閑話 ドラゴンキラーの少女
― Side イリア ―
王様に呼ばれてから三年が過ぎた。
私は9歳になり、ドラゴンキラーとして王国に勤めている。
「おにいちゃん…」
あの日、大好きなラウスおにいちゃんとお別れしてから一度も会ってない。
初めはとても悲しくて泣いたし、王宮を抜け出そうともした。
でもすぐに王国の兵士に捕まってしまいそれはできなかった。
私の魔法のこともおにいちゃんとの約束で黙っているつもりだったけど、おにいちゃんが竜を倒したと誰も信じてくれないので見せつけてやった。
その時の王宮の人の顔はみんな口を開けたままでボーッとしていて面白かった。
それからはおにいちゃんを馬鹿にする人は減ったけど代わりに私に魔法の教師が何人もついた。
私は魔法をたくさん教わることになったけど、王宮の魔術師の教え方はおにいちゃんと違いとても下手くそだ。
魔法陣や呪文の勉強なんて意味がわからない。
みんなの魔法がおかしいのでおにいちゃんや私の魔法の事を教えるけど誰もできない。
正直意味がわからない。こんな簡単なことなのになぜ誰もできないの?
みんなは私が変みたいに言うけど、みんなの方が変だ。
早くおにいちゃんに会いたい。おにいちゃんなら分かってくれるのに
王宮での生活にも慣れた頃、お母さんにおにいちゃんがゴラウスの街からいなくなったことを聞いた。私は慌ててゴラウスに行こうとしたけど場所がわからず迷っている間に兵士に捕まってしまう。
おにいちゃんに会えないこんな場所は嫌だと、私は家出を考えていた。
すると数日後にインさんから手紙が来た。
お母さんに手紙を読んでもらうと。
手紙には、おにいちゃんは遠くへ行ってしまったけど十年後にもう一度帰ってくる。それまでにいっぱい勉強して強くなっていい子にしていたらおにいちゃんがお嫁さんにしてくれる。そう書いてあった。
十年はとても長い。
でもおにいちゃんのお嫁さんになれるのならいつまでも待てる!
私はおにいちゃんを待つことにした。
インさんからの手紙は読んだあと処分するよう書かれてあったので魔法で燃やした。それから私はたくさん勉強して訓練も頑張ると兵士のみんながとても喜んでいた。私が逃げるたびに捕まえるのがとても大変だったらしい。
おにいちゃんならいつも簡単に捕まえてくれるのに。
ああ…早く十年たたないかな?