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魔法チートのなれのはて  作者: ナベのフタ
幼少領主編
13/37

第11話 夢

 ― Side ラウス ―

 知らない天井だ…。いや、壁かこれ。

 目を覚ましたら宙に浮かんでいた。

 …俺死んだ?


「おにいちゃあぁぁん!!」


 足元からイリアの悲痛な叫び声が聞こえる。

 えっ? 足元?

 足元を見ると確かにイリアがいた。泣きながら眠っている『俺』に呼びかけている。

 えっ? 俺!?


「死なないでおにいちゃん! イリアをお嫁さんにしてくれるって約束したのに~!!」


 それは有効期限が子供の内のやつな。


「お坊ちゃま、死なないで! 私を領主婦人にしてくれると誓ってくれたじゃないですか~!!」


 おいこら! イン、お前とそんな誓いをした記憶はないぞ!?

 人が寝ているからって捏造してんじゃねぇぞ!!


「おにいちゃん~!!」

「お坊ちゃま~!!」


 イリアとインは滝のように涙を流している。

 …心配しすぎだろ。

 俺が死んだみたいじゃないか。


 あっ、眠くなってきた。

 やば、抵抗できない…。




 ****

「イリア様、お坊ちゃまのお世話は私に任せて行ってください」


 …なんだ、俺どれぐらい寝ていた?


「いや! イリアはずっとそばでおにいちゃんを見てる!」

「イリアダメよ。そんなことをすればラウス様にも迷惑がかかってしまうのよ」

「いや!」


 フィネアさんまで、一体イリアに何を言っているんだ?


「迎えの兵が来ました。イリア様ご準備を」

「いやだ! イリアおうさまのところなんか行かない!」

「イリア、我が儘を言わないでちょうだい。貴方は『ドラゴンキラー』になったの。だから王都へ行かなければならないの」

「イリア様、お坊ちゃまは必ず私がお守りします。だから行ってください」


 なるほど、イリアがドラゴンキラーに、それで王様に呼ばれたのか。

 …ええぇぇぇぇぇぇぇっ!!?

 イリアが『ドラゴンキラー』だってぇぇぇぇぇっ!


 『ドラゴンキラー』っていえば対竜種の人間兵器じゃないか!

 そういやイリアの魔力の質が変わっているような…。

 そうか、イリア王都に行くのか。


「いやぁぁぁ! おにいちゃんといっしょがいいの! おうさまなんて…」

「いけないっ!」

「げふっ!」

「イリア!?」

「ふぅー、大丈夫です。それより気を失っている今のうちに」

「は、はい」


 インのボディブローで気を失ったリネアをフィネアさんが連れて行く。

 おい、俺のメイドよ。なんつー荒業をしてんだ。まあ、王様の呼び出しを無視したら処刑ものだから仕方ないか。

 これで本当にイリアとは当分会うことはできないだろうな。

 あっ、また眠く…。




 ****

「お待ちくださいグリバ様! どうかお考え直しを!」


 んっ? 今度は何だ?

 なんか知らない茶髪のおっさんがいる。険しい顔で眠っている俺を見下ろして…、おっさん誰よ?

 それにしてもインのヤツかなり取り乱しているな。

 周りの使用人たちも動揺しているじゃないか。メイド長としては失格だ…。


「ラウス様を勘当するなどお考えなおしください!」


 …な、なんだってぇぇぇ!!

 何その急展開!? 俺が眠っている間にそんな重要な話を!?

 それにグリバって俺のパパンじゃないか! 初めましてお父さん! 


「くどいぞイン。こやつは我がマッハンス家の恥さらしだ!

 『ゴ』の貴族でありながら竜ごときに傷を負わされた上、平民のエルフの子供なぞに助けられおって!

 この場でひと思いに私が殺してやりたいぐらいだ!」


 えええっ!? 殺すって何ってんのパパン!

 貴方の可愛い息子ですよ! エンシェントドラゴンを倒した英雄ですよ! よく見て、ほら目元とかそっくり!

