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魔法チートのなれのはて  作者: ナベのフタ
幼少領主編
3/37

第2話 田舎だった

 ― Side ラウス ―

 インに外出禁止を言い渡されて黙っている俺ではない。

 あの主の言うことを全く聞かないメイドには愛想が尽きたぜ。

 もう心の中でさん付もしてやらん。

 今までは己の無力故に大人しく従っていたがそれも終わりだ。


「見せてやるぜ! 魔法の使い(・・・)を!」


 部屋には安全のため窓の一つもない。出口は扉だけ。

 だが扉から出ると何故かインに気配を察知されてしまう。

 だから俺は扉を使わずに外へ出る必要がある。


「はああぁぁぁぁ」


 気合を入れ部屋の壁際に行く。

 そして床にしゃがみ、手を床に付ける。


「掘れろぉぉぉぉ!」


 気分的には大声で唱えたかったが、インに気づかれてはいけないので小声で叫ぶ。床に土魔法を発動させて下へと続く穴を掘り、自分の体が入るよう穴を広げてそのまま中へと入っていく。

 そして地上に出るようトンネルをつなげるのだ!


 今の気分はまさに脱獄囚。

 頭に光魔法のライトを浮かばせ、ほふく前進で顔に土をつけながらも音を出さないよう慎重に掘り進めていく。

 へへっ、このスリルがたまんねぇ!


「…よしっ、無事に地上に出たぞ」


 風魔法により周囲に人がいないのは確認済みだ。

 素早く穴から出て庭の茂みに隠れる。そして屋敷の塀を超えてついに脱出を成功させた。


「うおおおぉぉぉぉっ! 俺はやったぞ!

 インめ、ザマァァミロ!! ぐひゃひゃひゃひゃっ!!」


 おっといけない、5歳の美少年には似つかわしくない下品な笑い方をしてしまった。

 日頃のストレスって怖いわー。


「よしっ、村の探索しよう!」


 武器屋とか防具屋に行ってみたい。一般のお店では何が売っているのかも気になる。俺は駆け足で街へと向かう。


「何ここ、超ド田舎じゃん」


 これが街?

 そう言いたくなるほど大自然に囲まれた街の光景に唖然とした。


「これ村だろ! ド田舎だよ!!」


 俺の領地はド田舎でした☆

 屋敷から数十分走ってようやく着いた村は畑ばかりで、家なんてポツリとしかない。それでも我慢して歩いていくと家が密集した地域を発見。


 そこで俺と同い年ぐらいの子供達が四人いた。

 子供たちは仲良く遊んでいるようだ。


「やーい、耳ながー!」

「みみながをたおせー」

「くらえっ」


 デブ、やせ、ちびの男三人組が一人の少女に泥団子を投げつけている。


「やめてよー」


 少女は体中泥だらけで蹲っている。

 あっ、これいじめだわ。


「何してんだ悪ガキどもぉっ!」


 俺は悪ガキ集団に土魔法で作った泥団子をお見舞いしてやる。

 土魔法で作った泥団子は百発百中で悪ガキどもに当たる。

 ははっ、蜂の巣だぜ!!


「ぐあっ! 何だおまえ!」

「いたい、いたい!」

「うわーん!」


 悪ガキどもは泣きながら逃げ出していった。


 ふぅー、いい仕事した。

悪ガキどもよ、俺の領地で好き勝手はさせねぇぜ。


「大丈夫か君?」

「は、はい」


 俺は泥だらけの少女に手を差し出す。

 だが少女は自分の手が泥で汚れているのを気にして自力で立ち上がる。


「泥だらけだな。あいつら酷いことしやがる」

「あ、あのっ」

「んっ?」

「たすけてくれてありがとう」

「いいってことよ。住民を守るのは俺の義務でもあるからな」

「じゅうみん? ぎむ?」


 むっ、子供には難しかったか。

 まあいい、それよりもこの子の泥を何とかしてあげないと。


「この辺に水浴びとか出来る場所はある?」

「川があるけど子供だけではいっちゃだめってお母さんが、井戸ならちょっと遠いけどあるよ」


 そう言って少女は村の方を指差すが井戸は見えない。

 あまり遠くまで行くと夕飯までに屋敷に帰るのが間に合わなくなる。

そうすると俺がいないことが気づかれてしまう。

 

「お前名前は?」

「イリア」

「そうかイリア、俺はラウスだ。

 お前このまま家に帰ると大変だろうから俺が魔法で綺麗にしてやるよ」

「ラウスはまほうがつかえるの?」

「ああ、見てろよ」


 手のひらに水の玉を浮かばせて少しずつ量を増やしていく。

 水だと冷たいだろうから即席で火魔法を混ぜてぬるま湯にする。湯の玉が大きくなったところでイリアの体を包んでやる。

 

「わっ! なにっ!?」

「大丈夫。あったかくて気持ちいいだろ?」

「う、うん。お水なのにあったかい」


 イリアは雪だるまのように湯の玉から頭だけ出して気持ちよさそうにしている。この世界は風呂に入る文化がないからな。

 毎日風呂に入れるなんて貴族ぐらいだぜ。

 俺、風呂に入ったことねぇけど。


「イリア、体を洗えよ」

「う、うん!」

「よっしゃ、服もついでだ!」

「わっ、わー。あははっ」


 湯の玉を操作して洗濯機のように渦を作る。

 泥で汚れた水は捨てて新しいのを足していく。


 ここまで魔法を自在に操れるなんて【操魔の魔眼】にして良かったぜ。

 【操魔の魔眼】でイリアを見ると体に流れる赤い魔力が見える。

 イリアの適性は火か。


「ああぁぁぁ~」


 只今イリアを乾燥中。

 風魔法と火魔法の組み合わせで温風を送っております。

 とても気持ちよさそうにしているイリアは微笑ましい。

 妹がいたらこんな感じだろうか。


 泥が落ちて気づいたがイリアは綺麗な金色の髪に碧眼の超美幼女だ。

 少し目が細くて耳が長い。これはエルフの特徴だ。

 俺は初エルフに感激していた。


「いやぁぁぁぁ~!!!」

「…」


 イリアちゃん大泣き中。

 原因は俺が家に帰ろうとお別れしたため。


「いかないでおにいちゃん!!」

「ちょっ、泣かないで。また遊びにくるからさ」

「いやー! イリアといっしょにくらそう!」

「それは無理があるというか、初めて会ったばかりで重すぎるというか…」


 イリアの年齢は4歳で俺が年上だったのでお兄ちゃんと呼び出したのはいいのだが、ここまで懐かれるとは。

聞けばイリアは母親と二人暮らしをしているらしい。母親は仕事で忙しくて家にいる時間が少なく、寂しい思いをしているらしい。


「イリア明日もここに来るから。

 ほらっ、俺も家の人が心配するから帰らないといけないんだよ」

「うわーん!」

「イリア、…ごめん!」

「おにいちゃーん!!」


 大泣きするイリアを振り切って屋敷に戻る俺。

 振り返ると俺を追いかけようとして転んで大泣きするイリアの姿が目に入る。

 ぐはっ、何この精神的ダメージの深さ。


 ごめんイリア! お兄ちゃん早く屋敷に帰らないと鬼メイドに脱走の事がバレて殺されるかもしれない!

 そしたらもうイリアに会いに来られなくなるんだよ。


「イリア! 明日も来るから!」


 大泣きするイリアにそれが聞こえたかは分からないが俺は約束した。










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