第2話 奴隷
― Side ラウス ―
人間、獣人、エルフ、羽人、竜人、魔人。
様々な種族の奴隷が並んでいるが一番ボインなのは魔人が多い。けれど魔人は肌色が紫で俺好みではない。
数少ないボイン+美人。
それに処女までつけるとほぼ0になってしまった!
ブスのボインはいらん。
「いかかですかな?」
「う~ん」
ボイン+美人+処女の奴隷は2人だけいた。
だが種族が魔人と獣人なのだ!
魔人は肌色が俺好みではないと理由で遠慮するが、獣人の方は別の問題がある。それはその獣人が牛族なのだ!
え? 何がダメかって?
…あれがね、6つあるんや。
うん…流石に大好きなものでも6つは多いね。
惜しかったな~。顔もおっとり美人で肌色も健康的な小麦だったんだけどな~。オパが6つはちょっと引くね。
仕方ないのでボインは諦めて、お姉さん+処女で検索してみる。
「それならばこちらがオススメですよ」
「ほほう」
並んでいるのは人族とエルフの女たち。
この奴隷商やりおる! 俺の好みの種族をさっきので見極めたということか。
その中でも一番おっぱいの大きなエルフに目をつける。
「おや、そのものがお気に召しましたか?」
「このお姉さんはいくら?」
見た目14~15歳のエルフの少女。
エルフには珍しい赤髪でツインドリルのお嬢様ヘアーという中々レア個体を発見した。顔は中の上ぐらいだが強気な目がいいね。
奴隷って死んだ目が多いからこういう目に力のあるのは貴重だよ。
「金貨三百枚になります」
「…えっ?」
なんだって? 金貨三百枚?
金貨一枚が十万円ぐらいの価値だから…三千万円!?
買えるよ。買えるけど…奴隷ってそんなに高いものなの!?
「エルフは長い時間を生きますのでこれぐらいの値がつくのですよ。それにこれは処女ですから余計に高価です」
そうか。エルフの平均寿命は二千年だっけか? あいつら物凄く長生きなんだよな~。
見た目も若い頃のまま大して変わらないし、確かにそれは高くなるな。
「ん~、もっと安くて可愛い子いないの?」
あの子を前に失礼だが金貨三百枚は惜しい。
俺の全財産が金貨五百枚だからな。そこまで好みの顔でもないのに半分以上も使いたくない。
「そうですな~、安いエルフとなるとワケありぐらいしか…」
「ワケあり?」
「欠陥商品のことです。目が見えなかったり腕がなかったりお客様が見てもあまり気持ちのいいものではありませんよ」
「へー」
ワケありか…。
あれ? それって俺にとっても都合がいいんじゃないか?
治療の実験台にもできるし、治れば普通の奴隷と変わらないってことだろ。
安くて実験できて治ればおっぱい…イイんじゃない?
「へいっ! オーナー! 盲目と腕なしを見せておくれ!」
「お任せ下さい!」
さらに金貨一枚を握らせてやるとオーナーは喜んで奴隷を集めてくれた。
こういうのは太っ腹だと思わせておくのが重要だからね☆
残り499枚か…。
「準備が出来ましたよ」
「…うわっ」
奴隷商に呼ばれて部屋に入ってみれば痛々しい奴隷達が並ばされている。
体に痣があったり、腕がなかったりと重い光景だ。
「これでも大分マシなモノを選んだつもりですよ」
脂豚がそういうのだから嘘ではないのだろう。
これよりも酷いワケありか…想像しただけで吐き気がするな。
「オーナー、この人はいくら?」
俺はあまり長々と選ぶ気も失せたので適当にブスではないエルフを指差した。
そのエルフの少女は12~13歳ぐらいの年齢で緑色の髪だった。先程の赤髪エルフよりも幼く、そして両目と両腕がなかった。
「このエルフならワケありですので…金貨40枚といったところですかな」
「…買った」
脂豚にそう言って俺は足早に部屋を退出した。
金貨40枚はまだ高い気がしたけど値段交渉をする気も失せた。軽い気持ちで奴隷を買おうと考えた自分への罰だと思おう。
少しして奴隷商が首に縄をかけたあのエルフの少女を引いてくる。
「それでは契約書にサインと奴隷の首輪に血を垂らせば契約完了です」
奴隷商に言われた通りに血を垂らす。俺の両腕は義手なので足から血を取る。それを見て奴隷商は不思議がっていた。
「これで奴隷契約は終了となります。おい、お前のご主人様に挨拶をしなさい」
「シャラといいます。よろしくお願いしますご主人様」
「ああ」
俺はシャラを連れてすぐに店を出る。
シャラ目が見えず両腕もないので家に連れて行くのに首にかけられた縄を引いていくしかない。道中目立ちまくりだったのには心が折れそうになった。
森奥の家に帰り着いた頃にはすっかり夜になっていた。
シャラは長い時間歩いて疲れていたので早くに寝かせてあげた。俺は徹夜してシャナのために義眼と義手を作る。
特に義手は仕組みが複雑なので時間がかかる。
翌日の早朝、シャラが目を覚ましたので義眼について説明してみる。なにせ初めての試みなので目を弄られるなんて嫌だろう。
本人の同意がないことにはためらってしまう。
だけどシャラは…。
「お願いします! 私の目を治してください!」
「シャラ!?」
シャラは深く頭を下げる。その勢いが良すぎて上半身を支えきれずに顎から地面に落ちる。
痛そう!
「お願いします…お願いします…お願いします」
泣きながら懇願し続けるシャラ。俺の言葉が嘘だとは疑いもしない。
ここまでお願いされたなら仕方ない。
安心しろシャラ。この名医ブラック・Jにお任せあれ!
オペは順調だった。
魔物の解体でグロ耐性や生物の仕組みに対する理解は深まっていて初めてとは思えないハイレベルの手術だった。
もう指が神の奇跡みたいにぐにょんぐにょんと動くよ。義手でこの手先の器用さ、見よ! これが俺の三年の集大成だいっ!
眼球の素材は『マテリアル』で瞳の色はどうしてもピンク色になってしまうがちゃんと白目もあるのでそこまで変ではないだろう。
一番の不安は麻酔の効き具合だった。
義手は取り付けるだけでよかったが眼球は痛みがあるので魔法で神経を麻痺させてみたが後遺症が残らないか心配だ。
「ふぅ、オペは終了だ」
オペが終わるとシャラに念入りに浄化魔法、回復魔法、解毒魔法をかけておく。これでバイキンとか傷の痛みは無くなると思う。
失った両腕に義手もつけておく。
義手は魔力調整と簡単な接続なだけで数分の処置でできる。
「あー、疲れた」
もうダメだ。
オペ時間は3時間ぐらいか? 慎重にやりすぎて時間かかっちまった。
それに昨日から徹夜でもう眠気が限界まできている。
あばよシャラ。
俺はもう寝る。ご飯は机に置いてありますからチンして食べてください。
…おやすみ☆