 

「グリバ様! ラウスお坊ちゃまはあのエンシェントドラゴンから街を守った英雄ですよ!」


 いいぞイン! もっと英雄のところを強調しちゃって!


「ふん! 何が救っただ。ドラゴン相手に両腕と右目を失い、それでもゴキブリのようにしぶとく生き残ったグズではないか。

 聞けばあのエルフの少女が一人で戦いこやつは何もできずにいたらしいな」


 事実が捻じ曲がっているぅぅ!

 誰だ! 誰作の脚本だ! ちゃんとフィクションですって書いてあったんだろうな!?


「グリバ様! その情報は間違っています!」

「くどいぞイン! 貴様一介のメイドの分際でマッハンス家の当主である私に逆らうきか!」

「グリバ様!」

「め、メイド長! 落ち着いてください!」

「ええいっ! 離せ!」

「皆、メイド長を抑えろ。ご乱心だ!」


 鬼の形相で怒っているインを屋敷の使用人たちが数人がかりで抑える。

 そんな取り乱して…パンツ見えるぞ。

 インは屋敷の使用人達に連れられて部屋から退場した。

 使用人の人たちナイスファイトです。

 

「ふん、お父上もあのようなメイドをよく雇っていたものだ」

「先代様は物好きでしたからな。竜人の血が入ったあの女を興味本位で雇ったのでしょう」

「全く父上にも困ったものだ。竜の血が混ざった汚らわしい女をマッハンス家で雇うなど、亜人など人間の家畜に過ぎんというのに」


 カチン。

俺カチンと来ちゃいましたよ~パパン。

 俺が目を覚ましたら顔の形が変形することを覚悟しといてくださいよ。

 

「おいっ! とっととこのグズを森にでも捨ててこい!」

「グリバ様、失礼ながらラウス様はこの街の住民に慕われております。下手なことをしてしまえばゴラウスの住民が謀反を起こす可能性が」


 そうだそうだ! 俺は街で好評の領主なんだぞ!


「グズ共が馴れ合いおって、ならばアクアリアまで治療の名目で運びそこで処罰する」

「はっ、了解しました」


 おい、俺の体を運んでどうする気だ!

 まだ療養中でしょ! 安静にさせないとダメでしょがっ!

 ナースコール! 誰かナースコールして!!



 まずいな。どんどんゴラウスから離れているよ。

 馬車で運ばれている俺。

 ドナドナ~。

 そして馬車は止まり、兵士の一人が森に俺を…ぽいっ。

 ちょっ、ポイ捨てはダメでしょ!


「これで我が家の面汚しも消え清々する」

「ゴラウスの街はどういたしましょうか?」

「ふん、あのような亜人のゴミ溜めは適当な下級貴族にでも押し付ければ良い」

「左様ですか」

「いくぞ」


 馬車は俺を置き去りにしてそのまま走り出していく。

 あっ、俺を置いてどこ行く気だ! ちゃんと拾っていけ!

 実の息子を森に捨てるとか信じられないな。あれが父親のすることかよ。



 …俺ピンチじゃね?

 どういうこと? 何で誰も助けに来ないの?

 森で俺一人とかありえないんだけど。

 あっ、眠く…。


 って! 寝ちゃダメェェェ!!

 起きろ俺! ここで寝たら絶対に死ぬぞ!

 うおおおぉぉぉ! 意地でも目を覚ましてやる。

 

 俺は必死に眠っている自分の体にダイブする。

 入れー!! 入れー!! 入れぇぇっーーーーー!!


「はっ! 夢か!」


 目を覚ました俺は体を起こそうとするが両腕がないので腹筋に任せるしかない。


「ふぬぬ」


無理だ。

体を転がして足を曲げて起き上がる。


「ぺっ! 土が口に入った」


 …あれ? 部屋の中なのに何で土が?

 俺は不思議に思い周囲を見渡してみる。

 木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木、木。


 あっ、空が広いや!

 …。

 …。

 …。


「夢じゃなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」








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