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地獄  作者:
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事件発生

実は私、外国人なんですよ。ハーフでね。ハワイで生まれて、お父さんが日本人、お母さんがアメリカ人なんです。日本に来たのは12歳の時でしたね。日本語は、正直まだそんなに得意じゃないんです。だから、もし変なところがあっても、大目に見てくれると嬉しいな。この小説ね、私がこれまで遊んできた色々なゲームから、すごく影響を受けているんですよ。特にメタルギアソリッドは大きかったかな。

松本晴人は、最初からずっと沈黙の中で生きていたわけじゃなかった。

ほんの数週間前まで、街の外れにあるその邸宅は、まだ人の住処としての体裁を保っていた。二人で暮らすには、あまりにも無駄が多すぎた。広すぎたし、天井は高すぎたし、白すぎた。およそ人が日常を営むための、雑多な生活の音からも隔絶されていた。晴人には、なぜ世の人間がこれほどまでに余った空間を欲しがるのか、どうしても理解できなかった。

だが、妻はその静寂をひどく気に入っていた。

「静かでいいわ」と、彼女は薄く笑って言った。「ここなら、もう一度最初からやり直せる気がするの」

ほんの短い間だけ、晴人もその言葉を信じかけた。

そのあと、彼女は死んだ。

警察の報告書に並んだ文字は、保身と困惑が透けて見える慎重なものだった。――『自殺の可能性。詳細不明。外部からの侵入痕跡なし。第三者の関与を示す証拠なし』。

事情聴取に訪れた捜査官たちは、判で押したように低い声で話した。まるで、声を潜めればその残酷な結論が、少しでも遺族に受け入れやすくなると信じ込んでいるかのようだった。

「前兆はありました」と彼らは言った。「事件性を否定するには、これで十分な材料です」

晴人は、決して納得しなかった。

ただ、納得できないということと、その理不尽に立ち向かえるということは、全くの別問題だった。悲しみという感情は、彼を強くなどしなかった。ただ一日一日を鉛のように重く、呪わしいほどに遅くしただけだった。まともに眠れなくなり、食事を摂ることも忘れた。真夜中にふと目を覚ますと、階下の暗闇から、誰もいないはずのピアノの音が微かに聞こえた気がすることもあった。

だが、視線を落とせば、現実のピアノはいつも冷たく沈黙していた。

底なしの沼に沈んでいく彼を、辛うじて現実に繋ぎ止めていた人間が、一人だけいた。

新蔵しんぞう

新蔵は友人である前に、晴人のすべてを叩き込んだ師だった。年齢は一回り上で、気性が荒く、この世界の苦い教訓をすべて自分の体に刻み込んできたような男だった。いつ声をかけるべきか、いつ放っておくべきかを、その野生的な直感で知っていた。晴人が電話を拒絶しても容赦なくかけてきたし、来るなと突き放しても当たり前のように家に上がり込んできた。

それでも、新蔵は「前を向け」などという気休めは、一度として口にしなかった。

晴人は、その不器用な突き放し方に、救われていた。

二〇一三年九月十三日の朝。晴人は前日の服を着たまま、使い古された肘掛け椅子で浅い眠りに落ちていた。その静寂を切り裂くように、携帯電話が震え始めた。

数秒の間、彼は微動だにしなかった。

部屋は朝の重苦しい灰色の光に沈んでいた。暖炉の脇には、現実から逃避した痕跡である空き瓶が所在なげに並んでいる。家のどこかで、古い空調装置が肺病病人のように低く、疲れた唸り声を上げていた。

携帯が再び震える。晴人は濁った眼を開け、重い腕を伸ばした。

「……はい」

応答すると同時に受話器から溢れ出た新蔵の声は、矢のように鋭く、早かった。

「晴人。事件発生だ」

新蔵はいつもこの言葉を使った。問題が起きた、でもない。厄介事だ、でもない。ただ一言、事件発生、と。

晴人はゆっくりと上体を起こした。思考が追いつくより先に、長年叩き込まれた肉体が戦闘への準備を始める。

「……状況は」

「市街地での人質立てこもりだ。場所は廃止された旧市民病院。正体不明の武装集団が、民間人を巻き込んで内部を占拠した」

晴人は片手で顔をごしごしと擦り、眠気を強引に追い払った。

「要求は何だ?」

「ない」

その一言に、晴人の眉が微かに動いた。「ない?」

「警察にも、野次馬にも、近づく奴には容赦なく弾を撃ち込んできている。声明の発表もない。交渉の要求もない。何もかもが不気味なほど無言だ」

晴人は、部屋の外へと続く、薄暗い廊下の先を凝視した。

「どれほど最悪なんだ」

受話器の向こうで、短い沈黙が降りた。

「わざわざお前の眠りを覚ましたんだ。それだけで分かるだろう」

それで、全てを理解した。

数分後、晴人は家を後にしていた。

彼は言葉を失った機械のように、黙々と軽トラックの荷台へ装備を積み込んでいった。自動小銃。拳銃。防弾ベスト。予備の弾倉。強行突入用の機材。そして救急キット。すべての道具には寸分の狂いもなく定位置があり、彼の手は思考を介さず、完璧な手順でそれらを配置していった。

