っていて」

「…いや」

「ちょっとでいいから! すぐ戻ってくる! お願い!!」

「うーん、ちょっとだけだよ」


 ふぅー、ちょっと離れると言っただけで凄い疑いの目で見られたな。

 4歳児のする目じゃないよ。


 イリアから身を隠せたところで素早く森へ入っていく。


「…お待たせ」

「どこにいってたの?」

「ちょっとね、それよりもイリアの家にいかない? ごはんをまだ食べてないんだろ?」

「いってもいいけどお母さんおしごとでいないからごはんないよ?」

「大丈夫。お兄ちゃんが作ってあげるから」

「ほんと!?」


 イリアは「こっちだよ!」と俺の手を引っ張りながら家に向かっていく。

 その道中、周囲を【ソナー】で調べたがインの反応は無かったので安心した。


「ここだよ!」


 そう言って案内されたイリアの家は小さな木造りの一軒家だった。

 大分年季が入っているというか、ボロ小屋というか…。


 家の中は電球なんて物はないので薄暗く、小さな木製のテーブルと台所とタンスがあるだけで後は最低限のものしかない。壺が数個置いてあるので中身を見てみるが水しかなく食料はなかった。

 もしかしてイリアの家って超貧乏?


「イリアっていつも何食べているの?」

「えーとね、はっぱやくだものに…たまにパンとお肉!」


 なる程、…自給自足やん。

 お母さんのお仕事は何か知らないけど完全に自給自足ですよね。


 イリアは父親を知らず母親が一人でイリアを育てているらしい。

 やばい、泣けてくる。


「おにいちゃんおなかすいた!」

「分かった。じゃあすぐに作るから待っててね」


 俺は台所に行き【アイテムルーム】からさっき森で狩ってきた兎の魔物を取り出した。【フライ】と【ソナー】を使えば簡単に見つけられたので、後は【レーザー】を眉間にどきゅんっである。


 魔物なので兎とは言え、大型犬ぐらいのサイズがある。

 となりでそれを見てイリアがはしゃいでいるがここから先はとてもお見せできないので外で待っていてもらう。


 台所に置かれてある包丁を使わせてもらおうかと手に取るが、刃がボロボロで砥石が必要な状態だった。

 土魔法で砥石を出すがイリアが待っていることを思いだして料理を優先させる。手に風の刃を纏い、兎を料理していく。


 料理していて内蔵とか取り除くのだが俺は意外と平気だった。

 殺した時も罪悪感は無かったし、それよりも久しぶりに肉を食べられる楽しみの方が大きいのかもしれない。


 流石に兎の頭には思うところもあったのですぐに切り離して【アイテムルーム】に放り込んでおいた。頭を切り離して皮を剥げば完全に見た目が肉になったのでイリアにも見せてあげた。


 肉の量が多いので食べる分だけ残して後は【アイテムルーム】にしまっておく。後は肉を焼くだけだがイリアの家の鍋は汚れているので使う気がせず、外に出て土魔法で綺麗な岩の台を出して下から火魔法で熱して肉を焼き始める。


「おいし~い!」

「そうかそうか、たくさん食べていいからな」

「うん!」


 俺も肉を食べてみるが中々美味い。

 だが味付けをしてないのですぐに飽きてしまった。

 塩とコショウとレモン汁が欲しいな。今度屋敷から拝借しておこう。


「さて、じゃあ俺は後片付けをするか」

「どこいくの?」

「んっ、お肉を料理してイリアの家を少し汚してしまったから掃除をね。

 イリアはまだ食べていていいよ」

「うん、きゅうにいなくなっちゃだめだよ」


 うーん、イリアたんの度々不安がる視線が辛い。

 俺イリアの兄ちゃんに生まれればよかった。


「それにしても汚いな。良くお腹壊さないでいられるな」


 台所にある食器や鍋は汚れが固まっていてひどい有様だ。

 この世界には水道がないから水魔法が使えないと川や井戸から汲んでくるしかない。女性にとってはどちらにしても重労働になる。


 きっとイリアの母ちゃんは水魔法が使えないんだろうな。

 俺はそれを思うとつい魔法で色々してあげたくなった。

 まずはボロ包丁を砥石で研ぎ、汚れがこびりついた鍋は【レーザー】で綺麗にする。食器も水魔法で洗い、水桶に水も足しといておく。


 仕上げに家の中に【ホーリー】と【ヒール】をかける。

 【ホーリー】を建物に使うと除菌効果が少しだがある。【ヒール】も除菌効果はあるが建物自体の傷んだところを少しだけ治すことができる。

 両方気休めみたいなものだが一応ね。

 

「おにいちゃんあそぼっ!」

「おう、食べ終わったか」


 一段落着いたところでイリアと遊ぶことにした。

 村に行くとインに見つかりそうなので森の探索をしながらイリアと遊んだ。


 森に生えている植物や果物がわかって中々に有意義な一日だった。

 珍しい果物や石なんかを見つけてはこっそり【アイテムルーム】に収納した。


 日が沈み始め屋敷に帰ろうとするとイリアが大泣きして引き止めるので前回と同じパターンでのお別れとなってしまった。

 俺、毎回この罪悪感を味わうの?









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