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魔法チートのなれのはて  作者: ナベのフタ
幼少領主編
12/37

第10話 全てを懸けて

 ― Side ラウス ―

 無理無理無理無理無理無理っ!!

 こんな化物相手に勝つとか魔法チートの俺でも無理だって!!

 今だって身体強化で体を支えて光魔法の【レーザー】を両手から放っているけど、一瞬でも気を抜いたら後ろへ吹き飛びそうだ!

 これが慣性の法則っっ!!


「うおおおぉぉっ!!」


 【吸魔の魔眼】をフルで使い続けているのにエンシェントドラゴンの魔力はまだ2割ぐらいしか減ってない。

 【操魔の魔眼】では【レーザー】と【身体強化】の魔力調整にミスリル剣への魔力移動までしているんだ。

 両目の負荷がハンパないっ!!


「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

「ぐぐぐぐぐっ!」


 エンシェントドラゴンは【レーザー】に耐えながらこちらへ進もうとしている。血が出るほど歯を食いしばり、俺はさらに光魔法の威力を上げるが腕への反動がすごい。


「これ以上は…腕が」


 既に腕全体が光っていて高速で振動している。熱くてたまらない。

 これ以上【レーザー】の出力を上げれば腕が吹き飛ぶ! そんなイメージが簡単にできてしまう。


 くそっ! もう何十分抑えていると思ってんだ! 誰か助けに来いよ!!

 インに街の兵士は何をしている! 領主がピンチだっていうのに給料泥棒どもが!!


「あっーーーーーーーーーー!!」


 両腕が熱い! マジで死ぬ。

 助けに来てよパパン! 貴方の息子がピンチですよ! こんな時こそ父親の出番でしょ? 一緒に親子かめ○め波を撃ちましょうよ!!


「GYAAAAAAA!!」

「ぐあぁぁぁ! 押されるぅぅっ!」


 エンシェントドラゴンの残存魔力60%。

 ラウスとの戦闘時間7分。


「おにいちゃん! 目から血が!!」


 イリアの泣き叫ぶ声が聞こえる。

 あ? 両目から何か流れていると思ったら血の涙かよ…。ちょっと格好良いかもとか考えちまうじゃねぇか。

 …魔眼も長くは持ちそうにはないな。


「すぐなおしてあげる!」

「おバカッ! 今は触るんじゃねぇっ!!」

「で、でもっ!」

「いいから逃げろ!!」


 頼むから逃げてくれイリア!

 そして可愛いイリアをバカと言ったことを許してくれ!

 今のお兄ちゃんは魔法制御に集中するので精一杯なんだよ。ヘタに触れられると暴発しそうだからマジほっといて。


「GUGYAAAAAAAAAAAAAA!!」

「このクソったれぇぇ!」


 ズキンッ!


「がっ!?」


 右目に激痛が走る。

 これ以上の【吸魔の魔眼】は本当にやばい!?

 まだヤツの魔力を吸いきれないのか!?


 エンシェントドラゴンの残存魔力35%。

 ラウスとの戦闘時間11分。


「イリア!」

「なに!?」


 【操魔の魔眼】でエンシェントドラゴンの残存魔力を見てこれは間に合わないと思った。ヤツの魔力を奪い切る前に【吸魔の魔眼】は潰れる。【操魔の魔眼】もどこまで持つか…。

 だから、イリアにも頼るしかない。


「イリア! なんでもいい! 俺が合図したらドラゴンの心臓に一番強い魔法を撃ち込んでくれ!」

「わかった!」

「それまではドラゴンだけを見ろ! 絶対に俺を見るなよ!」

「うん!」


 イリアは素直に炎を纏い魔力を高めていく。

 火傷しないのか? なんて思いはしない。火魔法に関しては俺よりもイリアが数段扱いに長けている。

 だから俺は自分のやるべきことをやる。


「GYAAAAAAAAAA!!」

「うおおおぉぉぉっ!!」


 いつだ? いつだ? いつだ?

 いつくる? いつくる? いつくる?

 まだか? まだか? まだか?




 ― プツンッ ―



 来た!!!


「がっ」


 右目が完全に視界を失った。

 【吸魔の魔眼】は完全にダメになったな。俺TUEEEEEしたかったのに。

 ヤツの魔力は…。


 エンシェントドラゴンの残存魔力10%。

 ラウスとの戦闘時間15分。


「食らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」


 これで最後だ!

 【レーザー】の照準をエンシェントドラゴンの胸に一点集中させる。体中の魔力を全て込め【長極大レーザー】を放つ。


「イリア! いけぇぇぇぇぇぇっ!!!」

「GUGYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」


 エンシェントドラゴンの一際大きな悲鳴が聞こえる。

 俺の両腕は【レーザー】の負荷に耐え切れず弾け飛んだ。魔力も切れ、身体強化の解けた俺は後ろへ吹き飛んだ。

 背中から勢いよく木にぶつかるがもう痛みの感覚もない。


「…やつ、は」


 俺は気を失う前に最後の気力を振り絞り、視界のぼやけた左目で前を見る。

 そこには胸の鱗が剥がれ心臓部が丸出しになっているエンシェントドラゴン、そしてそこに強大な炎を纏ったイリアが…。


「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


 天まで昇る火柱に凄まじい竜の断末魔を聞いて俺はイリアが成し遂げたのだと安心して意識を手放した。

 願わくはすぐに俺に回復魔法をかけてくれると助かる…かも。

 ぐへっ…。




 ラウスのミスリル剣、蓄積魔力8972803741。

 ラウスの魔力…0。

              


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