それは冷静さゆえの行動ではなかった。ただ、余計なことを考えるよりも、骨まで染みついた訓練の記憶に従う方が、今の彼にとっては遥かに楽だったからに過ぎない。

集合地点に到着する頃には、都市はすでに未曾有の混乱の中で悲鳴を上げていた。

迎えのヘリが、彼を灰色の市街地へと運んでいく。眼下では、張り巡らされた警察の検問線に引っかかった車両が数珠繋ぎになって立ち往生し、幾重にも重なるサイレンの音が不協和音を奏でていた。ビルとビルの隙間を、不穏な黒煙が這うように流れていく。

向かいの席に腰掛けた新蔵は、通信用のヘッドセットを耳に押し当てたまま、険しい表情でこちらを見た。

「現場の病院はすでに完全に封鎖されている」新蔵が言った。「警察の特殊部隊(SIT)が出口を固め、所轄の警官が外周の防衛線を維持している状態だ。それと、防衛省から『連絡官』として現地に派遣されている男がいる。そいつの階級は三等陸曹――本人は三曹と名乗っている。現地に到着次第、そいつがお前を案内する手筈だ」

「自衛隊が動いているのか?」晴人は尋ねた。

「表向きは、情報支援という名目のただのオブザーバーだ」

「裏では?」

新蔵は、すべてを見通すような疲れた眼で晴人を見つめた。

「今日という日はな、最初から『表向き』の理屈が通用するような日じゃないんだよ」

晴人は手元の小銃のボルトを厳かに引き、薬室に弾丸が送り込まれる金属音を確かめた。

「要求なし、か」

「ああ」新蔵が低く応じる。「まともじゃない」

前方、コンクリートの巨大な塊が見えてきた。

時代に取り残されたような旧市民病院の建物だ。窓はどれも生気を失ったように暗く、周囲を取り囲むパトカーの赤色灯が、冷徹な建物の壁面を不気味に赤く染め上げていた。

降下していくヘリの中で、晴人はその建造物をじっと見据えていた。

この世には、どれだけ大勢の人間がひしめき合っていようとも、本質的に「空っぽ」だと感じさせる建物がある。ここがまさにそれだった。何年も前から、底知れぬ暴力がその内部でじっと息を潜めて待っていて、今日、誰かがようやくその禁忌の扉を開け放った――そんな禍々しさが漂っていた。

防衛省の三等陸曹は、病院の向かいにある雑居ビルの一室で晴人を待っていた。

晴人が想像していたよりも遥かに若い男だった。三十代前半といったところか。折り目の正しい制服に身を包み、姿勢は硬く、だがその双眸だけが落ち着きなく周囲を泳いでいた。組織と組織の板挟みになり、完全には誰も信用していない男の特有の目だった。

「……君が、松本か」

晴人は無言で肯いた。

三曹は晴人を頭の先からつま先まで値踏みするように見た。彼の過去の悪名を知っているのか、あるいは、その眼の奥にある底知れない疲弊を感じ取ったのか。

「新蔵から聞いている。君はまず、自分の眼で現場を見たいそうだな」

「見せてくれ」

「こっちだ」

二人は埃っぽい階段を駆け上がり、上層階の部屋へと入った。住人が急いで避難させられた形跡が随所に残っていた。椅子は乱雑に壁際に押しやられ、家族写真の入った額縁が床にうつ伏せに倒れている。窓ガラスは爆風を浴びたように中心から大きく割れていた。その窓辺には、数人の警察官が臨時の監視ポストを構築していた。

三曹が遮光カーテンを指先で僅かに引いた。

「ここからが、奴らの拠点が一番よく見通せる」

晴人は音もなく前に進み出て、照準器スコープの接眼レンズに片目を押し当てた。

陽炎の向こうに、旧市民病院の屋上が鮮明に映し出される。

最初は、死んだように何も動かなかった。

――次の瞬間、屋上の重い鉄扉が勢いよく撥ね開けられた。

一人の女が、狂ったように屋上へと飛び出してきた。裸足だった。片手で自身の脇腹を必死に押さえている。一度、何かに躓いて派手に転倒しかけた。その背後から、漆黒の戦闘服に身を包んだ男たちが、容赦なく銃口を突きつけながら躍り出てくる。

