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魔法チートのなれのはて  作者: ナベのフタ
幼少領主編
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第1話 5歳になったぜ!

 ― Side ラウス ―

 ヒャッハー!!

 ようやく記憶が戻ったぜ!!

 これで俺TUEEEEEEしまくってやんよ!!


 銀髪の美少年こと俺、ラウス・ゴ・マッハンスは今年で5歳になりました。

 いやー、今は記憶が完全に戻って清々しい気分ですわ。


 なにせ今までは前世の記憶を夢のような感じで体験していたので現実味というか、理解するのが難しかったんですよ。

 魔眼のことを思い出しの昨日だったからな。


 まー、年齢的にもちょうどいい具合に記憶が復活したな。


「それにしても俺、…美少年すぎだろ」


 あらためて俺の部屋にある大鏡の前で転生した自分の姿を見ている。

 光り輝くサラサラな銀髪に宝石のように美しい紫色の瞳、美幼女と間違えてしまいそうな程整った顔立ち。

 ファンタジーゲームのコスプレでもしたら実写版になるぞ。

 もう自分の将来が恐ろしいよ!

 前世の地味な自分は忘れてこの世界ではうんと勝ち組人生を送ってやるぜ!


「お坊ちゃまどうされたのです? お鏡で自分のお姿を見つめられて、どこかお怪我でもなさったのですか?」

「んっ、ああ、別にちょっとな…」


 おう、びっくりした。

 当然入ってくるなよメイド。ノックしろよ。

 5歳だからってプライバシーはあるんだぞ。


「お坊ちゃま、朝食準備ができましたよ」

「おう、わかったよ」

「おう??」


 やべ、間違えた。

 ただでさえ記憶がもどる前は不安定でアレな子認定されていただけにメイドの視線が冷たい。


「は、はい。すぐに行きます」


 ふー、今までの喋り方は面倒だな。

 でも急に流暢な話し方するのも不自然だし、もう少しの間は我慢しておくか。


「はぁー、米食いたい」


 俺は現在、大きなテーブルで一人食事をしている。

 固いパンに野菜スープ、卵とハムが少し、飲み物はオレンジジュース。

 パンは硬いのでスープに浸しながら食べる。

 おかわりは野菜のみ自由。


 口が小さいのでゆっくり噛んでから飲み込む必要があり、結構時間がかかってしまう。

 料理に関しては正直物足りない、というよりあまり美味しくはない。

 ジャムもバターもマヨネーズもケチャップも無いものつくしだ。

 俺一応貴族だぞ! 貴族!


 そう、俺は貴族の家系に生まれたのだ。ゴ・マッハンスの『ゴ』が貴族の証らしい。


 俺はマッハンス家のじゅう…なん男かで、俺の上には見知らぬ兄ちゃん姉ちゃんがたくさんいるらしい。

 俺の親父は余程節操がないと見える。


 メイドに聞いたところ親父には正妻の他に側室が複数いるらしく、俺は一応正妻の息子なのだが既に兄(正妻の)が二人いるので待遇もしょぼい。

 それでもこの領地を治める領主にはなれた。


 5歳で領主とかこの世界大丈夫? まー、実際の経営とかは部下がやってくれているけど。


 それにしても平民の暮らしや食事風景を見たことがないので何とも言えないが、この食事は絶対贅沢じゃないと思う。

 俺一応領主、貴族よ、OK?

 貴族ならもっと肉食わせろ! 毎日に野菜ばっか食わせやがって俺を草食系男子にするつもりか!?


 それと許せない点がもう一つ。

 俺はこの屋敷に一人で暮らしている。


「俺こんなに美少年なのに…」


 俺は両親とは一緒に暮らしていないのだ。

 一人と言っても勿論世話係であるメイドが数人と使用人がいるのだが、家族である両親と兄弟とは別暮らしである。これはマッハンス家の仕来りで両親が共に暮らすのは家を継ぐ長男と予備候補の次男だけで他の子供は別の屋敷で育てるらしい。

 兄弟同士で権力争いを起こさないための配慮だとか。


 まー、それはいいよ。

俺も権力争いとかごめんだしな。

でもよ、年に一度も顔を見せない両親ってどうなのよ?

俺、愛されていません。


 ぬおおおおおおぉぉぉっ!!

 信じられねぇよ! こんな美少年に愛情を注がないで誰に注ぐんだい? パパンにママンよ!

 俺、絶賛愛情に飢えています。

異世界転生のテンプレ、美人のママンとイケメンのパパンがいないのは残念だが諦めよう。


「まー、好き勝手できるからいいけどよ」


 将来が不安だから貴族とかには生まれたくなかったが仕方あるまい。奴隷じゃなかっただけマシとしよう。

 うちは結構大貴族みたいだけど見知らぬ許嫁とかいそうで怖いな。


「とりあえず今は魔法の練習をしとくか」


 屋敷の書庫から適当に本を数冊部屋に持っていく。

 文字の読み方が分からないのでメイドに頼んで教えてもらう。

 教えてもらうと言っても絵本を渡して読んでもらうだけだ。


 天才の素質を持つ俺は一度聞けば大抵のことは忘れないハイスペックだから、絵本程度なら一度読んでもらえば丸暗記できる。

 毎日別の絵本を読んでもらい文字を覚えた。これで魔法の勉強ができる。

 俺はまだ5歳なので教育もたいして行われていない。自由時間は有り余っているのだ。


「ふむ、魔法はイメージと呪文に魔法陣が必要…」


 魔法書を開き読み進める。

 簡単な魔法ならイメージと呪文で発動できるらしく、中級以上になるとどこかに魔法陣を書いた媒介を必要とするらしい。


 存在する魔法の属性は火、水、風、土、雷、光、闇、無の8種類。

 ただ呪文も魔法陣もイメージをより固めるためのもので、無くても理論上は魔法の発動が可能と書かれてある。


 結局イメージだけでいいってことか?


