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魔法チートのなれのはて  作者: ナベのフタ
幼少領主編
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閑話 グリバの考え

 ― Side グリバ ―

 グリバ・ゴ・マッハンスは国内で五本指に入る大貴族の一つだ。

 その証が王家に授かった『ゴ』の名だ。


 私は子供の頃より剣術が苦手であったが魔法の才はあった。

 魔法はいい。我がマッハンス家に伝わる魔道具により初級魔法を中級魔法まで増大させる事ができる。

 私の若い頃はそれで冒険者としての名を轟かせたものだ。


 その点で言えば私とアクセルとの子であるラウスは私の望む才は持っていたと言える。幼くして魔法に長け、歴史に残るような魔道具の開発もした。

 普通の親ならば両手を挙げて喜ぶところだろう。

 だがそれも大貴族の末っ子ならば厄介者でしかない。


 私には多くの息子がおり後継者には困っていない。だが、そのせいで兄弟同士での小競り合いが絶えない。


 私としては長男のハスターを次代の当主に考えている。長男があとを継ぐのは当然のこと、私の時と同様に長男が当主になる。間違っても末のラウスであってはならない。


 息子達の中でラウスを秘密裏に消そうと企てるものも増えだした。

 私はそれを知っても介入することはしなかった。むしろラウスにはいなくなってもらった方が争いを大きくせずに済む。


 しかしラウスが死ぬことはなく、代わりに側室の息子たちが死んでいった。

 それも一人二人ではなく十数人に及ぶ死者を出した。一族中ではラウスを悪魔と呼ぶものまで現れ始めた。


 このままでは体裁的にも不味い、今まで身内同士で争っていたが息子たちが死ぬことはなかった。だがラウスはその一線を簡単に超えていく。


 ラウスの処分に困っているとゴラウスにエンシェントドラゴンが出現したと連絡が来た。

 エンシェントドラゴンが現れるなど国の危機である。

 私はすぐに王都へ連絡せねばと慌てたが、手紙には続きがあり、エンシェントドラゴンはエルフの少女によって討たれたと書かれてあった。


「そんな馬鹿な!」


 すぐに使いの者をゴラウスに送らせる。

 一市民がエンシェントドラゴンに立ち向かえるはずがない。

 私は急にエンシェントドラゴンの出現も嘘に思えた。


 だが数日後、戻ってきた兵士は手紙の内容が事実であったと告げる。

 そしてラウスが重傷を負い眠ったままになっていると。


 私は意味がわからなかった。

 この際百歩譲ってエンシェントドラゴンが出現したことは信じよう。

 千歩譲ってエルフの少女がエンシェントドラゴンを倒したということも信じよう。

 だがラウスは何だ? あいつは怪我を負ったということはエンシェントドラゴンと遭遇していたことになる。しかも攻撃を受けて死ななかったということだ。

 

 国を滅ぼす厄災に襲われ両腕と片目だけで済んだ?

 幸運や悪運で済ませられるものではない。


 ラウスは善し悪しに関わらず危険だ。


 このまま放置しておけばいずれラウスはマッハンス家に大きな混乱をもたらすだろう。それどころか『ゴ』の貴族としての地位を失うような大問題を起こすかもしれない。


 ラウスは即刻マッハンス家から追放する。

 それが私の下した決断だった。


 元々多勢の息子がいる中での末っ子だ。 

 これが娘ならまだ外交にも使えたがラウスは男だ。

 亜人に肩入れし、魔道具を発明して、エンシェントドラゴンをも退ける強運を持つ。そのような異端児はいらぬ。


「全く、なぜ生まれてきた」


 私は生まれてから一度も会ったことのない息子のもとへ行く。

 二度と会わないために。













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