晴人の呼吸が、すうっと細くなった。

彼の内側で、世界が極限まで単純化されていく。

距離、五百。風向、微風。標的の移動速度。修正角。

男の一人が女の長い髪を乱暴に掴み、コンクリートの床へと引き摺り戻した。もう一人の男が、声もなく邪悪に嗤ったのが見えた。

晴人は、引き金を引いた。

乾いた銃声。照準の真ん中にいた最初の男が、操り人形の糸を切られたように崩れ落ちた。

周囲の男たちが蜘蛛の子を散らすように動いたが、晴人の指先にとってはすべてが遅すぎた。

彼は冷徹な正確さで銃身を払い、次なる標度をとらえる。もう一発。さらに一人。女は狂乱しながら換気装置の陰へと這いずり、天を仰いで叫んでいた。だが、その絶叫は厚いガラスと圧倒的な距離に遮られ、こちらには一切届かない。

「おお、神よ……」背後で、三等陸曹が引きつった声を漏らした。

晴人は応えなかった。

屋上が再び静寂を取り戻したとき、そこには五つの骸が転がっていた。

女は、辛うじて生きていた。

直後、無線機から新蔵の怒号が割り込んできた。

『よし、突入班が動く! 晴人、すぐに下へ降りろ。現場の指揮を執れ!』

晴人は銃から離れた。

その朝、彼の凍りついた胸の奥で、初めて何かが胎動した。

それは希望などという生易しいものではなかった。怒りですらなかった。

ただ、果たすべき「目的」だけが、彼の肉体を突き動かしていた。

旧市民病院への強行突入は、短く、そして凄惨なものだった。

晴人は警察の突入班を背従え、その先頭を突っ走った。重鉄の扉が爆破され、閃光発音筒フラッシュバンが薄暗い廊下の奥で爆散する。怒声が飛び交い、薬品の饐えた臭いと漆喰の埃が立ち込める部屋の中で、幾度も銃声が弾けた。

襲撃者たちの抵抗は苛烈極めていた。しかし、彼らの動きには違和感があった。建物を死守しようという意志が感じられないのだ。

彼らはただ、時間を稼いでいる。

晴人はその冷徹な事実に気づいていた。

病院の大部分を制圧し終えた頃、その違和感は最悪の形で証明された。

人質の大半が、忽然と姿を消していたのだ。

発見されたのは、地下の備品倉庫に閉じ込められていた、初老の男がたった一人。恐怖のあまり歯の根が合わず、まともな言葉になっていない。屋上で救出された女は、保温性の毛布に包まれ、死人のような青白い顔で意識を失ったまま搬送されていった。

倉庫の男は、虚ろな眼で同じ言葉を何度も呟いていた。

「下へ行った……奴らはみんな、病院の下へ降りていったんだ……」

晴人は男の前に静かにしゃがみ込んだ。

「誰が下へ行ったんだ」

男は涙と泥に汚れた眼で晴人を見上げた。

「全員だよ……人質も、あいつらも、全員だ」

病院の地下に張り巡らされた網の目のような下水道は、淀んだ廃水と錆、そして有機物の腐敗臭に満ちていた。

晴人は単身、その闇へと降りていった。

地上では、三曹の部隊が病院内の残敵掃討を続けている。地下の闇の中で、晴人は襲撃者たちが残した微かな足跡を追った。汚泥の中に残された軍靴の跡。へし折られた南京錠。油圧カッターできれいに切断された鉄鎖。これは行き当たりばったりの逃走経路などではない。何者かが事前に緻密に用意していたルートだ。

無線機を通じて、新蔵がその疑念を裏付けた。

『その区域の広域水路はな、二年に一度しか水抜きが行われない』新蔵の声が告げる。『そして、今日がその水抜きの日だった』

晴人は足元に転がる巨大なドブネズミの死骸を跨ぎ、銃口を闇の先へと向けた。

「……つまり、奴らは知っていたわけだ」

『計画されていたんだ、完全にな』

「いつからだ」

『これだけの規模だ。相当な時間をかけて準備していたに違いない』

静寂のトンネルは、瞬く間に地下の戦場へと変貌した。

襲撃者たちは水路の分岐点に、巨大な配管の死角に、そして薄汚れた黄色い電灯が灯る保守室の中に潜んでいた。晴人はそれらを一組ずつ、冷徹に、確実に排除しながら進んだ。彼らを勇敢だとは微塵も思わなかった。そこには勇気などという美しい感情は一滴も存在せず、あるのはただ、冷え切った暴力の行使だけだった。

晴人はただ、一歩ずつ前へ進み続けた。

やがて下水道は、使われていない地下鉄の保守用線路へと合流した。

その瞬間、文字通り「世界が震えた」。

凄まじい爆発音が、都市そのものが真っ二つに割れたかのような衝撃を伴ってトンネル内を駆け抜けた。

天井から大量のコンクリート片と埃が降り注ぐ。激しい揺れが収まるまで、晴人は壁面に体を強く押し付けていた。

砂嵐のような雑音の向こうから、新蔵の悲痛な声が戻ってくる。

『……晴人、聞こえるか! 近くの地下鉄駅で爆弾が炸裂した! 襲撃者どもは人質を連れ、駅の直上にある大型商業施設ショッピングモールへと移動した模様だ。混雑時だ、人質の数が跳ね上がっている!』

