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刑罰

作者: watarionn

本屋に長時間いるとき、急にトイレに行きたいなーと思うことがよくある。


この現象は青木まりこ現象と呼ばれている。



私もここ、利根川書店に来てからかれこれ2時間程だ。本が大好きな私にとって本屋とは天国のようなものだ。

これが欲しい、と思って行くのではなく、本屋に行きたいと思って行くのだ。


そして、気に入った本があると、衝動的に買ってしまう。さっきも、あらすじが面白そうだったミステリー小説を買ってしまった。


そしては、私は1時間程前からトイレを我慢している。


そろそろ我慢の限界になってきたので行こうと思うが、ここの本屋は人気がある…空いているかどうか……




……すこし早足でトイレに来たものの、既に5つある大便器は埋まっている…待つしかない……


だが、待てるか……もってあと、3分……


……なかなか空かない…やばい、やばい、もう時間がない……冷や汗の量が一日の平均発汗量を遥かに越えそうだ…………



……すこし心が折れてきたところ、真ん中のトイレが空いた。


他に待っている人より、早く駆ける。その様はまさに、アイドルの出待ちをしているファン、もしくは福男に本気で挑んでいる男のようだった。


なんとかその要塞に入ることができた私はとにかく急いで用を済ませた。


ふう……なんとか……難を逃れた……敵機を撃墜した英雄のような気分だ……


だが、そのとき既に絶望へのカウントダウンは終焉へ向かいつつあった。



あるはずのものがない時、人はよく硬直する。


私の場合は時間にして10秒ほどか。


トイレットペーパーが……ない……


ないのだ……


…………


拭かずにそのままでるか、外の人に頼むか、何か他のもので拭くか。


拭かずにでるには汚れが多い。外の人はもう出てしまったのか、全然人がいない。何か他のもの、と言ってもなにも代用品はない。室内にも予備のトイレットペーパーはなかった。


こういうときは思考回路のスピードが早い……



私の中の恥が全ての行動を制限しているのか……


私はこの『牢獄』から無事にでられるのだろうか……



いや……ひとつ……『代用品』があった……そこにあるのが普通すぎて気づかなかったのだ……


私の右腕にかけているビニール袋に入っている……本に!


これを……使うしか…ないのか……


だが、本のページで尻を拭くというのは紙への冒涜に他ならない、と私は思っている……


しかし、この状況では、それしかないのだ……拭こう…………



後日のテレビにて


『先日、利根川書店のトイレ内で本のページで用を足す、という紙への冒涜があり、男が一人、逮捕されました。容疑者は……………』


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