「火よ!」


 俺は指先に火が灯るように念じてみる。

 【操魔の魔眼】で確認してみると指先に白い光が集まっているのが見えた。

 そしてその光が火の形になり、本物の火へと変わる。


「おおっ!」


 一発で成功した。

 やはり俺は天才のようだ。それにしても俺が白で、メイドは水色だったから個人で違うのかもな。

 パンツの話じゃないよ。魔力の話。

 

「魔力属性の項目は確か…あった!」


 魔法書から属性についての説明に細かく目を通す。

 属性は全八種あり、水晶により適性を調べることが可能である。


 一人の人間の適正属性は一つが基本だ。自分の適性以外の魔法も使用は可能だが適性ありとなしでは威力や持続力が違うらしい。


 属性の色は、火=赤、水=青、風=緑、土=茶、雷=黄、光=白、闇=黒、無=無。色の強弱で魔力の強さが判断でき、濃いほどに魔力量は多いとされている。


「なるほどな…それだと俺は白だから適正は光、色の強弱は…あれ?」


 【操魔の魔眼】で自分の魔力の色を確認してみるが、ただただ白い。

 白って色の強弱なくね?


 魔法書を見てみると光、闇、無は専用の魔道具がないと魔力量は測れないらしい。まあ、俺は自分の魔力量は多いって神様に聞いていたから別にいいけど。


「俺の適正光かよー。勇者っぽくて格好いいけど光での攻撃方法がレーザーぐらいしか思い浮かばねぇ」


 魔法書には基本しか書かれておらず、各属性の詳しい魔法は弟子入りするか専用の魔法書を購入するしかない。


 メイドに光専用の魔法書の値段を訪ねてみたら話をはぐらかされた。

 相当高価なようだ。


 仕方ないので自分がイメージする光魔法を発動してみる。

 光魔法といえば暗闇を照らすライト、魔を浄化するホーリー、傷を癒すヒール、敵を貫くレーザー。

【操魔の魔眼】のおかげでどれも簡単に再現できた。

 よく転生者にありがちな魔法の威力が強すぎて大惨事に! みたいなことも俺には【操魔の魔眼】があるので問題ない。


 光魔法のレーザーを指先から鉛筆程の太さに調整して床に撃つと小さな穴が空いた。穴に触れると熱がこもっていて少し焦げ臭い。


 ふむ、実に面白い。

 けど光魔法は発動の度に眩しくて俺の目に優しくない。

 サングラスが欲しいな。


 チートな俺はその後も光魔法の練度を高め、さらには適正外である他の七属性の魔法も基本は使えるようにした。


 そこで便利だったのが闇魔法と無魔法だ。

 闇魔法は光魔法の眩しさを軽減するため、闇の薄い膜で目を覆いサングラスを作った。【アイシールド】と名付ける。

 無魔法は物を無限に収納できる空間を作ることに成功した。【アイテムルーム】と名付けよう。

 もう魔法便利すぎて困っちゃう。


「お坊ちゃま、お部屋で何をしているのです?」

「うおっ!? いつから見てたの!!?」

「つい先程ですよ。お坊ちゃまの声がしたものですから」

「ノックしてよ!」

「申し訳ありません」


 このメイドは全く、クビにしてやろうか?

 俺にそんな権限ないと思うけど。

 それにしても声が聞こえていたのか、魔法に興奮しすぎて「おー」とか「うはっ」とか言ったからな。

 やっぱ部屋の中は魔法の練習に向かないな。


「ねえイン、俺外に遊びに行きたい」

「分かりました。それではお供します」

「いや一人で行きたいんだけど」

「なりません。お坊ちゃまの安全をお守りするのも私の仕事ですので」

「そこをなんとか!」

「なりません」


 この頭の固く、人の部屋に無音で入ってくる傍若無人のメイドはインさんといって、俺がベイビーの頃からお世話してくれている。

この屋敷のメイド長でまだギリで若く濃い青髪ショートヘアに茶眼の美人さん。見た目は二十代後半だと思うけど、聞いても怖い顔されるだけで教えてはくれない。どこで修行したのか知らないけど無音で部屋に入ってくるのは本当にやめてほしい。

 

「お願い!」

「なりません」

「お願い!」

「なりません」


 そして何か我が儘を言うとすぐに「なりません」の一言で俺の意思を折に来る。子供特有の甘え攻撃や上目遣いも一切通用しない堅物。

 おかげで俺は貴族にも拘らず謙虚な性格になってしまった。

もっと優しくしろや!


「どうして一人でお外はダメなの? 僕危ないことしないよ」

「なりません」

「僕だって一人でお外に行きたいよ!」

「なりません」

「糞バb…」

「いけないっ!」

「ぐはぁっ!」


 インさんの容赦ない拳を腹にもらう。

 殴ったな、親父にもリバーブローを食らったことがないのに!


「ぐへっ」

「大人しくお部屋で遊んでいてください」


 インさんはそう言って静か(・・・)になった(・・・・)俺を置いて部屋から出ていく。


「…」


 これ虐待じゃね?

 誰か俺に愛情プリーズ!!!






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