晴人は線路の先、非常灯の鈍い光を見つめた。

一秒だけ眼を閉じ、肺に溜まった濁った空気を吐き出す。

そして、再び歩き出した。

地上に突き抜けた先の商業施設は、すでに地獄と化していた。

美しく磨き上げられた大理石の床と、吹き抜けのガラス天井は、立ち込める硝煙と銃火の下ではあまりにも不釣り合いで、滑稽でさえあった。ショーウィンドウは無残に粉砕され、エスカレーターは途中で不自然に停止している。固く閉ざされた防犯シャッターの向こうから、幼い子供の employment(嗚咽)が漏れ聞こえていた。

晴人は、三曹が緊急派遣した警察の特殊班と共に内部へ突入し、電光石火の速さで動いた。

今度の彼には、一瞬の猶予も残されていなかった。

奴らは病院を占拠し、計算された下水道から逃走し、地下鉄を爆破し、この商業施設を戦場に変えた。それほどの凶行に及びながら、未だに何も要求してこない。

政治的な声明もない。身代金の要求もない。

あるのはただ、執拗な「移動」と、目的の見えない「暴力」だけだ。

まるで、都市の全人間を特定の場所へと追い詰めていこうとする、巨大な意思を感じさせた。

商業施設に取り残されていた人質の大部分は、辛うじて救出された。誰もが恐怖に身体を震わせ、泣き叫んでいた。しかし、敵の主力部隊は、またしても彼らの鼻先をすり抜けて消えていた。

その時、轟音と共に一機のヘリコプターが姿を現した。

どんよりとした灰色の空を背景に、軍用と思しき漆黒の無骨な機体が、通りのすぐ上を低空飛行してくる。機体に搭載された重機関銃が火を噴き、路上のパトカーやコンクリートのバリケードを肉片のように引き裂いていく。警官たちは容赦のない弾幕の下で散り散りに逃げ惑い、商業施設の正面ガラスが豪雨のように降り注いだ。

晴人は、ガラスの破片が降り頻る開けたロビーへと躍り出た。

『晴人、伏せろ――!』新蔵の声が無線機から引き裂かんばかりに響く。

晴人は構わず、自動小銃の銃口を天空へと跳ね上げた。

ヘリが急旋回する。

ほんのコンマ数秒、操縦席のフロントガラスが、晴人の直線上に重なった。

晴人は、迷わず引き金を引いた。

操縦士の頭部が激しく後ろへと弾け飛ぶのが見えた。

制御を失った黒い鉄の塊は、激しく揺れ、回転し、炎と無数の金属片を撒き散らしながら、商業施設の側壁を削って路面へと叩きつけられた。

凄まじい爆発。一瞬、世界からすべての銃声が消え去ったかのような錯覚に囚われる。

だが次の瞬間、無線機が再び狂ったように叫び始めた。

『こちら前線班! 地下駐車場で完全に釘付けにされている! 敵の複数グループがさらに下層へと移動中! 至急、支援を乞う――!』

晴人は迷わず、関係者用のサービス通路へと視線を向けた。

『晴人――』新蔵の声が後を追ってくる。

「……行く」

地下駐車場へと続く通常の斜路は、先ほどの爆発で完全に圧潰していた。晴人に残された道は、屋上を経由して業務用の大型エレベーターで一気に最下層へと降りることだけだった。エレベーターは、目的地に到着する前に力尽きて止まりたがっているかのように、軋んだ金属音をずっと響かせていた。

地下に降り立つと、生存した警察班が壊れたコンクリートと炎上する車両の陰で、辛うじて息を潜めていた。

隊長格の男が晴人の姿を認めると、血と煤に汚れた顔に見るからに安堵の色を浮かべた。

「……とんでもない厄日だな」

晴人は手元で弾倉を叩き込み、冷淡に言い放った。

「まだ悪くなる」

彼らはコンクリートの階層を一つ降りるごとに、文字通り血で血を洗う戦闘を繰り広げた。

地下駐車場は広大だった。商業施設の底に広がる巨大な迷宮。乗り捨てられた無数の車、鈍く光る非常灯、充満する煙、そして鼓膜を揺らす反響音。襲撃者たちはあらゆるスロープを、完璧な待ち伏せ地点に変えていた。

短い膠着状態の間、新蔵からの通信が再び晴人の耳に届いた。

『……あのヘリの出所が判明した』

晴人はコンクリート柱の陰に身を潜めた。すぐ耳元を掠めた銃弾が、コンクリートの粉末を激しく飛び散らせる。

「どこだ」

『海外の、とある砂漠地帯にある放棄された飛行場だ。我が方の調査チームが、もぬけの殻になった格納庫を発見した』

晴人は柱の陰から二発、正確に撃ち返した。「それで?」

新蔵の声が、不自然に躊躇した。

『……死体があったんだ』

晴人は何も言わない。

『それも、大量だ』新蔵の声は微かに震えていた。『凄惨極まる状態だった。何らかの、人為的な処置を施されたような……写真が送られてきたが、晴人、これはまずいぞ』

「拷問か」

『……おそらく、な』

「おそらく?」

『俺にも、自分が何を見せられているのか分からんのだ。人間の仕業とは思えん』

通信の向こうで、新蔵の荒い息遣いだけが聞こえる。

やがて、彼は押し殺したような低い声で言った。

『これは……普通の戦争じゃないぞ』

晴人には、そんなことは最初から分かっていた。

最下層の入り口に達したとき、彼らの進路は、設置された無人自動銃座タレットによって完全に遮断されていた。高感度のセンサーが、動くものすべてを全自動で追尾し、容赦ない弾幕を浴びせかけてくる。班員の一人が角度を変えて接近しようとしたが、危うく肉片にされかけるところだった。

晴人は男の防弾ベストの襟元を掴み、強引に背後へと引き戻した。

「徒歩では誰も通れん」隊長が絶望的な声を出す。

晴人が口を開くより先に、上層のスロープから、凄まじい駆動音が響き渡った。

数台の大型軍用車両ハンヴィーが、猛烈なスピードで駐車場へと乱入してきたのだ。

一瞬の間、誰もがそれが味方の増援であると信じたがった。

だが、車両の扉が開き、降りてきたのは先ほどと同じ武装集団だった。

無線機に三等陸曹の狼狽した声が飛び込んでくる。

『あれは我が国の車両ではない!』

新蔵がすぐに引き継いだ。

『米軍のものでもない! どこから持ち込んだ!?』

晴人は突進してくる重装甲の車両群を見つめ、静かに銃を構えた。

「なら、ただの標的だ」

晴人が再び地上へと這い上がってきたとき、その顔はコンクリートの塵で灰色に汚れ、両手は硝煙で黒く染まっていた。

上空には新蔵の搭乗した指揮ヘリが静止し、舞い散る灰の中をゆっくりと降下してくるところだった。

晴人は、それを見上げた。

その日初めて、新蔵の声に僅かばかりの安堵が混じっていた。

『よく持ちこたえた、晴人。その場で待機しろ。間もなく本格的な本隊が到着する。今度こそ、このふざけた連中を根こそぎ――』

その言葉が、完遂されることはなかった。

一発の対戦車ロケット弾が、一条の煙の尾を引いて虚空を走った。

それは向かいの雑居ビルの窓から放たれ、投げられた槍のように正確に新蔵のヘリの側面に突き刺さった。

次の瞬間、空中で機体が大爆発を起こし、引き裂かれる。

永遠のようにも思える長い一秒の間、晴人は空中で無残にねじれていく鉄の塊を、ただ見つめていた。

そして、墜落した。

凄まじい衝撃波が通りを揺らし、立ち上る激しい火炎が、新蔵の乗っていた残骸を瞬く間に飲み込んでいった。

晴人は、凍りついたように立ち尽くしていた。燃え盛る金属の塊を、ただ凝視している。

「……新蔵?」

返事は、ない。

「新蔵――!」

イヤホンから返ってきたのは、鼓膜を不快に刺すホワイトノイズだけだった。

晴人の内側で、何かが決定的に、そして完全に静まり返った。

その時、彼は視界の端で、向かいの雑居ビルの割れた窓の奥に人影を見た。暗闇の中へと消えていく、ロケット発射筒の不気味な筒先。

晴人は、走り出していた。

いかなる警察の命令も、彼の耳には届かなかった。指示など、この世の何の足しにもならなかった。彼は煙と銃火の中を文字通り突っ切り、嵐のような勢いでその建物へと侵入した。

男は上層階へと逃走していた。

晴人は、壊滅した部屋を駆け抜け、砕け散った家具を飛び越え、浴室や押し入れの隅で身を縮めている民間人たちの横を疾風のように通り抜けた。

そのあと、その襲撃者をどこへ追い詰め、どのようにして殺したのか――あるいは街の雑踏へと逃げられたのか、後になっても晴人はほとんど記憶していなかった。

彼の脳裏に焼き付いていたのは、ただ一つの「怒り」だけだった。

それは熱く滾るようなものではなかった。激しく燃え盛るものでもなかった。

あまりにも冷徹で、世界のすべてを漆黒に塗りつぶしてしまうほどに、凍てついた怒りだった。

晴人が再び通りへと戻ったとき、防衛省の三曹が新たな制圧部隊と、鹵獲した敵の装甲車両を従えて待っていた。

晴人の姿を認めた瞬間、三曹の表情が恐怖に強張った。

晴人の顔に、新蔵を失った男の絶望を見たのかもしれない。あるいは、人間の皮を被った「もっと別の恐ろしいもの」を見てしまったのかもしれない。

「……最下層の自動銃座を破らなければ、先へは進めない」三曹は言葉を選びながら、慎重に、怯えるように言った。「君が先頭の車両を運転してくれ。あの銃座に正面から突っ込み、物理的に粉砕するんだ。我々がその後に続く」

晴人は何も言わず、重装甲車の運転席へと乗り込んだ。

アクセルペダルを床まで踏み込む。エンジンが獣のように唸りを上げた。

彼は、地獄の底へと真っ直ぐに車を走らせた。

装甲車が地下駐車場の最下層へと突入する。分厚い装甲に無数の銃弾が命中し、激しい火花が視界を覆う。自動銃座のセンサーが晴人の車両を捕捉して狂ったように弾丸を吐き出したが、突進するフロントバンパーの下へと次々に巻き込まれ、圧壊していった。

晴人は、速度を一切落とさなかった。

最下層の最奥、立ち込める煙とコンクリート柱の向こう側に、本来の建築計画には存在するはずのない「壁」が姿を現した。

異常なほどに補強され、厳重に隠蔽された壁。比較的最近になってから、何らかの目的で塞がれたものだ。

晴人は全速力のまま、その壁へと車両ごと激突した。

凄まじい衝撃が晴人の肉体をきしみ鳴らせる。

コンクリートの壁が内側へと爆散した。車両は未知の暗闇の中へと突き抜け、通常の地下駐車場とは完全に切り離された「異質な空間」の真ん中で、ようやくその動きを止めた。

直後、背後で天井が激しく崩落し、退路が完全に埋まる。

無線機に一瞬だけ狂乱した叫び声が満ち、そして――完全に沈黙した。

晴人は歪んだドアを力任せに押し開け、外の空間へと足を踏み下ろした。

手にした懐中電灯の放つ一本の光が、異様に白い壁、重厚な鋼鉄の隔壁、防弾ガラス、そして見たこともない複雑な暗号コードが印字された電子表示板を照らし出していく。

壁面の一角に、埃と古い擦り傷に半分隠れた、色あせたロゴマークが刻まれていた。

**『U.D.R.C.』**

晴人は、その文字をしばらくの間、無言で見つめていた。

これまでの人生で、一度として耳にしたことのない名前だった。

だからこそ、底知れぬ嫌悪感が彼の背筋を駆け抜けた。

ここはただの防空壕でもなければ、ビルの地下室でもない。

「研究施設」だ。

この大都市の真下に、誰にも知られることなく隠蔽されていた、巨大な秘密研究施設。

晴人は静かに武器を構え直した。

前方のどこかで、不意に完全に照明が落ちた。

完全な闇が、施設を底なしの口を開けて飲み込んでいく。

襲撃者たちが主電源を遮断したのだ。床沿いに設置された、血のような赤色の非常灯だけが不気味に点滅を始める。晴人は、ひっくり返った事務机、白いタイルにへばりついた生々しい血痕、不気味な機器が並ぶ研究室や廊下を、音もなく前進した。ある部屋からは異常なほど無機質な消毒液の臭いがし、またある部屋からは、言い知れぬ腐敗臭が漂っていた。

闇の中から、待ち伏せていた男たちが次々と現れる。

晴人はただ、引き金を引き続けた。それ以外に、この場所を進む方法はなかった。

とある事務室の片隅で、彼は奇跡的に生き残っていた施設の職員を発見した。男は机の下で極限の恐怖に震えており、言葉を発しようとするたびに歯の根が激しく鳴っていた。

「頼む……」男は消え入りそうな声で懇願した。「撃たないでくれ……」

晴人は銃口を僅かに下げた。

「人質はどこにいる」

「この先にある、非常隔壁の向こうだ……システムを操作すれば、ここから開けられる。主電源も、私が戻せる……」

「やれ」

職員は震える指先で、血のついたキーボードを叩いた。数秒の後、廊下の蛍光灯が不気味に明滅しながら、光を取り戻していく。

晴人が再び歩を進めようとしたその時、男が必死の形相で彼の袖を掴んだ。

「……美亜みあを見つけてくれ」

晴人は冷徹な眼で男を見下ろした。「美亜とは誰だ」

男は天井に設置された監視カメラのレンズを怯えたように見上げた。

「あの方なら……あの方なら、この狂気を終わらせられる……」

「これは何なんだ。ここで何を作っていた」

男はただ、狂ったように首を振るだけだった。

「あの方なら終わらせられる……」男は、壊れた玩具のように同じ言葉を繰り返した。

晴人はその手を冷酷に振りほどき、男を置き去りにして先へと進んだ。

その先に続く廊下は、異常なほど狭く、そして静まり返っていた。

中ほどまで進んだ時、設置されていた金属探知機が突如として狂ったような警報音を鳴り響かせた。

赤い警告灯が激しく回転する。

前方の重厚な扉が開き、そこから襲撃者の大群がなだれ込んできた。

晴人は足元に転がっていた警備員の遺体から二丁の拳銃を毟り取り、両手に構えて前へと突き進んだ。

至近距離での銃撃戦は、醜悪極まるものだった。ガラスが粉砕され、精密モニターが弾け飛び、事務机とサーバーラックの隙間に次々と肉塊が転がっていく。晴人は立ちはだかる敵を肉薄しながら撃ち抜き、ガス室を通り抜け、その最奥にある中央制御室へと遂に辿り着いた。

そこで、強化ガラスの向こう側に、彼は「それ」を目撃した。

人質たちだ。

何十人もの人間が、そこにいた。

彼らは生きていた。そして、極限の恐怖に身を震わせていた。だが、彼らを監視している襲撃者たちの表情もまた、囚人と何ら変わりないほどに、異常な不安と怯えに満ちていた。

その時、通信機に辛うじて三等陸曹の声が戻ってきた。

『……晴人! こちらは駐車場からの進入が不可能です! 崩落によって完全にルートが塞がれた! 別の搬入口を探索している!』

晴人は、ガラスの向こうの人質たちを凝視した。

「急げ」

『……到着まで時間がかかる! 君がその場で人質を解放し、持ちこたえるしかないんだ!』

晴人が制御盤へと一歩を踏み出した、その瞬間だった。

天井の通気口が、音もなく開放された。

白濁した未知のガスが、猛烈な勢いで室内に流れ込んでくる。

晴人は激しく咳き込み、足元が大きくよろめいた。

伸ばした手が、強化ガラスの表面を虚しく滑る。

ガラスの向こうの人質たちの姿が、万華鏡のように歪み、遠ざかっていく。

床が、視界の先から迫ってくる。

そして、彼の意識は唐突に、深い闇へと突き落とされた。

晴人が再び目を覚ましたとき、彼は先ほどのガス室の冷たい床の上に転がっていた。

頭が割れるように激しく痛み、肺の奥が焼けるように熱い。手首は縛られていなかったが、最初は指先一つ満足に動かすことができなかった。

強化ガラスの向こう側から、くぐもった話し声が聞こえてくる。

襲撃者が二人、立っていた。

「……触るなという命令だったはずだ」一人が言った。「こいつは、あの『リスト』には載っていない」

もう一人の男が、呪わしげに鼻で嗤った。

「リストだと? そんなもの知るか」

「命令に背く気か」

「こいつは……こいつは俺の弟を殺したんだよ!」

男の手が、制御盤の上で乱暴に動いた。

再び、室内にあの白濁したガスが勢いよく噴出し始める。

晴人は立ち上がろうとしたが、膝が裏返り、再び床に這いつくばった。

喉が完全に閉塞し、視界が心臓の鼓動に合わせて赤黒く脈打つ。ガス室全体が、上下を失って激しく傾いていく。

その時、彼の内側で、何かが決定的に変質した。

それは、怒りなどという生易しい人間の感情ではなかった。怒りは、まだ人間としての理性を残した者が抱くものだ。

今、彼の内側に湧き上がってきたのは、もっと空っぽで、もっと原始的で、もっと古い「何か」だった。

まるで、彼という人間の奥底に厳重に隠されていた、決して開けてはならない「鍵のかかった部屋」の扉が、内側から強引に蹴り破られたかのようだった。

晴人は、立ち上がった。

――直後、強化ガラスが凄まじい音を立てて内側から粉砕された。

そのあとに起きた出来事を、彼は後になっても、ほとんど何一つとして明確には記憶していなかった。

脳裏に残されているのは、脈絡のない地獄の断片フラグメントだけだった。

人間の、喉を掻き切るような凄まじい悲鳴。

白いタイル一面を覆い尽くしていく、おびただしい量の赤い血。

自身の両手の中で、意志を持った生き物のようにはねる銃身の感触。

誰かが、泣きながら命乞いをする掠れた声。

助けを求めて、こちらへと必死に伸ばされる人質たちの手。

獣そのものの、自身の荒々しい呼吸音。

そして――。

すべてが消え去った、絶対的な沈黙。

視界を覆っていた不気味な霧がようやく晴れたとき、晴人は血の海の中で、呆然と膝を突いていた。

彼の周囲には、無数の死体が転がっていた。

それは、武器を持った襲撃者たちだけではなかった。

そこにいた、全員だった。

守るべきはずだった、人質も含めて――すべてが、物言わぬ肉塊に変果てていた。

数秒の間、彼は自分の眼がとらえている光景の意味を、何一つとして理解することができなかった。脳はその惨劇を明確に視認していながらも、その断片を「現実」として繋ぎ合わせることを、断固として拒絶していた。

やがて、静寂を破って激しい軍靴の音が近づいてきた。

警察の特殊部隊。

誰かが、彼の名前を狂ったように叫んでいる。

晴人は辛うじて立ち上がろうと、泥にまみれた手を床に突いた。

その瞬間、容赦のない銃床の強烈な一撃が、彼の顔面を容赦なく打ち据えた。

世界が、みたび暗転する。

今度は、あの邸宅の夢を見た。

家の中は、温かみのある穏やかな夕焼けの光に満ちていた。煙もなければ、サイレンの音もない。血の臭いなど、どこにもない。

妻はメインルームのピアノの前に静かに腰掛け、鍵盤の上でその白い指先を滑らせていた。どこかで聞き覚えのある、とても懐かしい旋律。だが、どうしてもその曲名だけが思い出せなかった。

晴人は、ただ入り口の敷居に立ち尽くしていた。

何かを、彼女に伝えたかった。

だが、妻は決してこちらを振り返ろうとはしなかった。

音楽が、ゆっくりと速度を落としていく。

そして、完全に途絶えた。

ようやく彼女がこちらを振り返ったとき――その顔は、深い影に覆われていて、何も見えなかった。

晴人は、一脚の硬い椅子の省で目を覚ました。

正面には、仕立ての良いスーツに身を包んだ一人の男が座っていた。

部屋は狭く、壁面は灰色の一色で、窓はどこにもない。典型的な「取調室」だった。彼の両手は自由だったが、机に鉄錠で繋がれているよりも、遥かに重く感じられた。

男は落ち着いた、だが底知れぬ辛抱強さを湛えた眼で晴人をじっと見つめていた。

「……健人けんとです」男は静かに名乗った。「あなたの弁護を担当することになった弁護士です」

晴人は無言で、その男の顔を見つめ返した。

「松本さん。あなたは今、極めて深刻な状況に置かれています」

晴人は、何も答えない。

健人は手元の分厚い書類フォルダーを厳かに開いた。

「あなたは、あの地下施設にいた人間を『全員』殺害した容疑をかけられています。施設の職員、警備員、そして――辛うじて生き残っていたはずの人質たちも含めて、全員です」

弁護士の声が、一段と低くなった。

「……あそこで何が起きたのか、あなたの口から話してください」

晴人は、自身の両手を見下ろした。

皮膚の汚れは完全に洗い流され、今は不気味なほどに白く、きれいだった。

それが、彼にとってはなおさら恐ろしかった。

「……覚えていない」晴人は、掠れた声で微かに呟いた。

健人はしばらくの間、無言で晴人の顔を観察していた。

「……そう言うと思っていました」

男は静かに立ち上がり、防音ドアの方へと歩いた。「すぐに戻ります」

ドアが開き、健人が外へと出ていく。

だが、建付けが悪いのか、そのドアは完全には閉まりきらなかった。

数ミリの隙間から、外の廊下で交わされている微かな話し声が漏れ聞こえてくる。

最初に聞こえたのは、困惑した警察官の声だった。

『……勝手に連れて行かせるわけにはいかない。管轄の許可が必要だ』

次に、別の男の声が応じた。

極めて冷徹で、感情の起伏が一切削ぎ落とされた声。

なぜか悪夢の記憶が懐かしく蘇るかのように、晴人にとっては酷く聞き覚えのある響きだった。

『――これは命令だ』

『誰からの命令だ!』

短い、張り詰めた沈黙。

そして、冷たい答え。

『……知らない方が、身のためだぞ』

晴人は、ゆっくりと顔を上げた。

取調室のドアが、さらに大きく押し開けられる。

入ってきた男たちの中には――あの、黒い戦闘服を着た襲撃者の姿があった。

周囲の警察官たちは、誰もそれを止めようとはしなかった。

晴人の頭上で、蛍光灯の光が激しく明滅を始める。

世界の境界線が、急速に深い闇へと塗りつぶされていく。

どこか遥か彼方から、ヘリコプターのローター音が幻聴のように響いていた。

そのあとに残されたのは、不気味な海の鳴る音と、激しい雑音の隙間から割り込んでくる、無線機の冷酷な音声だけだった。

『――A.R.C.、こちらズールー3。目的の島へ接近しつつある。ゲートを開放せよ』

短い沈黙の後、応答が響く。

『了解、ズールー3。ゲートを開放する。……深淵へようこそ』

激しい風の音と共に、島の一部が巨大な地殻変動のように動き始める。

漆黒の闇の奥底に、隠された巨大な入り口が、その顎を開いた。

ヘリコプターは、囚われた晴人を乗せたまま、底知れぬ地下基地の深淵へと静かに降下していった。


1章、読んでくれてありがとうね。

この章では、ハルトっていう人がどんな状況にいて、事件がどう始まったか、みたいな話をしたんだ。パッと見はよくある誘拐事件みたいだけど、実はもっと深いところに複雑な真実が隠されてるんだよね。


次の章からは、話は地下の施設の奥へ奥へと進んでいって、不思議なこととか、超常的な要素がどんどん出てくるよ。

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